§231 対数関数と逆三角関数の関係

第六章で見たように、定数 \(\alpha,\ \beta,\ \ldots\) を使った有理関数あるいは代数関数 \(\phi(x, \alpha, \beta,\ \ldots)\) の積分は \(\alpha,\ \beta,\ \ldots\) の値によって異なる形になる場合がある: 積分が対数関数で表されることもあれば、逆三角関数で表されることもある。例えば \(a \gt 0\) なら \[ \int \frac{dx}{x^{2} + \alpha} = \frac{1}{\sqrt{\alpha}} \arctan \frac{x}{\sqrt{\alpha}} \qquad \text{(1)} \] だが、\(\alpha \lt 0\) なら \[ \int \frac{dx}{x^{2} + \alpha} = \frac{1}{2\sqrt{-\alpha}} \log \left|\frac{x - \sqrt{-\alpha}}{x + \sqrt{-\alpha}}\right| \qquad \text{(2)} \] となる。この事実は対数関数と逆三角関数の間に何らかの関数的な関係があることを示唆する。あるいは三角関数を \(\exp i\zeta\) を使って表現でき、対数関数が指数関数の逆関数である事実からもこの関係の存在が導けるだろう。

さらに具体的に \[ \int \frac{dx}{x^{2} - \alpha^{2}} = \frac{1}{2\alpha} \log \left(\frac{x - \alpha}{x + \alpha}\right) \] を考えよう。この等式は \(\alpha\) が実数で \((x - \alpha)/(x + \alpha)\) が正のとき成り立つ。この等式に含まれる \(\alpha\) に \(i\alpha\) を無理やり代入すると、定数 \(C\) が混じった等式 \[ \arctan \left(\frac{x}{\alpha}\right) = \frac{1}{2i} \log\left(\frac{x - i\alpha}{x + i\alpha}\right) + C \qquad \text{(3)} \] が得られる。この章で複素数に対する対数関数を定義したので、この等式が本当に正しいのかという問題を考えることができる。

§221 から \[ \operatorname{Log}(x ± i\alpha) = \dfrac{1}{2} \log(x^{2} + \alpha^{2}) ± i(\phi + 2k\pi) \] が分かる。ここで \(k\) は整数で、\(\phi\) は \(\cos\phi = x/\sqrt{x^{2} + \alpha^{2}}\) と \(\sin\phi = \alpha/\sqrt{x^{2} + \alpha^{2}}\) を満たす最小の角度である。ここから \[ \frac{1}{2i} \operatorname{Log}\left(\frac{x - i\alpha}{x + i\alpha}\right) = -\phi - l\pi \] が整数 \(l\) に対して成り立つと分かる。確かにこれは \(\arctan(x/\alpha)\) の任意の値から定数しか離れていない。

対数関数と逆三角関数を結ぶ標準的な等式を次に示す: \[ \arctan x = \frac{1}{2i} \operatorname{Log}\left(\frac{1 + ix}{1 - ix}\right) \qquad \text{(4)} \] ここで \(x\) は実数を表す。これを確認するには \(x = \tan y\) とするのが一番簡単であり、このとき右辺は \[ \frac{1}{2i} \operatorname{Log}\left(\frac{\cos y + i\sin y}{\cos y - i\sin y}\right) = \frac{1}{2i} \operatorname{Log}(\exp 2iy) = y + k\pi \] となる (\(k\) は任意の整数)。ここから等式 \(\text{(4)}\) は “完全に” 正しいと分かる (例 93.3)。また \(-1 \leq x \leq 1\) に対する \[ \begin{gathered} \arccos x = -i \operatorname{Log}\{x ± i\sqrt{1 - x^{2}}\},\\ \arcsin x = -i \operatorname{Log}\{ix ± \sqrt{1 - x^{2}}\} \end{gathered} \qquad \text{(5)} \] も確認できるはずである。これらの等式も “完全に” 正しい。

\(y = \exp(iu)\) に対する方程式 \[ \cos u = x = \dfrac{1}{2}\{y + (1/y)\} \] を \(y\) について解くと \(y = x ± i\sqrt{1 - x^{2}}\) を得る。よって \[ u = -i \operatorname{Log} y = -i \operatorname{Log}\{x ± i\sqrt{1 - x^{2}}\} \] が成り立つ。これは \(\text{(5)}\) の一つ目の等式に等しい。\(\text{(5)}\) の二つ目の等式と \(\text{(4)}\) を同様の議論によって導け。



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