§210 一般の対数

対数が数値計算で使われることを読者は知っているだろう。初等代数では \(a\) を底とした \(x\) の対数 \(\log_{a} x\) を次の等式で定義する: \[ x = a^{y},\quad y = \log_{a} x \] 見過ごされることも多いが、この定義は \(y\) が有理数のときしか意味を持たない。

今まで使ってきた対数は底が \(e\) であり、数値計算では底が \(10\) の対数が使われる。ここで \[ y = \log x = \log_{e} x,\quad z = \log_{10} x \] とすれば \(x = e^{y}\) かつ \(x = 10^{z} = e^{z\log 10}\) となる。よって \[ \log_{10} x = \frac{\log_{e} x}{\log_{e} 10} \] であり、\(\log_{e} 10\) さえ計算されていれば底が異なる対数の間で変換が可能になる。

対数の実際的な利用法について細かく議論するのはこの本の目的ではない。この話題について知らない場合には、初等代数や三角法の教科書を参照するとよい1

例 87
  1. 次を示せ: \[ D_{x} e^{ax}\cos bx = re^{ax} \cos(bx + \theta),\quad D_{x} e^{ax}\sin bx = re^{ax} \sin(bx + \theta) \] ここで \(r = \sqrt{a^{2} + b^{2}},\ \cos\theta = a/r,\ \sin\theta = b/r\) とする。これを使って \(e^{ax}\cos bx\) と \(e^{ax}\sin bx\) の \(n\) 次導関数を求めよ。特に \(D_{x}^{n} e^{ax} = a^{n} e^{ax}\) を示せ。

  2. 曲線 \(y = e^{-ax}\sin bx\) の概形を描け。\(a\) と \(b\) は正とする。\(y\) が無限個の極大値を持ち、それらが曲線 \[ y = \frac{b}{\sqrt{a^{2} + b^{2}}}\, e^{-ax} \] 上にある等比数列だと示せ。

    (Math. Trip. 1912.)

  3. 指数関数を含んだ関数の積分: 次を示せ: \[ \begin{aligned} \int e^{ax}\cos bx\, dx & = \frac{a\cos bx + b\sin bx}{a^{2} + b^{2}}\, e^{ax}, \\ \int e^{ax}\sin bx\, dx & = \frac{a\sin bx - b\cos bx}{a^{2} + b^{2}}\, e^{ax} \end{aligned} \]

    [二つの積分を \(I,\ J\) とすると、部分積分から \[ aI = e^{ax}\cos bx + bJ,\quad aJ = e^{ax}\sin bx - bI \] を得る。この方程式を \(I\) と \(J\) について解けばよい]

  4. 問題 2 の曲線と \(x\) 軸の正の部分が囲む領域の面積が等比数列となり、その和が \[ \frac{b}{a^{2} + b^{2}}\, \frac{1 + e^{-a\pi/b}}{1 - e^{-a\pi/b}} \] だと示せ。

  5. \(a \gt 0\) のとき \[ \int_{0}^{\infty} e^{-ax}\cos bx\, dx = \frac{a}{a^{2} + b^{2}},\quad \int_{0}^{\infty} e^{-ax}\sin bx\, dx = \frac{b}{a^{2} + b^{2}} \] だと示せ。

  6. \(I_{n} = \displaystyle\int e^{ax}x^{n}\, dx\) とすると \(aI_{n} = e^{ax}x^{n} - nI_{n-1}\) が成り立つ。 [部分積分を使う。この結果を繰り返し使えば全ての \(n\) に対する \(I_{n}\) を計算できる]

  7. 正の整数 \(n\) に対する等式 \[ \int_{0}^{\xi} e^{-x}x^{n}\, dx = n!\, e^{-\xi} \left( e^{\xi} - 1 - \xi - \frac{\xi^{2}}{2!} - \cdots - \frac{\xi^{n}}{n!} \right) \] および \[ \int_{0}^{\infty} e^{-x}x^{n}\, dx = n! \] を示せ。

  8. \(e^{x}\) の任意の有理関数の積分を計算する方法を示せ。 [\(x = \log u\) とすれば \(e^{x} = u,\ \) \(dx/du = 1/u\) であり、与えられた積分は \(u\) の有理関数の積分に変形される]

  9. 次の積分を計算せよ: \[ \frac{e^{2x}}{(c^{2}e^{x} + a^{2}e^{-x})(c^{2}e^{x} + b^{2}e^{-x})} \] \(a\) と \(b\) が等しい場合と等しくない場合を分けて考えること。

