問題: ネットワークへの接続

目次

第 1 章では、ネットワークがノードを相互接続するリンクから構成されることを見た。ノードを相互接続するときに直面する基礎的な問題の一つは「どのように二つのノードを接続するか」である。また内部の複雑性を公開せずにネットワークを表す「雲」の抽象化も前章で紹介した。ホストを「雲」に接続するという似た問題も解決しなければならない。これは、全てのISP (internet service provider, インターネットサービスプロバイダ) が新しい顧客をネットワークに接続するときに実際に抱える課題である。

二つのノードからなる簡単なネットワークを構築するのであれ、インターネットのような既存のネットワークに十億台目のホストを接続するのであれ、解決すべき問題は変わらない。第一に、接続を行うための物理媒体が必要になる。媒体としては銅線や光ファイバーなどのケーブル、または電磁波 (電波など) が伝わる目に見えない媒体 (空気など) が考えられる。こういった媒体が小さな領域 (例えば一つのオフィス) をカバーする場合もあれば、広大な領域 (例えばアメリカ大陸全体) をカバーする場合もある。

しかし、二つのノードを適切な媒体で接続するのは最初のステップに過ぎない。ノード同士が正しくパケットを交換するために解決しなければならない問題がさらに五つある。これらの問題が解決されれば、L2 接続 (Layer 2 connectivity) がノードに提供されたことになる。「L2 接続」は OSI アーキテクチャの用語を借りた言葉であり、第 2 層接続とも呼ばれる。

その五つの問題とは次の通りである。第一に、エンドホストが理解できて転送媒体に流せる形式にビットを符号化 (encode) する必要がある。第二に、完全なメッセージがエンドホストに届くようリンクを通じて転送されるビット列に補助情報を付与しなければならない。これはフレーム化 (framing)と呼ばれる問題であり、エンドホストへ届けられるメッセージはフレーム (frame) と呼ばれる (パケットと呼ばれることもある)。第三に、転送の間にフレームが壊れる場合があるので、誤りを検出して適切な処置を行う必要がある。これは誤り検出 (error detection) 問題である。第四に、フレームが時おり破損する状況でリンクの信頼性を保証する問題がある。最後に、リンクが複数のホストによって共有される ── 無線リンクでよくある ── 状況では、リンクへのアクセスを何らかの形で調停しなければならない。この問題は MAC (media access control, 媒体アクセス制御) と呼ばれる。

これら五つの問題 ── 符号化、フレーム化、誤り検出、信頼性保証、アクセス調停 ── を抽象的に議論することもできるものの、これらは異なるネットワークテクノロジによって異なる手法で解決される非常に現実的な問題である。本章ではこれら五つの問題を様々なネットワークテクノロジを通して見ていく: ポイントツーポイントの光ファイバーリンク (最も分かりやすい例は SONET)、CSMA/CD (Carrier Sense Multiple Access with Collision Detect, 搬送波感知多元接続/衝突検出) ネットワーク (最も有名な例は古典的なイーサネットと Wi-Fi)、ファイバー・トゥ・ザ・ホーム (支配的な規格は PON)、モバイルワイヤレス (4G が 5G へと急速に置き換わっている) が紹介される。

本章の目標は実際に使われているリンクレベルのテクノロジを概観しつつ、上述した五つの基礎的な問題に関して洞察を深めることである。様々な物理媒体やリンクテクノロジをロバストでスケーラブルなネットワークを構築する上での構成要素として役立つものにしている要素についても考察する。

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