§84 非有界関数

ここまでは有界関数だけを考えてきた。しかし次に示すように「収束の基本原則」は関数の有界性を仮定しなくても成り立つので、前節で示した定理からは「有界関数」という言葉を取り除ける。

まず \(\phi(n)\) が極限 \(l\) に向かうなら、有限個の値を除いた全ての値が \(l + \varepsilon\) と \(l - \varepsilon\) と \(\phi(n)\) の間にあるので、\(\phi(n)\) が有界だと分かる。

次に前節の定理の条件が満たされるなら、 \[ |\phi(n_{2}) - \phi(n_{1})| \lt \varepsilon \] が全ての \(n_{1} \geq n_{0}\) と全ての \(n_{2} \geq n_{0}\) で成り立つ。\(n_{0}\) より大きい \(n_{1}\) を固定すれば \[ \phi(n_{1}) - \varepsilon \lt \phi(n_{2}) \lt \phi(n_{1}) + \varepsilon \] が \(n_{2} \geq n_{0}\) のとき成り立つ。ここから \(\phi(n)\) は有界と分かり、前節で示した証明の後半部分が適用できる。

この「収束の基本原則」の理論的重要性はどれだけ強調しても強調しすぎることはない。§69 の定理と同じように、この条件を使うと \(\phi(n)\) が極限を持つかどうかを極限の値を求めずに判定できる。さらに §69 の定理が持っていた単調増加という特殊な仮定をこの条件は持っていない。ただ簡単な問題ではこの条件が必要とならず、単調増加の仮定が付いた定理を使えば示したいことを示せる場合が多い。この条件は非常に重要であるものの、以降の章でこの条件が使われることは実質一度もない1。ここでは次の点を指摘するに留める: \[ \phi(n) = s_{n} = u_{1} + u_{2} + \cdots + u_{n} \] とすれば、無限級数の収束性に関する必要十分条件が直ちに得られる:

級数 \(u_{1} + u_{2} + \cdots\) が収束するための必要十分条件は、任意の正の実数 \(\varepsilon\) に対して \[ |u_{n_{1}+1} + u_{n_{1}+2} + \cdots + u_{n_{2}}| \lt \varepsilon \] が \(n_{2} \gt n_{1} \geq n_{0}\) を満たす全ての \(n_{1}\) と \(n_{2}\) で成り立つように \(n_{0}\) を取れることである。


  1. 第八章で示す証明の中にはこの条件を使うと単純化できるものがいくつかある。[return]