§163 コーシーの剰余項の二項係数への応用

\(m\) が正の整数でないとする。このとき \(f(x) = (1 + x)^{m}\) に対するコーシーの剰余項は次のようになる: \[ R_{n} = \frac{m(m - 1)\cdots (m - n + 1)}{1·2\cdots (n - 1)}\, \frac{(1 - \theta )^{n-1} x^{n}}{(1 + \theta x)^{n-m}} \]

ここで \(-1 \lt x \lt 1\) なら、\(x\) が正でも負でも \((1 - \theta)/(1 + \theta x)\) は \(1\) より小さい。さらに全ての \(n\) に対して \((1 + \theta x)^{m-1}\) は定数 \(K\) より小さくなる。具体的には \(m \gt 1\) なら \((1 + |x|)^{m-1}\) より小さく、\(m \lt 1\) なら \((1 - |x|)^{m-1}\) より小さい。したがって \[ |R_{n}| \lt K |m| \left|\binom{m - 1}{n - 1}\right| |x^{n}| = \rho_{n} \] とすれば、例 27.13 より \(n \to \infty\) で \(\rho_{n} \to 0\) となる。よって \(R_{n} \to 0\) が分かる。以上で全ての有理数 \(m\) と \(-1\) から \(1\) の間の \(x\) に対する二項定理が証明された。ラグランジュの剰余項を使った 例 56.2 では負の \(x\) の扱いが困難だったことを思い出してほしい。

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