  10. 任意の多項式 \(P\) に対する関数 \(P(x, e^{ax}, e^{bx},\ \ldots)\) の積分を計算できることを証明せよ。 [\(P\) を \(Ax^{m}e^{kx}\) という形をした項の和として表せる事実から分かる (\(m\) は整数)]

  11. 次の形をした関数の積分方法を示せ: \[ P(x,\ e^{ax},\ e^{bx},\ \ldots,\ \cos lx,\ \cos mx,\ \ldots,\ \sin lx,\ \sin mx,\ \ldots) \]

  12. 積分 \(\displaystyle\int_{a}^{\infty} e^{-\lambda x} R(x)\, dx\) が収束することを示せ。\(\lambda \gt 0\) で、\(a\) は \(R(x)\) の分母の根のどれよりも大きいとする。

  13. \(\lambda \gt 0\) なら \(\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} e^{-\lambda x^{2} + \mu x}\, dx\) が全ての \(\mu\) に対して収束することを示せ。同様のことを任意の正の整数 \(n\) に対する \(\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} e^{-\lambda x^{2} + \mu x} x^{n}\, dx\) について示せ。

  14. \(e^{x^{2}},\ e^{-x^{2}},\ xe^{x},\ xe^{-x},\ xe^{x^{2}},\ xe^{-x^{2}},\ x\log x\) のグラフを描け。グラフの極小値・極大値・変曲点を全て求めよ。

  15. \(a\) と \(b\) を正の実数とする。\(e^{ax} = bx\) の実根の個数が、\(b \gt ae,\ b = ae,\ b \lt ae\) に応じて \(2,\ 1,\ 0\) だと示せ。 [曲線 \(y = e^{ax}\) の点 \((\xi, e^{a\xi})\) における接線は \[ y - e^{a\xi} = ae^{a\xi}(x - \xi) \] である。この直線が原点を通るとき \(a\xi = 1\) で、接線が \(y = aex\) で接点が \((1/a, e)\) となる。直線 \(y = bx\) を引くと示すべき結果が明らかになる。\(a\) と \(b\) の片方または両方が負の場合も考えてみるとよい]

  16. 方程式 \(e^{x} = 1 + x\) と \(e^{x} = 1 + x + \frac{1}{2}x^{2}\) が \(x = 0\) 以外に実根を持たないことを示せ2

  17. 次の関数のグラフを描け: \[ \begin{gathered} \log(x + \sqrt{x^{2} + 1}),\quad \log\left(\frac{1 + x}{1 - x}\right),\quad e^{-ax}\cos^{2}bx,\\ e^{-(1/x)^{2}},\quad e^{-(1/x)^{2}}\sqrt{1/x},\quad e^{-\cot x},\quad e^{-\cot^{2} x} \end{gathered} \]

  18. 次の方程式の実根の位置を大まかに近似せよ: \[ \begin{gathered} \log(x + \sqrt{x^{2} + 1}) = \frac{x}{100},\quad e^{x} - \frac{2 + x}{2 - x} = \frac{1}{10000},\\ e^{x}\sin x = 7,\quad e^{x^{2}}\sin x = 10000 \end{gathered} \]

  19. 双曲線関数: 双曲線関数 \(\cosh x,\ \sinh x,\ \ldots\) は次の等式で定義される3: \[ \begin{alignedat}{3} \cosh x & = \dfrac{1}{2}(e^{x} + e^{-x}), & \sinh x & = \dfrac{1}{2}(e^{x} - e^{-x}),\\ \tanh x & = \frac{\sinh x}{\cosh x}, & \coth x & = \frac{\cosh x}{\sinh x},\\ \operatorname{sech} x & = \frac{1}{\cosh x}, & \operatorname{cosech} x & = \frac{1}{\sinh x} \end{alignedat} \] これらの関数のグラフを描け。

  20. 次の等式を示せ: \[ \begin{gathered} \cosh(-x) = \cosh x,\quad \sinh(-x) = -\sinh x,\quad \tanh(-x) = -\tanh x, \\ \cosh^{2} x - \sinh^{2} x = 1,\quad \text{sech}^{2} x + \tanh^{2} x = 1,\quad \coth^{2} x - \text{cosech}^{2} x = 1, \\ \cosh 2x = \cosh^{2} x + \sinh^{2} x,\quad \sinh 2x = 2\sinh x\cosh x, \\ \begin{alignedat}{2} \cosh(x + y) & = \cosh x\cosh y & & + \sinh x\sinh y,\\ \sinh(x + y) & = \sinh x\cosh y & & + \cosh x\sinh y \end{alignedat} \end{gathered} \]

  21. 前問の等式の \(\cosh x\) を \(\cos x\) に置き換え、\(i \sinh x\) を \(\sin x\) に置き換えることで得られる \(\cos x\) と \(\sin x\) に関する等式が正しいことを確認せよ。

