§96 上限と下限、収束の一般原則

§80§84 の議論は実変数 \(x\) の関数が極限 \(a\) に向かうときにも適用できる。特に \(\phi(x)\) が \(a\) を含んだ区間で有界である1 (\(a - \delta \leq x \leq a + \delta\) で \(H \lt \phi(x) \lt K\) となるよう \(\delta,\ H,\ K\) を取れる) 場合には、\(x \to a\) における \(\phi(x)\) の上極限 \(\Lambda\) と下極限 \(\lambda\) が定義でき、\(x \to a\) で \(\phi(x) \to l\) となる必要十分条件は \(\lambda = \Lambda = l\) となる。同様に収束の一般原則に対応する命題も得られる。つまり \(x \to a\) で \(\phi(x)\) が極限 \(l\) に向かうための必要十分条件は、正の実数 \(\varepsilon\) が与えられたときに \(0 \lt |x_{2} - a| \lt |x_{1} - a| \leq \delta(\varepsilon)\) なら \(|\phi(x_{2}) - \phi(x_{1})| \lt \varepsilon\) となるように \(\delta(\varepsilon)\) を選べることである。

例 35
  1. \(x \to a\) で \[ \phi(x) \to l,\quad \psi(x) \to l' \] なら、\(\phi(x) + \psi(x) \to l + l',\ \phi(x)\psi(x) \to ll',\ \phi(x)/\psi(x) \to l/l'\) が成り立つ。最後のケースでは \(l' \neq 0\) とする。

    [第四章の §63 などで示した定理が \(x \to \infty\) や \(x \to -\infty\) のときの \(x\) の関数でも成り立つことは §91 で見た。\(x = 1/y\) とすればこの結果を \(y\) の関数の \(y \to 0\) における極限に拡張でき、さらに \(y = z - a\) とすれば \(z \to a\) のときの \(z\) の関数に拡張できる。

    ただしそれでも、上記の正式な定義から直接証明してみるとよい。例えば最初の結果の厳密な証明を得るには、§63 にある証明の \(n\) を \(x\) に、\(\infty\) を \(a\) に、\(n \geq n_{0}\) を \(0 \lt |x - a| \leq \delta\) にそれぞれ置き換える]

  2. \(m\) が正の整数なら \(x \to 0\) のとき \(x^{m} \to 0\) となる。

  3. \(m\) が負の整数なら \(x \to +0\) のとき \(x^{m} \to \infty\) であり、\(x \to +0\) のときは \(m\) の偶奇に応じて \(x^{m} \to +\infty\) または \(x^{m} \to -\infty\) となる。\(m = 0\) なら \(x^{m} = 1\) なので \(x^{m} \to 1\) となる。

  4. \(\lim\limits_{x \to 0} (a + bx + cx^{2} + \cdots + kx^{m}) = a\) が成り立つ。

  5. \(\alpha \neq 0\) なら \(\lim\limits_{x \to 0} \dfrac{a + bx + \cdots + kx^{m}}{\alpha + \beta x + \cdots + \kappa x^{\mu}} = \dfrac{a}{\alpha}\) となる。\(\alpha = 0\) で \(a \neq 0\) かつ \(\beta \neq 0\) なら、\(a\) と \(\beta\) の符号が一致しているとき \(x \to + 0\) で \(+\infty\) に向かい、そうでないとき \(-\infty\) に向かう。\(x \to -0\) の場合は逆になる。\(a\) と \(\alpha\) の両方が \(0\) のケースは 例 36.5 で扱う。\(a \neq 0\) で \(\alpha\) 以外の分母の項にも \(0\) が含まれる場合を議論せよ。

  6. \(m\) が正または負の整数なら \(\lim\limits_{x \to a} x^{m} = a^{m}\) が成り立つ。ただし \(a = 0\) かつ \(m\) が負の場合は除く。 [\(m \gt 0\) なら \(x = y + a\) として問題 4 を適用する。\(m \lt 0\) なら問題 1 から従う。この結果から \(P(x)\) が多項式なら \(\lim P(x) = P(a)\) だと分かる]

  7. \(R\) が有理関数で \(a\) が \(R\) の分母の根でないなら、\(\lim\limits_{x \to a} R(x) = R(a)\) が成り立つ。

  8. \(m\) が有理数なら、\(a = 0\) かつ \(m\) が負の場合を除いて \(\lim\limits_{x \to a} x^{m} = a^{m}\) だと示せ。 [\(m\) が正なら §74 の不等式 (9) と (10) から従う。つまり \(mx^{m-1}\) と \(ma^{m-1}\) の大きい方を \(H\) とすれば、\(|x^{m} - a^{m}| \lt H|x - a|\) が成り立つ (参考: 例 28.4)。\(a\) が負なら \(x = -y,\ a = -b\) とすれば \[ \lim x^{m} = \lim (-1)^{m}y^{m} = (-1)^{m}b^{m} = a^{m} \] が成り立つ]


  1. 「関数が区間内で有界」の意味に関する議論は §102 を参照。[return]



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