§222 指数関数の定義

第九章では実数変数 \(y\) の関数 \(e^{y}\) を \(y = \log x\) の逆関数として定義した。ここから複素変数 \(z\) の関数 \(\operatorname{Log} z\) の逆関数の定義が自然に導かれる:

\(\operatorname{Log} z\) のいずれかの値が \(\zeta\) に等しいなら、\(z\) を \(\zeta\) の指数 (exponential) と呼び \[ z = \exp \zeta \] と書く。

つまり \(z = \exp \zeta\) となるのは \(\zeta = \operatorname{Log} z\) が成り立つときとなる。固定された \(z\) に対応する \(\zeta\) が無限に存在するのは明らかである。ここから逆に、固定された \(\zeta\) に対応する \(z\) が無限に存在する、つまり \(\exp \zeta\) が \(\zeta\) の無限多価関数だと考えてもおかしくはない。しかし次の定理が示す通りこの考えは間違っている:

\(\exp \zeta\) は \(\zeta\) の一価関数である。

証明は次の通り。\(\exp \zeta\) の値を \[ z_{1} = r_{1}(\cos\theta_{1} + i\sin\theta_{1}),\quad z_{2} = r_{2}(\cos\theta_{2} + i\sin\theta_{2}) \] とする。このとき \[ \zeta = \operatorname{Log} z_{1} = \operatorname{Log} z_{2} \] が成り立つから、整数 \(m,\ n\) を使って \[ \log r_{1} + i(\theta_{1} + 2m\pi) = \log r_{2} + i(\theta_{2} + 2n\pi) \] と書ける。ここから \[ \log r_{1} = \log r_{2},\quad \theta_{1} + 2m\pi = \theta_{2} + 2n\pi \] が分かる。つまり \(r_{1} = r_{2}\) で、\(\theta_{1}\) と \(\theta_{2}\) は \(2\pi\) の倍数だけ離れている。よって \(z_{1} = z_{2}\) が成り立つ。

\(\zeta\) が実数なら \(\exp \zeta = e^{\zeta}\) であり、\(\exp \zeta\) は 第九章 で定義した実数に対する指数関数に等しい。

\(z = e^{\zeta}\) なら \(\log z = \zeta\) が成り立つ。つまり \(\operatorname{Log} z\) の値の一つが \(\zeta\) だから、\(z = \exp \zeta\) を得る。