§195 級数の積

§170 では、二つの正項級数 \(\sum u_{n}\) と \(\sum v_{n}\) が収束するなら次の \(w_{n}\) に対して \(\sum u_{n} × \sum v_{n} = \sum w_{n}\) だと示した: \[ w_{n} = u_{0}v_{n} + u_{1}v_{n-1} + \cdots + u_{n}v_{0} \] この結果は \(\sum u_{n}\) と \(\sum v_{n}\) が絶対収束である場合に拡張できる: 正項級数に対するこの結果の証明はディリクレの定理の簡単な応用であり、絶対収束に対するディリクレの定理は既に証明している。

例 81
  1. \(|z|\) が級数 \(\sum a_{n}z^{n}\) の収束半径と \(\sum b_{n}z^{n}\) の収束半径の両方より小さいなら、二つの級数の積は \(\sum c_{n}z^{n}\) であり、\(c_{n} = a_{0}b_{n} + a_{1}b_{n-1} + \cdots + a_{n}b_{0}\) となる。

  2. \(\sum a_{n}z^{n}\) の収束半径が \(R\) で、\(|z| \lt R\) のときの級数の和が \(f(z)\) で、\(|z|\) が \(R\) と \(1\) の両方より小さいなら、\(f(z)/(1 - z) = \sum s_{n}z^{n}\) が成り立つ。ここで \(s_{n} = a_{0} + a_{1} + \cdots + a_{n}\) とする。

  3. \(1/(1 - z)\) の級数を二乗し、\(|z| \lt 1\) なら \(1/(1 - z)^{2} = 1 + 2z + 3z^{2} + \cdots\) だと示せ。

  4. 同様に \(1/(1 - z)^{3} = 1 + 3z + 6z^{2} + \cdots\) を示せ。一般項は \(\frac{1}{2}(n + 1)(n + 2)z^{n}\) となる。

  5. 指数が負の整数のときの二項定理: \(|z| \lt 1\) で \(m\) が正の整数なら \[ \frac{1}{(1 - z)^{m}} = 1 + mz + \frac{m(m + 1)}{1·2} z^{2} + \cdots + \frac{m(m + 1) \cdots (m + n - 1)}{1·2 \cdots n} z^{n} + \cdots \] が成り立つ。

    [\(m\) より小さい全ての \(m\) でこの定理が成り立つと仮定する。このとき問題 2 から次に示す \(s_{n}\) に対して \(1/(1 - z)^{m+1} = \sum s_{n}z^{n}\) が分かる: \[ \begin{aligned} s_{n} & = 1 + m + \frac{m(m + 1)}{1·2} + \cdots + \frac{m(m + 1) \cdots (m + n - 1)}{1·2 \cdots n} \\ & = \frac{(m + 1)(m + 2) \cdots (m + n)}{1·2 \cdots n} \end{aligned} \] この変形は帰納法の仮定から簡単に示せる]

  6. 級数の積の計算を使って、 \[ f(m, z) = 1 + \binom{m}{1} z + \binom{m}{2} z^{2} + \cdots \] に対して \(|z| \lt 1\) なら \(f(m, z)f(m', z) = f(m + m', z)\) が成り立つと示せ。 [この等式はオイラーによる二項定理の証明の根幹をなす。右辺の積における \(z^{n}\) の係数は \[ \binom{m'}{n} + \binom{m}{1} \binom{m'}{n - 1} + \binom{m}{2} \binom{m'}{n - 2} + \cdots + \binom{m}{n - 1} \binom{m'}{1} + \binom{m}{n} \] となる。

    これは \(m\) と \(m'\) に関する多項式であり、\(m\) と \(m'\) が正の整数なら \(\dbinom{m + m'}{k}\) に等しいことが指数が正の整数の場合の二項定理から分かる。そして \(m\) と \(m'\) に関する二つの多項式が全ての正整数 \(m\) と \(m'\) に対して等しいなら、それらは恒等的に等しい]

  7. \(f(z) = 1 + z + \dfrac{z^{2}}{2!} + \cdots\) なら \(f(z)f(z') = f(z + z')\) が成り立つ。 [\(f(z)\) の級数は全ての \(z\) で絶対収束する。\(u_{n} = \dfrac{z^{n}}{n!},\ v_{n} = \dfrac{{z'}^{n}}{n!}\) なら \(w_{n} = \dfrac{(z + z')^{n}}{n!}\) となることは容易に分かる]

  8. もし \[ C(z) = 1 - \frac{z^{2}}{2!} + \frac{z^{4}}{4!} - \cdots,\quad S(z) = z - \frac{z^{3}}{3!} + \frac{z^{5}}{5!} - \cdots \] なら \[ C(z + z') = C(z)C(z') - S(z)S(z'),\quad S(z + z') = S(z)C(z') + C(z)S(z') \] かつ \[ \{C(z)\}^{2} + \{S(z)\}^{2} = 1 \] が成り立つ。

  9. 級数の積が計算できない場合: \(\sum u_{n}\) と \(\sum v_{n}\) が絶対収束しない場合には級数の積の計算に関する結果が成り立たないことは、次の例を見ればわかる: \[ u_{n} = v_{n} = \frac{(-1)^{n}}{\sqrt{n + 1}} \] このとき \[ w_{n} = (-1)^{n} \sum_{r=0}^{n} \frac{1}{\sqrt{(r + 1)(n + 1 - r)}} \] だが、\(\sqrt{(r + 1)(n + 1 - r)} \leq \frac{1}{2}(n + 2)\) より \(|w_{n}| \gt (2n + 2)/(n + 2) \to 2\) となる。つまり \(\sum w_{n}\) は収束しない。