8.9. Hall の結婚定理に関する練習問題

目次

Hall の結婚定理 (定理 8.3.4) を利用する練習問題を少数ではあるがここに示す。

練習問題 8.3

有限集合 \(X\), \(Y\) が \(\left\vert X\right\vert \leq\left\vert Y\right\vert \) を満たすと仮定する。\(f\colon X\rightarrow Y\) を定数でない写像とする (写像が定数 (constant) とは、写像の値が全て等しいことを言う)。任意の \(x \in X\) が \(g\left( x\right) \neq f\left( x\right) \) を満たす単射 \(g\colon X\rightarrow Y\) が存在すると示せ。

練習問題 8.4

有限集合 \(A\), \(B\) が \(\left\vert B\right\vert \geq\left\vert A\right\vert \) を満たすと仮定する。任意の \(\left( i,j\right) \in A\times B\) に対して実数 \(d_{i,j}\) が定まっているとする。\(m_{1}\) と \(m_{2}\) を次のように定める:

\[ \begin{aligned} m_{1} &=\min\limits_{\text{単射 }\sigma\colon A\rightarrow B}\ \max\limits_{i\in A}\ d_{i,\sigma\left( i\right) } \\[5pt] m_{2} &=\max\limits_{\substack{I\subseteq A;\ J\subseteq B;\\\left\vert I\right\vert +\left\vert J\right\vert =\left\vert B\right\vert +1}}\ \min\limits_{\left( i,j\right) \in I\times J}d_{i,j} \end{aligned} \]

\(m_{1} = m_{2}\) を示せ。 [数式 \(\min\limits_{\text{object}} \text{value}\) は「全ての object を考えたときの value の最小値」を意味する (\(\max\) についても同様)。]

練習問題 8.5

単純グラフ \(G=\left( V,E\right) \) が \(\left\vert E\right\vert \geq\left\vert V\right\vert \) を満たすと仮定する。単射 \(f\colon V\rightarrow E\) であって条件「任意の頂点 \(v \in V\) に対して、辺 \(f\left( v\right) \) は \(v\) を含まない」を満たすものが存在すると示せ。

[言い換えれば、各頂点をそれが含まれない辺に関連付けていくとき、二度関連付けられる辺が存在しないようにできると示せ。]

[Remark: これは (ある意味で) 練習問題 5.17 の「邪悪な双子」である。ただし、こちらの命題では多重グラフではなく単純グラフが要求される: 一つの頂点と一つのループからなる多重グラフが反例となる。ちなみに、練習問題 5.17 を Hall の結婚定理を使って解くこともできる。]

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した midterm #2 の Exercise 1 である。解答は講義ページに載っている。]

練習問題 8.6

\(S\) を有限集合、\(k\) を自然数とする。\(k\) 個の \(S\) の部分集合 \(A_{1}, A_{2}, \ldots, A_{k}\) が条件「\(S\) の各要素が \(A_{1}, A_{2}, \ldots, A_{k}\) のちょうど一つに含まれる」を満たすとする。次の二つの命題が同値だと示せ:

  • 命題 1: 任意の \(i \in\left\{ 1, 2, \ldots, k \right\} \) が \(\sigma\left( A_{i} \right) \cap A_{i} = \varnothing\) を満たす全単射 \(\sigma\colon S \to S\) が存在する。

  • 命題 2: 任意の \(i\in\left\{ 1,2,\ldots,k\right\} \) が \(\left\vert A_{i}\right\vert \leq\left\vert S\right\vert /2\) を満たす。

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した homework set #4 の Exercise 5 である。解答は講義ページに載っている。]

練習問題 8.7

\(S\) を有限集合、\(k\) を自然数とする。\(\left\vert S\right\vert \geq2k+1\) が成り立つと仮定する。単射 \(f\colon \mathcal{P}_{k}\left( S\right) \rightarrow\mathcal{P}_{k+1}\left( S\right) \) であって任意の \(X\in\mathcal{P}_{k}\left( {S}\right) \) が \(f\left( X\right) \supseteq X\) を満たすものが存在すると示せ。

[言い換えれば、\(S\) の任意の \(k\) 要素部分集合 \(X\) に \(S \setminus X\) の要素を一つ追加していくとき、完成する \( k + 1 \) 要素部分集合が全て異なるようにできると示せ。]

[: \(S=\left\{ 1,2,3,4,5\right\} \) および \(k=2\) のとき、例えば次のように定義される写像 \(f\) は条件を満たす:

\[ \begin{aligned} \left\{ 1,2\right\} & \mapsto\left\{ 1,2,4\right\} ,\quad \left\{ 1,3\right\} \mapsto\left\{ 1,3,4\right\} ,\quad \left\{ 1,4\right\} \mapsto\left\{ 1,4,5\right\} ,\\ \left\{ 1,5\right\} & \mapsto\left\{ 1,3,5\right\} ,\quad \left\{ 2,3\right\} \mapsto\left\{ 1,2,3\right\} ,\quad \left\{ 2,4\right\} \mapsto\left\{ 2,4,5\right\} ,\\ \left\{ 2,5\right\} & \mapsto\left\{ 1,2,5\right\} ,\quad \left\{ 3,4\right\} \mapsto\left\{ 2,3,4\right\} ,\quad \left\{ 3,5\right\} \mapsto\left\{ 2,3,5\right\} ,\\ \left\{ 4,5\right\} & \mapsto\left\{ 3,4,5\right\} \end{aligned} \]

ここに何らかのパターンを見出せるだろうか? (私には見出せない。)]

[ヒント: まず \(\left\vert S\right\vert =2k+1\) の場合を考えれば十分だと示す。その後、示すべき命題を特定の二部グラフのマッチングを使って言い換える。]

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した homework set #4 の Exercise 4 である。解答は講義ページに載っている。]

練習問題 8.8

\(\left( G,X,Y\right) \) を二部グラフとする。\(X\) の任意の部分集合 \(A\) が \(\left\vert N\left( A\right) \right\vert \geq\left\vert A\right\vert \) を満たすと仮定する (そのため定理 8.3.4 より \(G\) は \(X\)-完全なマッチングを持つ)。

\(X\) の部分集合 \(A\) が \(\left\vert N\left( A\right) \right\vert =\left\vert A\right\vert \) を満たすとき、\(X\) は隣接限界 (neighbor-critical) と言うことにする。

\(A\) と \(B\) が \(X\) の隣接限界な部分集合のとき、\(A\cup B\) と \(A\cap B\) も \(X\) の隣接限界な部分集合だと示せ。

[解答: これは 2017 年春学期に開講された講義で出した homework set #4 の Exercise 6 である。解答は講義ページに載っている。]

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