§65 振る舞いが分かっている二つの関数の積の振る舞い

二つの関数の積についても同様の定理をそれぞれ示せる。一番重要な定理を次に示す:

\(\lim\phi(n) = a\) かつ \(\lim\psi(n) = b\) なら \[ \lim\phi(n)\psi(n) = ab \] が成り立つ。

\(\phi_{1}(n)\) と \(\psi_{1}(n)\) を \[ \phi(n) = a + \phi_{1}(n), \quad \psi(n) = b + \psi_{1}(n) \] と定義すると、\(\lim\phi_{1}(n) = 0\) と \(\lim\psi_{1}(n) = 0\) が成り立つ。そして \[ \phi(n)\psi(n) = ab + a\psi_{1}(n) + b\phi_{1}(n) + \phi_{1}(n)\psi_{1}(n) \] なので、\(\phi(n)\psi(n) - ab\) の絶対値は \(a\psi_{1}(n),\ b\phi_{1}(n),\ \phi_{1}(n)\psi_{1}(n)\) の絶対値の和以下である。したがって \[ \lim\{\phi(n)\psi(n) - ab\} = 0 \] が分かり、定理が証明される。

厳密な証明を示す。仮定から \[ |\phi(n)\psi(n) - ab| \leq |a\psi_{1}(n)| + |b\phi_{1}(n)| + |\phi_{1}(n)| |\psi_{1}(n)| \] が分かる。\(a\) と \(b\) がどちらも \(0\) でなければ、\(n \geq n_{0}\) で次の条件が成り立つように \(n_{0}\) を取れる: \[ |\phi_{1}(n)| \lt \frac{1}{3} \cdot \frac{\varepsilon}{|b|},\quad |\psi_{1}(n)| \lt \frac{1}{3} \cdot \frac{\varepsilon}{|a|} \] よって \[ |\phi(n)\psi(n) - ab| \lt \frac{1}{3}\varepsilon + \frac{1}{3}\varepsilon + \frac{1}{9} \cdot \frac{\varepsilon^{2}}{|a||b|} \] であり、これは \(\varepsilon \lt \frac{1}{3}|a||b|\) のとき \(\varepsilon\) より小さくなる。\(a\) と \(b\) に \(0\) が含まれる場合の証明は読者に任せる。

言うまでもなく、§63 の定理と同じくこの定理も任意個の関数の積に拡張でき、§64 で和について述べたのと同様の定理は積についても成り立つ。ただし積では、\(n\) が \(\infty\) に向かうときの \(\phi(n)\) の挙動を六種類に場合分けする必要がある。つまり \(\phi(n)\) が (1) \(\bm{0}\) でない極限に向かう、(2) \(0\) に向かう、(3a) \(+\infty\) に向かう、(3b) \(-\infty\) に向かう、(4) 有限に振動する、(5) 無限に振動する、の六つである。ただし一般に (3a) の結果の符号を交換すれば (3b) を得られるので、個別に考える必要はない。

その他の定理を全て長々と考えていては紙面が足りなくなる。例として二つだけをここに示し、他は読者に任せる。残りの定理の定式化はちょうどよい練習問題だろう。

\(\phi(n) \to +\infty\) で \(\psi(n)\) が有限に振動するなら、\(\phi(n)\psi(n)\) は \( +\infty\) に向かうか、\(- \infty\) に向かうか、無限に振動する。

\(\phi(n)\) を \(n\)、\(\psi(n)\) を \(2 + (-1)^{n},\ -2 - (-1)^{n},\ (-1)^{n}\) とすれば三つの可能性が得られる。

\(\phi(n)\) と \(\psi(n)\) が有限に振動するなら、\(\phi(n)\psi(n)\) は (\(0\) でもあり得る) 極限に向かうか、有限に振動する。

例えば (i) \(\phi(n) = \psi(n) = (-1)^{n},\ \) (ii) \(\phi(n) = 1 + (-1)^{n},\ \psi(n) = 1 - (-1)^{n},\ \) (iii) \(\phi(n) = \cos\frac{1}{3}n\pi,\ \psi(n) = \sin\tfrac{1}{3} n\pi\) とする。

この定理は \(\phi(n)\) が定数の場合が特に重要となる。このとき定理は「\(\lim\phi(n) = a\) なら \(\lim k\phi(n) = ka\)」という命題になる。ここから、\(k = 0\) でないなら \(\phi(n) \to +\infty\) のとき \(k\) の符号に応じて \(k\phi(n) \to +\infty\) または \(k\phi(n) \to -\infty\) だと分かる。\(k = 0\) ならもちろん全ての \(n\) に対して \(k\phi(n) = 0\) であり \(\lim k\phi(n) = 0\) となる。また \(\phi(n)\) が有限あるいは無限に振動するなら、\(k = 0\) でない限り \(k \phi(n)\) も同じ振る舞いをする。