§182 置換積分の注意点

置換を使った積分の変形で注意が必要な点がいくつかある。例を使ってこれを説明する。

\(J\) を \[ J = \int_{1}^{7} (x^{2} - 6x + 13)\, dx \] とすれば、\(J = 48\) は直接計算できる。置換 \[ y = x^{2} - 6x + 13 \] を考えると \(x = 3 ± \sqrt{y - 4}\) であり、\(x = 1\) で \(y = 8\) および \(x = 7\) で \(y = 20\) となる。ここから \[ J = \int_{8}^{20} y\frac{dx}{dy}\, dy = ±\dfrac{1}{2}\int_{8}^{20} \frac{y\, dy}{\sqrt{y - 4}} \] が得られるように思える。すると不定積分 \[ \dfrac{1}{3}(y - 4)^{3/2} + 4(y - 4)^{1/2} \] から積分が \(±\dfrac{80}{3}\) と計算されるが、どちらの符号を選ぼうとこれは間違っている。

この原因は \(x\) と \(y\) の関係を詳しく見ると明らかになる。関数 \(x^{2} - 6x + 13\) は \(x = 3\) で最小値 \(y = 4\) を持つ。\(x\) が \(1\) から \(3\) に増加するとき \(y\) は \(8\) から \(4\) に減少する。そのため \(dx/dy\) は負で \[ \frac{dx}{dy} = -\frac{1}{2\sqrt{y - 4}} \] が成り立つ。\(x\) が \(3\) から \(7\) に増加するとき \(y\) は \(4\) から \(20\) に増加するので、もう一方の符号を選ぶ必要がある。よって \[ J = \int_{1}^{7} y\, dx = \int_{8}^{4} \left\{-\frac{y}{2\sqrt{y - 4}}\right\} dy + \int_{4}^{20} \frac{y}{2\sqrt{y - 4}}\, dy \] が得られ、この等式を使えば正しい結果が計算できる。

同様に積分 \(\displaystyle\int_{0}^{\pi} dx = \pi\) を置換 \(x = \arcsin y\) で変形するときには、\(0 \leq x \lt \frac{1}{2}\pi\) と \(\frac{1}{2}\pi \lt x \leq \pi\) で \(dx/dy = 1/\sqrt{1 - y^{2}}\) と \(dx/dy = -1/\sqrt{1 - y^{2}}\) が切り替わる点に注意が必要となる。

置換 \(4x^{2} - x + \frac{1}{16} = y\) および \(x = \arcsin y\) を使って、積分 \[ \int_{0}^{1} (4x^{2} - x + \dfrac{1}{16})\, dx,\quad \int_{0}^{\pi} \cos^{2}x\, dx \] を変形せよ。