4.11. トーナメントに関する練習問題

目次

トーナメントに関する話題は当然これだけではない。[Moon13] では様々な話題が解説されている。これまでに触れていない話題の簡単な紹介として、練習問題をいくつか示す。

次の三つの練習問題は「\(3\)-閉路」の概念を利用する。

定義 4.11.1

トーナメント \(D=\left( V,A\right) \) に含まれる \(3\)-閉路 (\(3\)-cycle) とは、\(V\) に属する頂点からなる三つ組 \(\left( u,v,w\right) \) であって組 \(\left( u,v\right) \), \(\left( v,w\right) \), \(\left( w,u\right) \) が全て \(A\) に属するものを言う。

例えば、例 4.10.4 で示したトーナメントは \(9\) 個の異なる \(3\)-閉路を持つ:

\[ \begin{aligned} & \left( 1,4,3\right) ,\quad \left( 1,5,3\right) ,\quad \left( 2,5,3\right) ,\quad \left( 3,1,4\right) ,\\ & \left( 3,1,5\right) ,\quad \left( 3,2,5\right) ,\quad \left( 4,3,1\right) ,\quad \left( 5,3,1\right) ,\\ & \left( 5,3,2\right) \end{aligned} \]

[ここでは \(\left( u,v,w\right) \) と \(\left( v,w,u\right) \) と \(\left( w,u,v\right) \) を異なる \(3\)-閉路とみなしている。]

練習問題 4.12

\(D=\left( V,A\right) \) をトーナメントとする。\(n=\left\vert V\right\vert \) および \(\displaystyle m=\sum_{v\in V}\dbinom{\deg^{-}v }{2}\) と定める。

  1. \(\displaystyle m=\sum_{v\in V}\dbinom{\deg^{+} v }{2}\) を示せ。

  2. \(D\) に含まれる \(3\)-閉路の個数は \(3\left( \dbinom{n}{3}-m\right) \) だと示せ。

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した homework set #2 の Exercise 5 である。解答は講義ページに載っている。]

次の練習問題では有向グラフ \(D\) における頂点 \(v\) の入次数を \(\deg_{D}^{-}v\) と表記している。 [通常は \(\deg^{-}v\) と表記するものの、\(v\) が複数の有向グラフの頂点となるときは \(D\) を明示的に表記することが重要になる。]

練習問題 4.13

トーナメント \(D\) が \(3\)-閉路 \(\left( u,v,w\right) \) を持つとき、新しいトーナメント \(D_{u,v,w}^{\prime}\) を次のように定める: \(D_{u,v,w}^{\prime}\) の頂点集合は \(D\) の頂点集合と等しい。\(D_{u,v,w}^{\prime}\) の弧集合は \(D\) の弧集合の \(\left( u,v\right) \), \(\left( v,w\right) \), \(\left( w,u\right) \) を \(\left( v,u\right) \), \(\left( w,v\right) \), \(\left( u,w\right) \) に置き換えた集合に等しい。 [視覚的に言えば、\(D_{u,v,w}^{\prime}\) は \(D\) の弧 \(\left( u,v\right) \), \(\left( v,w\right) \), \(\left( w,u\right) \) を反転させることで得られる。] トーナメント \(D\) から新しいトーナメント \(D_{u,v,w}^{\prime}\) を得る操作を \(3\)-閉路反転 (3-cycle reversal) と呼ぶ。

\(V\) を有限集合、\(E\) と \(F\) を頂点集合が \(V\) のトーナメントとする。\(E\) に施すことで \(F\) が得られる \(3\)-閉路反転の列が存在するのは、任意の \(v \in V\) が \(\deg _{E}^{-}\left( v\right) =\deg_{F}^{-}\left( v\right) \) を満たすとき、かつそのときに限ると示せ。 [操作の列は空であっても構わない。そのため \(E\) が \(3\)-閉路を持たない場合でも \(E = F\) なら前者の命題は自明に満たされる。]

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した homework set #2 の Exercise 6 である。解答は講義ページに載っている。]

練習問題 4.14

トーナメント \(D=\left( V,A\right) \) が \(3\)-閉路を持たないとき、\(D\) は推移的 (transitive) と言う。

トーナメント \(D=\left( V,A\right) \) の異なる三頂点 \(u\), \(v\), \(w\) が \(\left( u,v\right) \in A\) と \(\left( v,w\right) \in A\) を満たすとき、新しいトーナメント \(D_{u,v,w}^{\prime\prime}\) を次のように定める: \(D_{u,v,w}^{\prime\prime}\) の頂点集合は \(D\) の頂点集合と等しい。\(D_{u,v,w}^{\prime\prime}\) の辺集合は \(D\) の辺集合の \(\left( u,v\right) \), \(\left( v,w\right) \) を \(\left( v,u\right) \), \(\left( w,v\right) \) に置き合えたものに等しい。トーナメント \(D\) から新しいトーナメント \(D_{u,v,w}^{\prime\prime}\) を得る操作を \(2\)-路反転 (2-path reversal) と呼ぶ。

\(D\) を任意のトーナメントとする。\(D\) を推移的なトーナメントに変換する \(2\)-路反転の列が存在することを示せ。

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した homework set #2 の Exercise 7 である。解答は講義ページに載っている。]

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