§202 無限大の大きさの尺度としての対数

関数の列 \[ x,\quad \sqrt{x},\quad \sqrt[3]{x},\ \ldots,\quad \sqrt[n]{x},\ \ldots \] をもう一度考える。この列に含まれる二つの関数を \(f(x)\) と \(\phi(x)\) とすれば、\(x \to \infty\) のとき \(f(x)\) と \(\phi(x)\) は両方とも \(\infty\) に向かい、\(f(x)/\phi(x)\) は \(f(x)\) が \(\phi(x)\) の右にあるなら \(0\) に、\(\phi(x)\) の左にあるなら \(\infty\) に向かう。ここまでの結果を使えば、 上に書かれた列の左に新しい項を追加できると分かる。最初に追加されるのは \(\log x\) であり、この関数は最初からある項のどれよりも遅く無限大に向かう。次が \(\log x\) よりも遅く \(\infty\) に向かう \(\sqrt{\log x}\) であり、さらにその次に \(\sqrt{\log x}\) よりも遅い \(\sqrt[3]{\log x}\) と続く。こうして次の列が得られる: \[ x,\quad \sqrt{x},\quad \sqrt[3]{x},\quad \ldots, \quad \sqrt[n]{x},\quad \ldots, \quad \log x,\quad \sqrt{\log x},\quad \sqrt[3]{\log x},\quad \ldots, \quad \sqrt[n]{\log x},\quad \ldots \] この列は無限の列が二つ並んでいるだけだが、これで終わりではない。\(\log x\) の対数を取った関数 \(\log\log x\) を考える。任意の正の \(\alpha\) で \((\log x)/x^{\alpha} \to 0\) だから、\(x = \log y\) とすると \[ \frac{\log\log y}{(\log y)^{\alpha}} = \frac{\log x}{x^{\alpha}} \to 0 \] を得る。つまり \(\log\log y\) は \(y\) と共に無限大に向かうが、その速度は \(\log y\) の任意のべきより遅い。よってこの列を \[ \begin{gathered} x,\quad \sqrt{x},\quad \sqrt[3]{x},\quad \ldots,\qquad \log x,\quad \sqrt{\log x},\quad \sqrt[3]{\log x},\quad \ldots,\\ \log\log x,\quad \sqrt{\log\log x},\quad \ldots,\quad \sqrt[n]{\log\log x},\quad \ldots \end{gathered} \] とさらに延長できる。\(\log\log\log x,\ \log\log\log\log x,\ \ldots\) を使えばこの列をさらに好きなだけ伸ばせるのも明らかだろう。また \(x = 1/y\) とすれば、\(y\) が正の値を取りながら \(0\) に向かうときに \(\infty\) に向かう関数で異なる無限大の尺度を持つものが得られる1

例 84
  1. 上に示した列の任意の二つの項 \(f(x),\ F(x)\) の間には新しい項 \(\phi(x)\) を追加できる。つまり無限に向かう速度が \(f(x)\) よりも遅いが \(F(x)\) よりも遅い関数 \(\phi(x)\) が存在する。 [例えば \(\sqrt{x}\) と \(\sqrt[3]{x}\) の間には \(x^{5/12}\) を追加でき、\(\sqrt{\log x}\) と \(\sqrt[3]{\log x}\) の間には \((\log x)^{5/12}\) を追加できる。一般には \(\phi(x) = \sqrt{f(x) F(x)}\) とすれば条件が満たされる]

  2. 無限大に向かう速度が \(\sqrt{x}\) より遅いが \(x^{\alpha}\) より速い関数を求めよ。\(\alpha\) は \(1/2\) より小さい任意の有理数とする。 [\(\sqrt{x}/(\log x)\) がこの条件を満たす。あるいは \(\beta\) を正の有理数とした \(\sqrt{x}/(\log x)^{\beta}\) も条件を満たす]

  3. 無限大に向かう速度が \(\sqrt{x}\) より遅いが \(\sqrt{x}/(\log x)^{\alpha}\) より速い関数を求めよ。\(\alpha\) は任意の有理数とする。 [\(\sqrt{x}/(\log\log x)\) がこの条件を満たす。こういった例から分かるように、対数を使った無限大の尺度には不完全性がある]

  4. \(x\) が \(\infty\) に向かうとき関数 \[ f(x) = \frac{x^{\alpha} (\log x)^{\alpha'} (\log\log x)^{\alpha''}} {x^{\beta} (\log x)^{\beta'} (\log\log x)^{\beta''}} \] はどう振る舞うか? [\(\alpha \neq \beta\) なら \[ f(x) = x^{\alpha-\beta} (\log x)^{\alpha'-\beta'} (\log\log x)^{\alpha''-\beta''} \] の振る舞いは \(x^{\alpha-\beta}\) に支配される。\(\alpha = \beta\) なら \(x\) の指数が消えるので、\(f(x)\) の振る舞いは \((\log x)^{\alpha'-\beta'}\) に支配される。ただし \(\alpha' = \beta'\) の場合にはこの指数も消えるので \((\log\log x)^{\alpha''-\beta''}\) によって支配される。よって \(\alpha \gt \beta\) または \(\alpha = \beta,\ \alpha' \gt \beta'\) または \(\alpha = \beta,\ \alpha' = \beta',\ \alpha'' \gt \beta''\) なら \(f(x) \to \infty\) であり、\(\alpha \lt \beta\) または \(\alpha = \beta,\ \alpha' \lt \beta'\) または \(\alpha = \beta,\ \alpha' = \beta',\ \alpha'' \lt \beta''\) なら \(f(x) \to 0\) となる]

  5. 関数 \[ \dfrac{x}{\sqrt{\log x}},\quad \dfrac{x\sqrt{\log x}}{\log\log x},\quad \dfrac{x\log\log x}{\sqrt{\log x}},\quad \dfrac{x\log\log\log x}{\sqrt{\log\log x}} \] を \(x \to \infty\) のときに無限大に向かう速度の順に並べよ。

  6. 関数 \[ \frac{\log\log x}{x\log x},\quad \frac{\log x}{x},\quad \frac{x\log\log x}{\sqrt{x^{2} + 1}},\quad \frac{\sqrt{x + 1}}{x(\log x)^{2}} \] を \(x \to \infty\) のときに \(0\) に向かう速度の順に並べよ。

  7. 関数 \[ x\log\log(1/x),\quad \frac{\sqrt{x}}{\log(1/x)},\quad \sqrt{x\sin x\log(1/x)},\quad (1 - \cos x)\log(1/x) \] を \(x \to +0\) のときに \(0\) に向かう速度の順に並べよ。

  8. 等式 \[ D_{x}\log\log x = \frac{1}{x\log x},\quad D_{x}\log\log\log x = \frac{1}{x\log x\log\log x},\quad \ldots \] を示せ。

  9. 等式 \[ D_{x}(\log x)^{\alpha} = \frac{\alpha}{x(\log x)^{1-\alpha}},\quad D_{x}(\log\log x)^{\alpha} = \frac{\alpha}{x\log x(\log\log x)^{1-\alpha}} ,\quad \ldots \] を示せ。


  1. “無限大の尺度” に関するさらなる情報は拙著 “Orders of Infinity”, Camb. Math. Tracts, No. 12 を参照。[return]



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