前書き

第三版への前書き

この版に大きな変更はない。一番大きく変更したのは §80§82 で、この部分は S・ポラード氏からの提案をもとに書き直した。

前の版では三角関数の起源に関する説明が全く不十分だった。§158補遺 Ⅲ でこの改善を試みた。また補遺 Ⅳ も追加した。

興味深いので記しておくと、私が目にしなければならない批評の性格は大きく変化した。私は 15 年前の学生に対して細心の注意を払い、彼らの細かい所作にまで拘泥していたのだが、現在のトリニティの学者にとって私は有名になり過ぎた。言うまでもなく私はそういった批評を非常に喜ばしく思うし、この本が書かれた目的を多少でも達成できたことの何よりの証拠だと感じている。

G. H. H.
August 1921

第二版への前書きより

この版の大きな変更は次の通りである。第一章ではデデキントの実数理論の概要と集積点に関するワイエルスシュトラスの定理の証明を追加した。第四章では「不定形の極限」と「収束に関する諸定理」を追加した。第五章ではハイネ・ボレルの定理、一様連続性に関するハイネの定理、そして陰関数に関する重要な定理の証明を追加した。第六章では代数関数の積分についての話題を追加した。第七章では微分に関する節を追加し、有限積分の定義を扱う節はより一般的な形式で書き直した。こういった追加により他の部分を削除する必要が生じたので、第二章および第三章の解析幾何と形式的三角法についての内容を大きく削った。こういった変更の結果として必要になった小さな変更も多数ある。

G. H. H.
October 1914

第一版への前書きより

この本の対象読者は主に大学一年生、それも「奨学金の基準 (scholarship standard)」などと呼ばれるレベルの技能を習得しているか習得しつつある学生である。これ以外の読者にもこの本が有用なことを願うが、私は彼らを一番に考えた。いずれにせよ、この本は数学者に向けて書かれている。つまり工学を学ぶ学生、さらに言えば一番の興味が数学にない学生が必要とするようなことは一切書かれていない。

私はこの本を非常に初歩的なものだとみなしている。大量の練習問題が (たいていは章の終わりに) あり、私が追加したものについては空間の許す限り略解も付けた。一方で非常に難しい概念は取り入れないよう最大限努力した。例えば「収束の原則 (principle of convergence)」の応用の一様収束・二重級数・無限積は扱わないし、収束の逆操作に関する一般的な定理は証明されず、\(\dfrac{\partial^{2} f}{\partial x\, \partial y}\) や \(\dfrac{\partial^{2} f}{\partial y\, \partial x}\) は定義さえされない。最後の二つの章では指数級数の積分に多少触れたが、非常に簡単な例だけを示し、例ごとに特殊な議論をした。この本を読了した読者はブロムウィッチ博士による Infinite Series を読む準備が整うだろう。この本ではこういったトピックが完全な形で詳細に議論される。

September 1908
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