13.7 多面体の分類
ピタゴラス学派 (Pythagorean) が発見した数学の秘密が二つある。\(\sqrt{2}\) の無理数性と、本節で触れる幾何学図形である!
多面体 (polyhedron) とは、有限個の多角形面で囲まれた凸三次元領域を意味する。全ての面が正多角形であり、全ての頂点が同じ個数の多角形によって共有される多面体を正多面体 (regular polyhedron) と呼ぶ。三種類の正多面体を図 \(\text{13.13}\) に示す。左から正四面体 (tetrahedron)、立方体 (cube)、正八面体 (octahedron) と呼ばれる。
グラフの平面性を利用すると、可能な正多面体を特定できる。任意の多面体の中に球を置いた状況を想像してほしい。その上で多面体の頂点と辺を球に射影すると、球の表面上に現れる像はグラフの平面埋め込みとなる。そのグラフの頂点と辺は多面体の頂点と辺に対応する。先述したようにグラフの球面上への埋め込みは平面への埋め込みに等しいので、平面グラフに関する Euler の公式を使えば正多面体を見つけるヒントが得られる。
例えば、図 \(\text{13.13}\) に示した三種類の正多面体の平面埋め込みは図 \(\text{13.14}\) となる。
正多面体の各頂点を共有する面の個数を \(m\) として、正多角形の面を構成する辺の個数を \(n\) とする。この正多面体に対応する平面グラフが \(v\) 個の頂点を持つとすれば、それぞれの頂点には \(m\) 個の辺が接続するので握手補題 (補題 12.2.1) より次の等式が分かる:
また、それぞれの面は \(n\) 個の辺を持ち、任意の辺は二つの面の境界である事実からは次の等式が分かる:
これら二つの等式を \(v\) と \(f\) について解き、それを Euler の公式 (定理 13.3.1) に代入すると次の等式を得る:
整理すれば次の等式となる:
等式 \(\text{(13.7)}\) は正多面体の構造に課される強い制約を表す。縮退していない多角形は少なくとも \(3\) 個の辺を持つので \(n \geq 3\) が分かる。また、三次元領域を構成するには各頂点を \(3\) 個以上の面が共有する必要がある。つまり \(m \geq 3\) でなければならない。一方で、もし \(n\), \(m\) のいずれかが \(6\) 以上だと、左辺が \(1/3 + 1/6 = 1/2\) 以下となって右辺より真に小さくなってしまう。こうして特定された有限個の可能性を一つずつ調べると、図 \(\text{13.15}\) に示す \(5\) 個の候補だけが残る。\(n\), \(m\) の組み合わせのそれぞれについて、対応する正多面体の頂点の個数 \(v\), 辺の個数 \(e\)、面の個数 \(f\) も計算できる。そして、これらの性質を持った正多面体は確かに存在する。最も大きい正多面体である正十二面体の存在は、ピタゴラス教団が秘密にしていたもう一つの数学的知識だった。
正多面体は図 \(\text{13.15}\) に示した \(5\) 種類しか存在しない。そのため、例えば \(20\) 個の人工衛星を地球の周回軌道上に一様に配置したいなどと思っているなら ── 幸運を祈る!