§78 無限幾何級数

続いて “幾何” 級数 (geometrical series) を考える。この級数の一般項は \(u_{n} = r^{n-1}\) で \[ s_{n} = 1 + r + r^{2} + \cdots + r^{n-1} = \frac{1 - r^{n}}{1 - r} \] が成り立つ。ただし \(r = 1\) のときは例外で \[ s_{n} = 1 + 1 + \cdots + 1 = n \] となる。\(r = 1\) なら \(s_{n} \to \infty\) だが、一般に \(s_{n}\) は \(r^{n}\) が極限に向かうときに限って収束する。§72 の結果を使えば次が分かる:

\(-1 \lt r \lt 1\) のときに限って級数 \(1 + r + r^{2} + \cdots\) は収束し、和は \(1/(1-r)\) となる。

もし \(r \geq 1\) なら \(s_{n} \geq n\) であり \(s_{n} \to +\infty\)、すなわち級数は \( +\infty\) に発散する。もし \(r = -1\) なら \(n\) が奇数のとき \(s_{n} = 1\) でそうでないとき \(s_{n} = 0\) となる、つまり \(s_{n}\) は有限に振動する。そして \(r \lt -1\) なら \(s_{n}\) は無限に振動する。以上の結果を次にまとめる:

級数 \(1 + r + r^{2} + \cdots\) は \(r \geq 1\) のとき \( +\infty\) に発散し、\(-1 \lt r \lt 1\) のとき \(1/(1-r)\) に収束し、\(r = -1\) のとき有限に振動し、\(r \lt -1\) のとき無限に振動する。

例 29
  1. 循環小数: 無限幾何級数の一番身近な例は循環小数1を考えるときに生じる。例えば通常の算術規則を使えば、小数 \(.217\overline{13}\) が \[ \begin{aligned} & \frac{2}{10} + \frac{1}{10^{2}} + \frac{7}{10^{3}} + \frac{1}{10^{4}} + \frac{3}{10^{5}} + \frac{1}{10^{6}} + \frac{3}{10^{7}} + \cdots \\ & \quad = \frac{217}{1000} + \frac{13}{10^{5}} \bigg/ \left(1 - \frac{1}{10^{2}}\right) \\ & \quad = \frac{2687}{12375} \end{aligned} \] を表すことが分かる。この導出に使われているのは §77 で示した一般的な定理のどれかを考えてみるとよい。

  2. 一般的に \[ .a_{1}a_{2}\ldots a_{m} \overline{\alpha_{1}\alpha_{2}\ldots \alpha_{n}} = \frac{a_{1}a_{2}\ldots a_{m}\alpha_{1}\ldots \alpha_{n} - a_{1}a_{2}\ldots a_{n}} {99\ldots 900\ldots 0} \] を示せ。右辺の分母には \(n\) 個の \(9\) と \(m\) 個の \(0\) が並ぶ。

  3. 任意の純粋な2循環小数は \(2\) と \(5\) を分母の因数に含まない有理数に等しいと示せ。

  4. 最初の \(m\) 桁が循環せず後ろの \(n\) 桁が循環する小数を表す既約分数の分母は \(2^{m}\) と \(5^{m}\) で割り切れるが \(2^{m+1}\) と \(5^{m+1}\) では割り切れないことを示せ。

  5. 問題 3, 4 の逆も成り立つ。\(r = p/q\) として、\(q\) は \(10\) と互いに素だとする。\(10\) のべきを \(q\) で割ると最大で \(q\) 個の異なる余りが得られる。よって \(10^{n_{1}}\) と \(10^{n_{2}}\) が同じ余りを持つ \(n_{1},\ n_{2}\ (n _{1} \gt n_{2})\) を選べる。このとき \(10^{n_{1}} - 10^{n_{2}} = 10^{n_{2}}(10^{n_{1}-n_{2}} - 1)\) は \(q\) で割り切れ、ここから \(n = n_{1} - n_{2}\) としたときの \(10^{n} - 1\) が \(q\) で割り切れると分かる。したがって \(r\) は \(P/(10^{n} - 1)\) という形で表すことができ、これは \[ \frac{P}{10^{n}} + \frac{P}{10^{2n}} + \cdots \] つまり \(n\) 桁の純粋な循環小数と等しい。もし \(10\) と互いに素な \(Q\) を使って \(q = 2^{\alpha}5^{\beta}Q\) と書けるなら、\(\alpha\) と \(\beta\) の大きい方 \(m\) について \(10^{m}r\) の分母は \(10\) と互いに素になる。よってこの数は整数と純粋な循環小数の和として書ける。\(m\) より小さい \(\mu\) に対する \(10^{\mu}r\) ではこれは成り立たないので、\(r\) の小数表示は循環しない桁をちょうど \(m\) 個持つ。

