§64 極限に関する諸定理
次の結果は簡単に確認できるだろう:
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\(\phi(n)\) が極限に向かって \(\psi(n)\) が \(+\infty\) または \(-\infty\) に向かうか無限または有限に振動するなら、\(\phi(n) + \psi(n)\) は \(\psi(n)\) と同じように振る舞う。
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\(\phi(n) \to +\infty\) で \(\psi(n)\) が \( +\infty\) に向かうか有限に振動するなら、\(\phi(n) + \psi(n) \to +\infty\) が成り立つ。
もちろん二つ目の命題は \(+\infty\) を \(-\infty\) に変えても成り立つ。
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\(\phi(n) \to + \infty\) かつ \(\psi(n) \to -\infty\) なら、\(\phi(n) + \psi(n)\) は極限に向かう場合もあれば \(+\infty\) または \(-\infty\) に向かう場合もある。あるいは有限または無限に振動する場合もある。
(i) \(\phi(n) = n,\ \psi(n) = -n,\ \) (ii) \(\phi(n) = n^{2},\ \psi(n) = -n,\ \) (iii) \(\phi(n) = n,\ \psi(n) = -n^{2},\ \) (iv) \(\phi(n) = n + (-1)^{n},\ \psi(n) = -n\) (v) \(\phi(n) = n^{2} + (-1)^{n}n,\ \psi(n) = -n^{2}\) がこの五つの可能性を満たす例となる。これ以外の例も作ってみるとよい。
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\(\phi(n) \to +\infty\) で \(\psi(n)\) が無限に振動するなら、\(\phi(n) + \psi(n)\) は \( +\infty\) に向かう場合もあれば無限に振動する場合もある。ただし極限に向かう、\(-\infty\) に向かう、有限に振動することはない。
\(\psi(n) = \{\phi(n) + \psi(n)\} - \phi(n)\) なので、仮に \(\phi(n) + \psi(n)\) に対して最後の三つのうちどれかが成り立つとすると、これまでの結果から \(\psi(n) \to -\infty\) となって不合理となる。あり得る二つの場合の例としては (i) \(\phi(n) = n^{2},\ \psi(n) = (-1)^{n}n\) と (ii) \(\phi(n) = n,\ \psi(n) = (-1)^{n}n^{2}\) がある。ここでも \(+ \infty\) と \(-\infty\) は交換できる。
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\(\phi(n)\) と \(\psi(n)\) がどちらも有限に振動するなら、\(\phi(n) + \psi(n)\) は極限に向かうか、有限に振動する。
例えば (i) \(\phi(n) = (-1)^{n},\ \psi(n) = (-1)^{n+1},\ \) (ii) \(\phi(n) = \psi(n) = (-1)^{n}\) とすれば二つの可能性が得られる。
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\(\phi(n)\) が有限に振動し \(\psi(n)\) が無限に振動するなら、\(\phi(n) + \psi(n)\) は無限に振動する。
仮定から \(\phi(n)\) の絶対値がある値 \(K\) より常に小さいと分かる。\(\psi(n)\) は無限に振動するので、その絶対値は任意の実数 (\(10K,\ 100K,\ \ldots\)) よりも大きくなる。よって \(\phi(n) + \psi(n)\) の絶対値は任意の実数 (\(9K,\ 99K,\ \ldots\)) より大きくなる。よって \(\phi(n) + \psi(n)\) は \(+\infty\) または \(-\infty\) に向かうか、無限に振動する。しかしもし \( +\infty\) に向かうなら \[ \psi(n) = \{\phi(n) + \psi(n)\} - \phi(n) \] も同じく \(+\infty\) に向かうことがこれまでの結果から分かるので、\(\phi(n) + \psi(n)\) は \( +\infty\) に向かわない。同様に \(- \infty\) に向かうこともなく、無限に振動すると分かる。
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\(\phi(n)\) と \(\psi(n)\) が両方とも無限に振動するなら、\(\phi(n) + \psi(n)\) は極限に向かうか、\(+ \infty\) または \(- \infty\) に向かうか、有限または無限に振動する。
\(\phi(n) = (-1)^{n}n\) で \(\psi(n)\) を \((-1)^{n+1}n,\ \{1 + (-1)^{n+1}\}n,\ -\{1 + (-1)^{n}\}n,\ (-1)^{n+1}(n + 1),\ (-1)^{n}n\) とすれば、五つの可能なケースが全て得られる。
以上の七つの結果は互いに異なる命題を表す。二つの関数の積を考える前に、§63 の定理は \(n \to \infty\) のときの三つ以上の関数の和についても拡張できることを指摘しておく。