    [\(\cos x\) と \(\sin x\) の初等的な性質から導ける全ての等式に対応する \(\cosh x\) と \(\sinh x\) の等式についても同様のことが言える。この対応が成り立つ理由は第十章で見る]

  22. \(\cosh x\) と \(\sinh x\) を (a) \(\cosh 2x\) と (b) \(\sinh 2x\) のそれぞれを使って表せ。生じうる符号の曖昧性を議論せよ。

  23. 次を示せ: \[ \begin{alignedat}{3} D_{x}\cosh x & = \sinh x,& D_{x}\sinh x & = \cosh x,\\ D_{x}\tanh x & = \text{sech}^{2}x,& D_{x}\coth x & = -\text{cosech}^{2}x,\\ D_{x}\operatorname{sech}x & = -\operatorname{sech}x\tanh x,& D_{x}\operatorname{cosech}x & = -\operatorname{cosech}x\coth x,\\ D_{x}\log \cosh x & = \tanh x,& D_{x}\log|\sinh x| & = \coth x,\\ D_{x}\arctan e^{x} & = \dfrac{1}{2}\operatorname{sech}x,& D_{x}\log |\tanh \dfrac{1}{2} x| & = \operatorname{cosech}x \end{alignedat} \]

    [もちろん積分を使った等式に変形することもできる]

  24. \(\cosh x \gt 1\) および \(-1 \lt \tanh x \lt 1\) を示せ。

  25. \(y = \cosh x\) なら \(x = \log\{y ± \sqrt{y^{2} - 1}\}\) だと示せ。さらに \(y = \sinh x\) なら \(x = \log\{y + \sqrt{y^{2} + 1}\}\) で、\(y = \tanh x\) なら \(x = \frac{1}{2}\log\{(1 + y)/(1 - y)\}\) だと示せ。\(\cosh x\) の逆関数の符号の曖昧性について議論せよ。

  26. \(\cosh x,\ \sinh x,\ \tanh x\) の逆関数を \(\text{argcosh } x,\ \text{argsinh } x,\ \text{argtanh } x\) と表記する。\(\text{argcosh } x\) が \(x \geq 1\) に対して定義される一般に二価の関数だと示せ。さらに \(\text{argsinh } x\) と \(\text{argtanh } x\) が一価関数であり、\(\text{argsinh } x\) は全ての実数 \(x\) に対して、\(\text{argtanh } x\) が \(-1 \lt x \lt 1\) に対して定義されることを示せ。これらの関数のグラフを描け。

  27. \(-\frac{1}{2}\pi \lt x \lt \frac{1}{2}\pi\) かつ \(y > 0\) を考える。\(\cos x\cosh y = 1\) なら \[ y = \log(\sec x + \tan x),\quad D_{x} y = \sec x,\quad D_{y} x = \operatorname{sech} y \] だと示せ。

  28. \(a \gt 0\) とする。\(\displaystyle\int \frac{dx}{\sqrt{x^{2} + a^{2}}} = \text{argsinh }\dfrac{x}{a}\) を示せ。また \(\displaystyle\int \frac{dx}{\sqrt{x^{2} - a^{2}}}\) が \(x \gt 0\) なら \(\text{argcosh }\dfrac{x}{a}\) に等しく、\(x \lt 0\) なら \(-\text{argcosh }\dfrac{-x}{a}\) に等しいことを示せ。

  29. \(a \gt 0\) とする。\(\displaystyle\int \frac{dx}{x^{2} - a^{2}}\) が \(|x|\) が \(a\) より小さいなら \(- \dfrac{1}{a}\text{argtanh } \dfrac{x}{a}\) に等しく、\(|x|\) が \(a\) より大きいなら \(- \dfrac{1}{a}\text{argcoth } \dfrac{x}{a}\) に等しいことを示せ。 [問題 28, 29 の結果を使うと第六章で示した公式の多くに関して別表現が得られる]

  30. 次を示せ: \[ \begin{alignedat}{3} \int \frac{dx}{\sqrt{(x - a)(x - b)}} & = & & 2\log\{\sqrt{x - a} + \sqrt{x - b}\} & & (a \lt b \lt x),\\ \int \frac{dx}{\sqrt{(a - x)(b - x)}} & = -& & 2\log\{\sqrt{a - x} + \sqrt{b - x}\}\quad & & (x \lt a \lt b),\\ \int \frac{dx}{\sqrt{(x - a)(b - x)}} & = & & 2\arctan\sqrt{\frac{x - a}{b - x}} & & (a \lt x \lt b) \end{alignedat} \]

  31. 次を示せ: \[ \int_{0}^{1} x \log(1 + \dfrac{1}{2}x)\, dx = \dfrac{3}{4} - \dfrac{3}{2}\log\dfrac{3}{2} \lt \dfrac{1}{2} \int_{0}^{1} x^{2}\, dx = \dfrac{1}{6} \]

    (Math. Trip. 1913.)

