§87 複素数 \(z\) に対する \(z^{n}\) の極限

\(\phi(n) = z^{n}\) という重要なケースを考える。\(z\) が実数の場合のこの問題は前に §72 で考えた。

§86 の (1) より \(z^{n} \to l\) なら \(z^{n+1} \to l\) となる。一方 §86 の (4) からは \[ z^{n+1} = zz^{n} \to zl \] が分かるので、\(l = zl\) が成り立つ。これは (a) \(l = 0\) または (b) \(z = 1\) のときに限って成り立つ。\(z = 1\) なら \(\lim z^{n} = 1\) である。この特殊ケースを除けば、極限が存在するならそれは \(0\) となる。

正の \(r\) を使って \(z = r(\cos\theta + i\sin\theta)\) とする。このとき \[ z^{n} = r^{n} (\cos n\theta + i\sin n\theta) \] だから、\(|z^{n}| = r^{n}\) が成り立つ。よって \(|z^{n}|\) は \(r \lt 1\) のときに限って \(0\) に向かう。よって §86 の (10) から \[ \lim z^{n} = 0 \] が \(r \lt 1\) のときに限って成り立つと分かる。これ以外のとき \(z^{n}\) は収束しない。唯一の例外は \(z = 1\) で、このときは \(z^{n} \to 1\) となる。