§172 その他の収束判定法
正項級数の収束と発散の判定法をさらに二つ紹介する。それぞれマクローリンの (コーシーの) 積分判定法 (Maclaurin's (Cauchy's) Integral Test) およびコーシーの凝集判定法 (Cauchy's Condensation Test) と呼ばれる。どちらも完全に一般的とはとても言えないが、この章で必要となる程度には一般性を持つ。
二つの判定法を使うにあたって関数 \(u_{n}\) に仮定をもう一つ追加する。これまで \(u_{n}\) は正であること以外の仮定をしてこなかったが、これからは \(\bm{u_{n}}\) は \(\bm{n}\) に関して単調減少だとする。つまり \(u_{n+1} \leq u_{n}\) が全ての \(n\) あるいは十分大きな全ての \(n\) で成り立つとする。
この条件は最も重要なケースの全てで満たされる。というのも前述のディリクレの定理から収束と発散の振る舞いを変えることなく項を並び替えられるので、正項級数を扱う限りこの制限は実質ないようなものだと考えても構わない。級数の項を大きさの降順に並べ替えてしまえば、その降順の級数に判定法を適用できる。
この二つの判定法に進むのに先立って、アーベルの定理と呼ばれる単純で重要な定理1を示す。この定理は発散の判定ができるのに対して収束の判定ができず、この意味で一方向の定理となっている。しかし本質的には上述の二つの定理よりも基礎的な性質を持つ。
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この定理はアーベルによって発見されたがその後忘れられ、プリングスハイムによって再発見された。[return]