§236 対数級数の指数極限への応用

\(z\) を任意の複素数、\(h\) を十分小さな実数として、\(|hz| \lt 1\) が成り立つとする。このとき \[ \log(1 + hz) = hz - \dfrac{1}{2}(hz)^{2} + \dfrac{1}{3}(hz)^{3} - \cdots \] であり、 \[ \frac{\log(1 + hz)}{h} = z + \phi(h, z) \] とすれば \[ \begin{gathered} \phi(h, z) = -\dfrac{1}{2}hz^{2} + \dfrac{1}{3}h^{2}z^{3} - \dfrac{1}{4}h^{3}z^{4} + \cdots,\\ |\phi(h, z)| \lt |hz^{2}| (1 + |hz| + |h^{2}z^{2}| + \cdots) = \frac{|hz^{2}|}{1 - |hz|} \end{gathered} \] が分かる。\(h \to 0\) で \(\phi(h, z) \to 0\) だから、次が成り立つ: \[ \lim_{h\to 0} \frac{\log(1 + hz)}{h} = z \qquad \text{(1)} \]

特に正の整数 \(n\) を使って \(h = 1/n\) と書けば \[ \lim_{n\to \infty} n\log \left(1 + \frac{z}{n}\right) = z \] を得る。よって \[ \lim_{n\to \infty} \left(1 + \frac{z}{n}\right)^{n} = \lim_{n\to \infty} \exp\left\{n\log\left(1 + \frac{z}{n}\right)\right\} = \exp z \qquad \text{(2)} \] が成り立つ。これは §208 で実数 \(z\) に対して示した命題の一般化である。

\(\text{(1)}\) からは次節で必要になる他の結果も導ける。\(t\) と \(h\) を実数とすると、\(h\) が十分小さければ \[ \frac{\log(1 + tz + hz) - \log(1 + tz)}{h} = \frac{1}{h}\log\left(1 + \frac{hz}{1 + tz}\right) \] が成り立つ。これは \(h \to 0\) で極限 \(z/(1 + tz)\) に向かうので \[ \frac{d}{dt} \{\log(1 + tz)\} = \frac{z}{1 + tz} \qquad \text{(3)} \] を得る。

実数および複素数の任意の \(m\) に対する \((1 + tz)^{m}\) の \(t\) に関する微分の公式も必要になる。まず最初に、実部が \(\phi(t)\) で虚部が \(\chi(t)\) の複素関数 \(\phi(t) = \psi(t) + i\chi(t)\) が導関数を持つなら \[ \begin{aligned} \frac{d}{dt}(\exp\phi) & = \frac{d}{dt}\{(\cos\chi + i\sin\chi) \exp\psi\}\\ & = \{(\cos\chi + i\sin\chi) \psi' + (-\sin\chi + i\cos\chi)\chi'\} \exp\psi\\ & = (\psi' + i\chi')(\cos\chi + i\sin\chi) \exp\psi\\ & = (\psi' + i\chi') \exp(\psi + i\chi) = \phi' \exp\phi \end{aligned} \] が成り立つ。つまり \(\exp \phi\) の微分規則は \(\phi\) が実関数の場合と変わらない。ここから \[ \begin{aligned} \frac{d}{dt}(1 + tz)^{m} & = \frac{d}{dt} \exp\{m\log(1 + tz)\}\\ & = \frac{mz}{1 + tz} \exp\{m\log(1 + tz)\}\\ & = mz(1 + tz)^{m-1} \end{aligned} \qquad \text{(4)} \] を得る。ここで \((1 + tz)^{m}\) と \((1 + tz)^{m-1}\) は主値とする。



Amazon.co.jp アソシエイト (広告)
Audible の無料体験を始めよう
amazon music unlimited で音楽聞き放題
解析入門 I
軽装版 解析入門 I
定本 解析概論
ある数学者の生涯と弁明