§228 \(\sin\) と \(\cos\) の定義

前節では実数 \(\zeta\) に対して \[ \begin{alignedat}{5} \cos\zeta & = & & \dfrac{1}{2} & & \{\exp (i\zeta) + \exp (-i\zeta)\}, & &\\ \sin\zeta & = -& & \dfrac{1}{2}i& & \{\exp (i\zeta) - \exp (-i\zeta)\} & & \end{alignedat} \] が成り立つことを見た。

二つの等式の左辺は初等三角法で採用される通常の幾何学的な定義で定義されており、実数の \(\zeta\) に対してのみ定義される。一方で左辺は実数および複素数の全ての \(\zeta\) に対して定義される。よって \(\text{(1)}\) を全ての \(\zeta\) に対する \(\cos \zeta\) と \(\sin \zeta\) の定義として自然に採用できる。§227 よりこの定義は実数に対する初等的な定義と一致する。

\(\cos \zeta\) と \(\sin \zeta\) が定義できれば、他の三角比は次の等式で定義できる: \[ \tan \zeta = \frac{\sin \zeta}{\cos \zeta},\quad \cot \zeta = \frac{\cos \zeta}{\sin \zeta},\quad \sec \zeta = \frac{1}{\cos \zeta},\quad \cosec \zeta = \frac{1}{\sin \zeta} \qquad \text{(2)} \] \(\cos \zeta,\ \sec \zeta\) が偶関数であり、\(\sin \zeta,\ \tan \zeta,\ \cot \zeta,\ \cosec \zeta\) が奇関数であることが定義から分かる。また \(\exp (i\zeta) = t\) とすれば \[ \begin{gathered} \cos \zeta = \dfrac{1}{2} \{t + (1/t)\},\quad \sin \zeta = -\dfrac{1}{2}i \{t - (1/t)\},\\ \cos^{2} \zeta + \sin^{2} \zeta = \dfrac{1}{4}[\{t + (1/t)\}^{2} - \{t - (1/t)\}^{2}] = 1 \end{gathered} \qquad \text{(3)} \] が成り立つと分かる。

さらに \(\zeta + \zeta'\) の三角関数を \(\zeta\) と \(\zeta'\) の三角関数を使って表せば、初等三角法で成り立つのと同じ公式が得られる。\(\exp (i\zeta) = t\) および \(\exp (i\zeta') = t'\) とすれば \[ \begin{aligned} \cos (\zeta + \zeta') & = \dfrac{1}{2} \left(tt' + \frac{1}{tt'}\right) \\ & = \dfrac{1}{4} \left\{ \left(t + \frac{1}{t}\right) \left(t' + \frac{1}{t'}\right) + \left(t - \frac{1}{t}\right) \left(t' - \frac{1}{t'}\right)\right\}\\ & = \cos\zeta \cos\zeta' - \sin\zeta \sin\zeta' \end{aligned} \qquad \text{(4)} \] となり、同様に \[ \sin (\zeta + \zeta') = \sin\zeta \cos\zeta' + \cos\zeta \sin\zeta' \qquad \text{(5)} \] も示せる。特に \[ \cos(\zeta + \dfrac{1}{2}\pi) = -\sin\zeta,\quad \sin(\zeta + \dfrac{1}{2}\pi) = \cos\zeta \qquad \text{(6)} \] が成り立つ。

初等三角法でよく見る公式はどれも \(\text{(2)}\)–\(\text{(6)}\) の代数的な系となる。そういった関係は全て、この節で一般化した三角関数の定義においても成り立つ。