  32. 方程式 \(a\cosh x + b\sinh x = c\) を解け。\(c \gt 0\) とする。\(b^{2} + c^{2} - a^{2} \lt 0\) なら実根を持たず、\(b^{2} + c^{2} - a^{2} \gt 0\) なら実根の個数が \(a + b\) と \(a - b\) の符号によって変化し、両方正・逆の符号・両方負の場合にそれぞれ \(2,\ 1,\ 0\) となることを示せ。

  33. 連立方程式 \(\cosh x\cosh y = a,\ \sinh x\sinh y = b\) を解け。

  34. \(x \to \infty\) のとき \(x^{1/x} \to 1\) が成り立つ。 [\(x^{1/x} = e^{(\log x)/x}\) および \((\log x)/x \to 0\) から分かる。例 27.11 も参照] 同様に関数 \(x^{1/x}\) が \(x = e\) で最大値を取ることを示し、正の \(x\) に対応するこの関数のグラフを描け。

  35. \(x \to +0\) のとき \(x^{x} \to 1\) が成り立つ。

  36. \(n \to \infty\) のとき \(\dfrac{f(n + 1)}{f(n)} \to l\) で \(l \gt 0\) なら \(\sqrt[n]{f(n)} \to l\) が成り立つ。

    [\(\log f(n + 1) - \log f(n) \to \log l\) より \(\dfrac{1}{n}\log f(n) \to \log l\) が分かる (参考: 第四章に関するその他の例 27)]

  37. \(n \to \infty\) のとき \(\sqrt[n]{n!}/n \to 1/e\) が成り立つ。

    [\(f(n) = n^{-n} n!\) とすれば \(\{f(n + 1)\}/\{f(n)\} = \{1 + (1/n)\}^{-n} \to 1/e\) が成り立つ。問題 36 を使う]

  38. \(n \to \infty\) のとき \(\sqrt[n]{{(2n)!}/{(n!)^{2}}} \to 4\) が成り立つ。

  39. 方程式 \(e^{x} = x^{1000000}\) の解を近似せよ。

    [方程式が二つの正の根と一つの負の根を持つことがグラフから分かる。正の根の一つは \(1\) より少しだけ大きく、もう一つは非常に大きい4。負の根は \(-1\) より少しだけ大きい。次のようにすると大きな正の根の大きさを見積れる。もし \(e^{x} = x^{1000000}\) なら、近似的に \[ \begin{gathered} x = 10^{6} \log x,\quad \log x = 13.82 + \log\log x,\\ \log\log x = 2.63 + \log \left(1 + \frac{\log\log x}{13.82}\right) \end{gathered} \] が成り立つ。ここで \(13.82\) と \(2.63\) はそれぞれ \(\log 10^{6}\) と \(\log\log 10^{6}\) の近似値である。この等式から \(\log x : 13.82\) と \(\log\log x : 2.63\) が \(1\) にほぼ等しいことが分かり、十分近い近似が得られる: \[ x = 10^{6}(13.82 + \log\log x) = 10^{6}(13.82 + 2.63) = 16450000 \] 誤差は \(10^{6}(\log\log x - 2.63) \sim (10^{6} \log\log x)/13.82 \sim (10^{6} × 2.63)/13.82\) と見積れる。この値は \(200,000\) より小さい。この近似が非常に粗いのは事実だが、根の大きさのスケールを知るには十分である]

  40. 次の方程式の解について同様に議論せよ: \[ e^{x} = 1000000 x^{1000000},\quad e^{x^{2}} = x^{1000000000} \]


  1. 例えばクリスタル著 Algebra, vol. i, ch xxi. など。\(\log_{e} 10\) の値は \(2.302\ldots\) であり、これは \(.434\ldots\) の逆数である。[return]

  2. 訳注: 原文の誤りを修正。[return]

  3. \(\cosh\) はハイパボリックコサイン (hyperbolic cosine) を略している。この言い回しの意味についてはホブソン著 Trigonometry, ch. xvi. を参照。[return]

  4. 言うまでもないが、この "非常に大きい" は第四章で説明した特殊な意味では使われていない。ここでの意味は「初等数学で普通に目にする方程式の根よりずっと大きい」である。"少しだけ大きい" についても同様。[return]

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