  6. 問題 2–5 の結果に 例 1.3 を追加する。最後に \[ .\overline{9} = \frac{9}{10} + \frac{9}{10^{2}} + \frac{9}{10^{3}} + \cdots = 1 \] だから、循環しない小数は循環部分が \(9\) だけからなる循環小数で表せる。例えば \(.217 = .216\overline{9}\) である。したがって全ての既約分数は循環小数で表すことができ、逆も成り立つ。

  7. 一般的な小数、非循環小数を使った無理数の表現: 小数は循環するかどうかに関わらず \(0\) から \(1\) の間の実数を表す。理由は次の通りである。\(.a_{1}a_{2}a_{3}a_{4}\ldots\) は級数 \[ \frac{a_{1}}{10} + \frac{a_{2}}{10^{2}} + \frac{a_{3}}{10^{3}} + \cdots \] の別表現である。各桁 \(a_{r}\) は正だから、最初の \(n\) 項の和 \(s_{n}\) は \(n\) と共に大きくなる。加えてこの級数は \(.\overline{9} = 1\) より小さいので、\(s_{n}\) は \(0\) から \(1\) の間にある実数を表すことが分かる。

    さらに同じ実数に対応する小数は一つしかない。もし \(.a_{1}a_{2}a_{3} \ldots,\ .b_{1}b_{2}b_{3} \ldots\) が \(a_{r-1},\ b_{r-1}\) まで一致して \(a_{r} \gt b_{r}\) なら、\(a_{r}\geq b_{r} + 1 \gt b_{r}.b_{r+1}b_{r+2} \ldots\) が成り立つ (\(b_{r+1},\ b_{r+2},\ \ldots\ \) が全て \(9\) のときは除く)。よって \[ .a_{1}a_{2} \ldots a_{r}a_{r+1} \ldots \gt .b_{1}b_{2} \ldots b_{r}b_{r+1} \ldots \] となる。有理分数に対応する循環小数が唯一であることも問題 2–6 から分かる。また循環しない任意の小数は \(0\) から \(1\) の間にある無理数を表し、逆に \(0\) から \(1\) の間にある無理数は循環しない小数として表せる。理由は次の通りである。適当にそのような無理数を取ると、それは \[ [0,\ 1/10),\quad [1/10,\ 2/10),\quad \ldots,\quad [9/10,\ 1) \] という区間のいずれかに含まれ、\(r/10\) から \((r + 1)/10\) の区間に属すとき最初の桁は \(r\) と分かる。この区間をさらに \(10\) 個に分ければ二桁目が分かり、以下同様にできる。ただし問題 3, 4 よりこの小数は循環しない。例えば通常の開平法を使うと \(\sqrt{2}\) の小数表示が \(1.414\ldots\) と分かるが、これは循環しない。

  8. 小数 \(.1010010001000010\ldots\) と \(.2020020002000020\ldots\) が無理数を表すことを示せ。両方の小数において \(1\) と \(2\) の間の \(0\) の数は一つずつ増える。

  9. \(n\) が素数のとき \(n\) 桁目が \(1\) でそれ以外のとき \(0\) となる小数 \(.11101010001010\ldots\) は無理数を表す。 [素数は無限個あるので、この小数は無限に続く。また循環もしない: ある \(m\) と \(p\) で \(m,\ m + p,\ m + 2p,\ m + 3p,\ \ldots\ \) が全て素数だとすると、\(m + mp\) が素数となって矛盾する3]

例 30
  1. \(-1 \lt r \lt 1\) なら級数 \(r^{m} + r^{m+1} + \cdots\) は収束し、和は \(1/(1 - r) - 1 - r - \cdots - r^{m-1}\) となる (参考: §77 の (2))。

  2. \(-1 \lt r \lt 1\) なら級数 \(r^{m} + r^{m+1} + \cdots\) は収束し、和は \(r^{m}/(1 - r)\) となる (参考: §77 の (4))。問題 1 と問題 2 の結果が矛盾しないことを確かめよ。

  3. \(-1 \lt r \lt 1\) なら級数 \(1 + 2r + 2r^{2} + \cdots\) は収束し、和が \((1 + r)/(1 - r)\) であることを示せ。証明は (a) \(-1 + 2(1 + r + r^{2} + \cdots)\) への変形、(b) \(1 + 2(r + r^{2} + \cdots)\) への変形、(c) 二つの級数 \(1 + r + r^{2} + \cdots,\ r + r^{2} + \cdots\) の和への変形、を使ったものをそれぞれ示し、§77 の定理のどれが使われているのか説明せよ。

  4. “算術” 級数 \[ a + (a + b) + (a + 2b) + \cdots \] が常に発散することを示せ。例外は \(a\) と \(b\) が両方とも \(0\) のときである。\(b\) がゼロでないなら級数は \(b\) の符号に応じて \(+ \infty\) または \(-\infty\) に発散し、\(b = 0\) なら \(a\) の符号に応じて \(+ \infty\) または \(-\infty\) に発散することを示せ。

