§208 極限を使った指数関数の表現

第四章の §73 では \(\{1 + (1/n)\}^{n}\) が \(n \to \infty\) のとき極限に向かうと示し、この極限を仮に \(e\) と表記した。ここまでの議論で定義した \(e\) がこの極限と等しいことを示そう。さらに、次の等式が表すより一般的な結果も得られる: \[ \lim_{n\to\infty} \left(1 + \frac{x}{n}\right)^{n} = \lim_{n\to\infty} \left(1 - \frac{x}{n}\right)^{-n} = e^{x} \qquad \text{(1)} \] この結果は非常に重要なので、二つの証明を示す。

  1. 等式 \[ \frac{d}{dt} \log(1 + xt) = \frac{x}{1 + xt} \] から \[ \lim_{h\to 0} \frac{\log(1 + xh)}{h} = x \] が分かる。\(h = 1/\xi\) とすれば、\(h \to \infty\) および \(h \to -\infty\) のとき \[ \lim \xi \log\left(1 + \frac{x}{\xi}\right) = x \] が分かる。指数関数の連続性より \[ \left(1 + \frac{x}{\xi}\right)^{\xi} = e^{\xi\log\{1+(x/\xi)\}} \to e^{x} \] が \(h \to \infty\) および \(h \to -\infty\) で成り立つ。つまり \[ \lim_{\xi\to\infty} \left(1 + \frac{x}{\xi}\right)^{\xi} = \lim_{\xi\to -\infty} \left(1 + \frac{x}{\xi}\right)^{\xi} = e^{x} \qquad \text{(2)} \] である。

    \(\xi \to \infty\) および \(\xi \to -\infty\) で整数の値だけを考えれば、等式 \(\text{(1)}\) が表す結果が得られる。

  2. \(n\) を任意の正の整数とする。どれだけ大きくても構わない。\(x \gt 1\) に対して \[ \int_{1}^{x} \frac{dt}{t^{1+(1/n)}} \lt \int_{1}^{x} \frac{dt}{t} \lt \int_{1}^{x} \frac{dt}{t^{1-(1/n)}} \] だから、 \[ n(1 - x^{-1/n}) \lt \log x \lt n(x^{1/n} - 1) \qquad \text{(3)} \] が成り立つ。

    \(y = \log x\) とすれば \(y\) は正で \(x = e^{y}\) であり、簡単な変形から \[ \left(1 + \frac{y}{n}\right)^{n} \lt x \lt \left(1 - \frac{y}{n}\right)^{-n} \qquad \text{(4)} \] が得られる。さらに \[ 1 + \frac{y}{n} = \eta_{1},\quad 1 - \frac{y}{n} = \frac{1}{\eta_{2}} \] とすれば十分大きい \(n\) で \(0 \lt \eta_{1} \lt \eta_{2}\) だから、§74 の \(\text{(9)}\) から \[ \eta_{2}^{n} - \eta_{1}^{n} \lt n\eta_{2}^{n-1} (\eta_{2} - \eta_{1}) = \frac{y^{2}\eta_{2}^{n}}{n} \] が分かり、これは \(n \to \infty\) で \(0\) に向かう。よって \(\text{(4)}\) から示すべき結果が得られる。\(1/n\) を連続変数 \(h\) に置き換えればより一般的な \(\text{(2)}\) も同様に示せる。

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