§184 級数の絶対収束

任意の項が正でも負でもあり得る級数 \(\sum u_{n}\) を考える。 \[ |u_{n}| = \alpha_{n} \] とすると、\(u_{n}\) が正なら \(\alpha_{n} = u_{n}\) で \(u_{n}\) が負なら \(\alpha_{n} = -u_{n}\) となる。さらに新しい数列 \(v_{n}, w_{n}\) を、\(u_{n}\) が正なら \(v_{n} = u_{n},\ w_{n} = 0\) で、\(u_{n}\) が負なら \(v_{n} = 0,\ w_{n} = -u_{n}\) と定義する。同じことを言い換えると、\(u_{n}\) の正負に応じて \(v_{n}\) と \(w_{n}\) のどちらかが \(\alpha_{n}\) と等しくなり、もう一方が \(0\) となる。\(v_{n}\) と \(w_{n}\) は常に正であり、 \[ u_{n} = v_{n} - w_{n},\quad \alpha_{n} = v_{n} + w_{n} \] を満たす。

例えば級数 \(1 - (1/2)^{2} + (1/3)^{2} - \cdots\) を考えているなら \(u_{n} = (-1)^{n-1}/n^{2}\) および \(\alpha_{n} = 1/n^{2}\) であり、\(n\) の偶奇に応じて \(v_{n} = 0\) または \(v_{n} = 1/n^{2}\) および \(w_{n} = 1/n^{2}\) または \(w_{n} = 0\) となる。

こうすると二つのケースを分けて議論できる:

A: \(\sum \alpha_{n}\) が収束すると仮定する。例えば上述の例では \(\sum \alpha_{n}\) つまり \[ 1 + \frac{1}{2^{2}} + \frac{1}{3^{2}} + \cdots \] が収束するのでこのケースとなる。このとき \(\sum v_{n}\) と \(\sum w_{n}\) も収束する: 収束する正項級数の項を取ってできる級数は収束することは 例 30.18 で見た。よって §77 の定理 \(\text{(6)}\) から \(\sum(v_{n} - w_{n})\) つまり \(u_{n}\) も収束し、その値は \(\sum v_{n} - \sum w_{n}\) に等しいと分かる。

ここから次の定義が導かれる:

\(\sum \alpha_{n}\) つまり \(\sum |u_{n}|\) が収束するなら、級数 \(\sum u_{n}\) は絶対収束する (converge absolutely) と言う。

この定義を使えば、先ほど示した命題は「絶対収束する級数 \(\sum u_{n}\) は収束する」となる。さらに正の項と負の項を集めてできる級数も収束し、\(\sum u_{n}\) はその二つの級数の和に等しい。

「絶対収束する級数は収束する」という命題はトートロジーではないか、などと思わないようよく注意しなければならない。\(\sum u_{n}\) が “絶対収束” すると言ったとしても、それは \(\sum u_{n}\) が収束することを直接は意味しない。こう言ったとき私たちが主張しているのは \(\sum |u_{n}|\) という全く別の級数の収束であり、\(\sum u_{n}\) が振動する可能性は決して除かれていない。

例 77
  1. §84 の “収束の一般原則” を使って絶対収束する級数が収束することを示せ。 [級数 \(\sum |u_{n}|\) が収束するので、与えられた任意の正の \(\varepsilon\) に対して、\(n_{2} \gt n_{1} \geq n_{0}\) で \[ |u_{n_{1}+1}| + |u_{n_{1}+2}| + \cdots + |u_{n_{2}}| \lt \varepsilon \] が成り立つような \(n_{0}\) が存在する。したがって \[ |u_{n_{1}+1} + u_{n_{1}+2} + \cdots + u_{n_{2}}| \lt \varepsilon \] であり、\(\sum u_{n}\) は収束する]

  2. \(\sum a_{n}\) を収束する正項級数とする。\(|b_{n}|\leq Ka_{n}\) なら \(\sum b_{n}\) は絶対収束する。

  3. \(\sum a_{n}\) を収束する正項級数とする。\(-1 \leq x \leq 1\) に対して級数 \(\sum a_{n}x^{n}\) は絶対収束する。

  4. \(\sum a_{n}\) を収束する正項級数とする。\(\sum a_{n} \cos n\theta\) と \(\sum a_{n}\sin n\theta\) は \(\theta\) の値に関わらず絶対収束する。 [§88 で触れた級数 \(\sum r^{n}\cos n\theta\) と \(\sum r^{n}\sin n\theta\) がこの例となる]

  5. 絶対収束する級数の一部を取ってできる任意の級数は絶対収束する。 [新しい級数の絶対値の級数は、元の級数の絶対値の級数の一部を取ってできる級数となる]

  6. \(\sum |u_{n}|\) が収束するなら \[ \left|\sum u_{n} \right| \leq \sum |u_{n}| \] であり、等号の成立は全ての項が同じ符号を持つ場合に限ると示せ。