§76 無限級数

\(u(n)\) が \(n\) の関数で、全ての \(n\) に対して定義されているとする。\(\nu = 1,\ 2,\ \ldots,\ n\) に対応する \(u(\nu)\) の値を全て足せば、\(u(\nu)\) とは異なる \(n\) の関数が得られる。具体的には \[ s(n) = u(1) + u(2) + \cdots + u(n) \] であり、この関数も全ての \(n\) に対して定義される。簡便のために、記法を少し変えて \[ s_{n} = u_{1} + u_{2} + \cdots + u_{n} \] あるいは \[ s_{n} = \sum_{\nu=1}^{n} u_{\nu} \] と書くことが多い。

\(n\) が \(\infty\) に向かうときに \(s_{n}\) が極限 \(s\) に向かうなら \[ \lim_{n\to\infty} \sum_{\nu=1}^{n} u_{\nu} = s \] となる。この等式を通常 \[ \sum_{\nu=1}^{\infty} u_{\nu} = s, \quad u_{1} + u_{2} + u_{3} + \cdots = s \] と書く。点々 \(\cdots\) は \(u\) の級数が無限に続くことを表す。

この等式は、\(u\) を最初からたくさん足していくと足すたびに和が極限 \(s\) に近づくことを意味する。より正確に言えば、任意に小さい正の数 \(\varepsilon\) について、最初の \(n_{0}(\varepsilon)\) 項 (および \(n_{0}(\varepsilon)\) より多い項) の和が \(s - \varepsilon\) と \(s + \varepsilon\) の間にあるように \(n_{0}(\varepsilon)\) を選べることを意味する。前に定義した記号を使えば、\(n \geq n_{0}(\varepsilon)\) のとき \[ s - \varepsilon \lt s_{n} \lt s + \varepsilon \] である。こういった状況において、級数 \[ u_{1} + u_{2} + \cdots \] を収束する無限級数 (convergent infinite series) と呼び、\(s\) を級数の (sum) あるいは級数の全項の和 (sum of all the terms) と呼ぶ。

つまり級数 \(u_{1} + u_{2} + \cdots\) が「収束して和が \(s\)となる」「和 \(s\) に収束する」「\(s\) に収束する」と言ったとしても、それは最初の \(n\) 項の和 \(s_{n} = u_{1} + u_{2} + \cdots + u_{n}\) が \(n \to \infty\) のとき極限 \(s\) に向かうことを別の表現で表しているに過ぎない。無限級数を考えたとしてもこれまでに扱っていない概念は必要とならないので、読者はすぐに理解できるはずである。実際、和 \(s_{n}\) は今まで考えてきた関数 \(\phi(n)\) の表記を変えただけであり、任意の関数 \(\phi(n)\) は次のようにして級数の形に表せる: \[ \phi(n) = \phi(1) + \{\phi(2) - \phi(1)\} + \cdots + \{\phi(n) - \phi(n - 1)\} \] \(\phi(n)\) は \(n \to \infty\) のとき \(l\) に「収束する」と言った方が (「向かう」と言うよりも) 分かりやすい場合もある。

\(s_{n} \to +\infty\) または \(s_{n} \to -\infty\) のとき、級数 \(u_{1} + u_{2} + \cdots\) は発散する (divergent) あるいは \(\bm{ +\infty}\) に発散する (diverges to \( +\infty\)) および \(\bm{ -\infty}\) に発散する (diverges to \( -\infty\)) と言う。例えば「\(\phi(n)\) は \( +\infty\) に発散する」は \(\phi(n) \to +\infty\) を意味する。\(s_{n}\) が極限にも \( +\infty\) にも \(-\infty\) にも向かわないなら、\(s_{n}\) は有限または無限に振動する。このとき級数 \(u_{1} + u_{2} + \cdots\) は有限または無限に振動すると言う1


  1. 「発散する」と「振動する」という表現は著者によって異なる使われ方をするので、注意する必要がある。ここではブロムウィッチ著 Infinite Series と同じ定義を使った。ホブソン著 Theory of Functions of a Real Variable では級数が有限に振動するときに限って「振動する」という表現が使われ、無限に振動する級数は「発散する」とされる。多くの外国の著者は「発散する」を「収束しない」の意味で使う。[return]

広告