  5. 級数 \[ (1 - r) + (r - r^{2}) + (r^{2} - r^{3}) + \cdots \] が収束するとき、その和は何か? [級数は \(-1 \lt r \leq 1\) のときに限って収束する。和は \(1\) だが、\(r = 1\) のときは例外的に \(0\) となる]

  6. 級数 \[ r^{2} + \frac{r^{2}}{1 + r^{2}} + \frac{r^{2}}{(1 + r^{2})^{2}} + \cdots \] の和を求めよ。 [級数は常に収束する。和は \(1 + r^{2}\) だが、\(r = 0\) のときは例外的に \(0\) となる]

  7. \(1 + r + r^{2} + \cdots\) が収束するなら和が \(1/(1 - r)\) になることは §77 の結果 (1) と (4) を使っても示せる。具体的には、\(1 + r + r^{2} + \cdots = s\) とすれば \[ s = 1 + r(1 + r^{2} + \cdots) = 1 + rs \] が成り立つことを使う。

  8. 級数 \[ r + \frac{r}{1 + r} + \frac{r}{(1 + r)^{2}} + \cdots \] が収束するとき、その和を求めよ。 [級数は \(-1 \lt 1/(1 + r) \lt 1\) のとき、つまり \(r \lt -2\) または \(r \gt 0\) のとき収束し、その和は \(1 + r\) となる。\(r = 0\) のときも収束し、和は \(0\) となる]

  9. 次の級数について同じ質問に答えよ: \[ \begin{aligned} & r - \frac{r}{1 + r} + \frac{r}{(1 + r)^{2}} - \cdots, & & r + \frac{r}{1 - r} + \frac{r}{(1 - r)^{2}} + \cdots,\\ & 1 - \frac{r}{1 + r} + \left(\frac{r}{1 + r}\right)^{2} - \cdots, & & 1 + \frac{r}{1 - r} + \left(\frac{r}{1 - r}\right)^{2} + \cdots \end{aligned} \]

  10. 次の級数が収束するかどうかを調べよ: \[ \begin{aligned} & (1 + r) + (r^{2} + r^{3}) + \cdots, & & (1 + r + r^{2}) + (r^{3} + r^{4} + r^{5}) + \cdots,\\ & 1 - 2r + r^{2} + r^{3} - 2r^{4} + r^{5} + \cdots, & & (1 - 2r + r^{2}) + (r^{3} - 2r^{4} + r^{5}) + \cdots \end{aligned} \] 収束するなら和も求めよ。

  11. \(0 \leq a_{n} \leq 1\) なら級数 \(a_{0} + a_{1}r + a_{2}r^{2} + \cdots\) は \(0 \leq r \lt 1\) のとき収束する。和は \(1/(1 - r)\) 以下となる。

  12. 前問の仮定に加えて \(a_{0} + a_{1} + a_{2} + \cdots\) も収束するなら、級数 \(a_{0} + a_{1}r + a_{2}r^{2} + \cdots\) は \(0 \leq r \leq 1\) で収束する。その和は \(a_{0} + a_{1} + a_{2} + \cdots\) と \(1/(1 - r)\) の小さい方以下となる。

  13. 級数 \[ 1 + \frac{1}{1} + \frac{1}{1·2} + \frac{1}{1·2·3} + \cdots \] は収束する。 [\(1/(1·2 \cdots n) \leq 1/2^{n-1}\) を使う]

  14. 級数 \[ 1 + \frac{1}{1·2} + \frac{1}{1·2·3·4} + \cdots,\quad \frac{1}{1} + \frac{1}{1·2·3} + \frac{1}{1·2·3·4·5} + \cdots \] はどちらも収束する。

  15. 一般的な調和級数は正の実数 \(a\) と \(b\) を使って \[ \frac{1}{a} + \frac{1}{a + b} + \frac{1}{a + 2b} + \cdots \] と定義される。この級数は \(+\infty\) に発散する。

    [\(u_{n} = \dfrac{1}{a + nb} \gt \dfrac{1}{n(a + b)}\) を \(1 + \dfrac{1}{2} + \dfrac{1}{3} + \cdots\) と比較する]

  16. 級数 \[ (u_{0} - u_{1}) + (u_{1} - u_{2}) + (u_{2} - u_{3}) + \cdots \] が収束するのは \(n \to \infty\) で \(u_{n}\) が収束するときに限ることを示せ。

  17. \(u_{1} + u_{2} + u_{3} + \cdots\) が発散するなら、この級数の項を括弧でくくってできる任意の級数も発散すると示せ。

  18. 各項が正の収束する級数の一部分を取ってできる任意の級数は収束する。


  1. 訳注: ここで「小数 (decimal)」は \(0.a_{1}a_{2} \ldots \) という形で表された \(0\) から \(1\) の間にある実数を意味する。[return]

  2. 訳注: 循環しない桁を持たないことを言う。[return]

  3. この例の結果を適切に変更すれば、全て任意の大きさの小数に拡張できる。詳細な議論はブロムウィッチ著 Infinite Series, Appendix I を参照。[return]



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