4. 能動態と受動態

テクニカルライティングではほぼ全ての文を能動態で書くべきです。この章では次の事項を学びます:

まずは、ボールを転がすために、次の動画を見てください1:

単純な文における能動態と受動態の判別

能動態の文では行為者 (actor) が受動者 (target) に行為を行います。つまり、受動態の文は次の形をしています:

能動態の文 = 行為者 + 動詞 + 受動者

受動態の文はこの形を逆にすると得られます。つまり、典型的な受動態の文は次の形をしています:

受動態の文 = 受動者 + 動詞 + 行為者

能動態の例

例として、短い能動態の文を示します:

The cat sat on the mat.

(猫がマットの上に座った。)

受動態の例

これに対して、同じ文を受動態としたものを示します:

The mat was sat on by the cat.

(マットは猫に座られた。)

受動態の文では行為者を省略できる場合もあります。例を示します:

The mat was sat on.

(マットは座られた。)

この文において、マットの上に座っているのは何でしょうか? 猫、犬、それともティラノサウルス? 読者は推し量ることしかできません。テクニカルライティングにおける優れた文は、何が、何に、何をしているかを明快に示します。

受動態の特定

典型的な受動態の動詞は次の形をしています:

受動態の動詞 = be 動詞 + 動詞の過去分詞

難しいと思うかもしれませんが、この式が意味することはとても単純です:

残念なことに、過去分詞が不規則に変化する動詞もあります。つまり、過去分詞が接尾辞 ed で終わらない動詞です。例を示します:

be 動詞と過去分詞を続けて書けば受動態の動詞となります。受動態の動詞の例を示します:

過去分詞を使った句が行為者を含むなら、通常は受動態の動詞の後に前置詞が続きます (この前置詞は受動態を見つける上で重要な手掛かりとなります)。受動態の動詞と前置詞を組み合わせた例を次に示します:

命令形の動詞はたいてい能動態

受動態の文と間違えられやすいのが命令形の動詞で始まる文です。命令形の動詞は「言い付け」です。番号付きリストの要素は命令形の動詞で始まることがよくあります。例えば、次のリストにおける OpenSet は両方とも命令形の動詞です:

命令形の動詞で始まる文は行為者が明らかでなくても通常は能動体です。そういった文は行為者を暗黙の内に仮定します: 仮定される行為者は読者 (you) です。

練習問題

次の文が受動態か能動態かを答えてください。

  1. MutableInput provides read-only access.

    (MutableInput は読み込み専用のアクセスを提供する。)

  2. Read-only access is provided by MutableInput.

    (読み込み専用のアクセスは MutableInput によって提供される。)

  3. Performance was measured.

    (パフォーマンスが測定された。)

  4. Python was invented by Guido van Rossum in the twentieth century.

    (Python はグイド・ヴァン・ロッサムによって二十世紀に発明された。)

  5. David Korn discovered the KornShell quite by accident.

    (デビッド・コーンは KornShell を全くの偶然により発案した。)

  6. This information is used by the policy enforcement team.

    (その情報は政策実施チームによって使われた。)

  7. Click the Submit button.

    (Submit ボタンをクリックせよ。)

  8. The orbit was calculated by Katherine Johnson.

    (その軌道はキャサリン・ジョンソンによって計算された。)

  1. 能動態
  2. 受動態
  3. 受動態
  4. 受動態
  5. 能動態
  6. 受動態
  7. 能動態 (Click は命令形の動詞)
  8. 受動態

複雑な文における能動態と受動態の判別

多くの文は複数の動詞を持ち、その動詞は能動態であることもあれば受動態であることもあります。例えば次の文は二つの動詞を持ち、どちらも受動態です:

二つの受動態の文

同じ文を部分的に能動態に変換すると次のようになります:

能動態の文と受動態の文

同じ文をさらに書き換えて二つとも能動態にすると次のようになります:

二つの能動態の文

練習問題

次の各文にはそれぞれ二つの動詞が含まれます。動詞が能動態か受動態かを判別してください。例えば一つ目の動詞が能動態で二つ目の動詞が受動態なら「能動態・受動態」と答えてください。

  1. The QA team loves ice cream, but the writers prefer sorbet.

    (QA チームはアイスクリームが大好きだが、ライター達はシャーベットを好む。)

  2. Performance metrics are required by the team, though I prefer wild guesses.

    (パフォーマンスメトリクスがそのチームによって要求されているが、私は適当に推測する方が好きだ。)

  3. When software engineers attempt something new and innovative, a reward should be given.

    (ソフトウェアエンジニアが新しくて革新的なことに挑戦したときは、報酬が与えられるべきだ。)

  1. 能動態・能動態
  2. 受動態・能動態
  3. 能動態・受動態

受動態よりも能動態を優先する

技術文書では基本的に能動態を使って、受動態は控えめにしてください。能動態には次の利点があります:

大胆にbe bold ──能動態でbe active.

科学研究報告書 (スキップ可)

一部の分野の科学研究報告書では受動態が横行しています。そういった研究報告書では実験を行った人物や実験装置が文から消え去ってしまうことが多く、次のような表現で始まる受動態の文が使われがちです:

誰が、何に、何をしているかが、こういった文章から分かるでしょうか? いいえ、分かりません。受動態は何らかの意味で情報をより客観的にするでしょうか? いいえ、しません。

たくさんの科学ジャーナルは能動態を受け入れています。受動態をまだ受け入れていない他の人々にも明快さの追求に加わることを勧めます。

練習問題

次の受動態の文を能動態の文に書き換えてください。文には受動態でない動詞も含まれます。答えの文に能動態だけが含まれるようにしてください。

  1. The flags were not parsed by the Mungifier.

    (そのフラグは Mungifier によってパースされなかった。)

  2. A wrapper is generated by the Op registration process.

    (ラッパーが Op レジストレーションプロセスによって生成される。)

  3. Only one experiment per layer is selected by the Frombus system.

    (実験がレイヤーにつき一つだけ Frombus システムによって選択される。)

  4. Quality metrics are identified by asterisks; ampersands identify bad metrics.

    (質の高いメトリクスはアスタリスクによって表される。アンパサンドは悪いメトリクスを表す。)

  1. The Mungifier did not parse the flags.

    (Mugnifier はそのフラグをパースしなかった。)

  2. The Op registration process generates a wrapper.

    (Op レジストレーションプロセスはラッパーを生成する。)

  3. The Frombus system selects only one experiment per layer.

    (Frombus システムはレイヤーに付き実験を一つだけ選択する。)

  4. Asterisks identify quality metrics; ampersands identify bad metrics.

    (アスタリスクは質の高いメトリクスを表す。アンパサンドは悪いメトリクスを表す。)


  1. “getting the ball rolling” (ボールを転がす) は “to get something started” (何かを始める) を意味するイディオムです。[return]