§161 置換積分と部分積分

§138 から \[ \int_{a}^{b} f(x)\phi'(x)\, dx = f(b)\phi(b) - f(a)\phi(a) - \int_{a}^{b} f'(x)\phi(x)\, dx \] が分かる。この等式は部分定積分 (integration of a definite integral by parts) の公式という名前で知られる。

同様に §133 からは、\(f(t)\) の不定積分が \(F(t)\) なら \[ \int f\{\phi(x)\}\phi'(x)\, dx = F\{\phi(x)\} \] だと分かる。よって \(\phi(a) = c,\ \phi(b) = d\) とすれば \[ \int_{c}^{d} f(t)\, dt = F(d) - F(c) = F\{\phi(b)\} - F\{\phi(a)\} = \int_{a}^{b} f\{\phi(x)\}\phi'(x)\, dx \] を得る。これは置換 (substitution) を使った定積分の変形公式である。

部分積分と置換積分の公式を使うと、被積分関数の不定積分をわざわざ計算せずとも定積分の値を求められる場合がある。そればかりか、不定積分がそもそも求められない場合でも値が求まることもある。この例を次の例でいくつか示す。不定積分を知らなくても定積分の値が求められる場合があるのは不思議なことではない。不定積分 \(F(x)\) の一般的な形が求められなくても、二つの特定の値の差 \(F(b) - F(a)\) なら求められる可能性がまだ残っている。ただ一般的に、この方法による計算は現在の私たちが知っているよりも高度な手法を使ってはじめて可能となる。

例 66
  1. 次を示せ: \[ \int_{a}^{b} x f''(x)\, dx = \{bf'(b) - f(b)\} - \{af'(a) - f(a)\} \]

  2. より一般的には \[ \int_{a}^{b} x^{m} f^{(m+1)}(x)\, dx = F(b) - F(a) \] なら次が成り立つ: \[ \begin{aligned} F(x) = {} & x^{m} f^{(m)}(x) - mx^{m-1} f^{(m-1)}(x) \\ & \quad + m(m - 1)x^{m-2} f^{(m-2)}(x) - \cdots + (-1)^{m} m!\, f(x) \end{aligned} \]

  3. 次を示せ: \[ \int_{0}^{1} \arcsin x\, dx = \dfrac{1}{2}\pi - 1,\quad \int_{0}^{1}x\arctan x\, dx = \dfrac{1}{4}\pi - \dfrac{1}{2} \]

  4. \(a\) と \(b\) が正のとき次を示せ: \[ \int_{0}^{\frac{1}{2}\pi} \frac{x\cos x\sin x\, dx}{(a^{2}\cos^{2}x + b^{2}\sin^{2}x)^{2}} = \frac{\pi}{4ab^{2}(a + b)} \]

    [部分積分をしてから 例 63.8 を使う]

  5. もし \[ f_{1}(x) = \int_{0}^{x}f(t)\, dt,\quad f_{2}(x) = \int_{0}^{x}f_{1}(t)\, dt,\ \ldots,\quad f_{k}(x) = \int_{0}^{x} f_{k-1}(t)\, dt \] なら次が成り立つ: \[ f_{k}(x) = \frac{1}{(k - 1)!} \int_{0}^{x} f(t)(x - t)^{k-1}\, dt \]

    [部分積分を繰り返し使う]

  6. \(m\) と \(n\) を正の整数とする。 \[ u_{m, n} = \int_{0}^{1} x^{m} (1 - x)^{n}\, dx \] なら \((m + n + 1) u_{m, n} = nu_{m, n-1}\) だと示し、次の等式を導け: \[ u_{m, n} = \frac{m!\, n!}{(m + n + 1)!} \]

  7. \(\displaystyle u_{n} = \int_{0}^{\frac{1}{4}\pi} \tan^{n}x\, dx\) なら \(u_{n} + u_{n-2} = \dfrac{1}{n - 1}\) だとを示せ。これを使って全ての正の整数 \(n\) に対する積分の値を計算せよ。

    [\(\tan^{n}x = \tan^{n-2}x(\sec^{2}x - 1)\) を使い、それから部分積分する]

  8. 前問の結果を使って \(u_{n}\) が \(\dfrac{1}{2(n - 1)}\) と \(\dfrac{1}{2(n + 1)}\) の間にあると示せ。

  9. \(\displaystyle u_{n} = \int_{0}^{\frac{1}{2}\pi} \sin^{n} x\, dx\) なら \(u_{n} = \dfrac{n - 1}{n} u_{n-2}\) だと示せ。 [\(\sin^{n}x\) を \(\sin^{n-1}x\sin x\) として部分積分する]

  10. \(n\) が奇数なら \[ u_{n} = \frac{2·4·6 \cdots (n - 1)}{3·5·7 \cdots n} \] で、\(n\) が偶数なら \[ u_{n} = \dfrac{1}{2}\pi \frac{1·3·5 \cdots (n - 1)}{2·4·6 \cdots n} \] だと示せ。

  11. 第二の平均値の定理 (Second Mean Value Theorem): \(x\) の関数 \(f(x)\) が \(x = a\) から \(x = b\) の間で符号が一定な微分係数を持つとする。このとき \(a\) と \(b\) の間のとある \(\xi\) で \[ \int_{a}^{b} f(x)\phi(x)\, dx = f(a) \int_{a}^{\xi} \phi(x)\, dx + f(b) \int_{\xi}^{b} \phi(x)\, dx \] が成り立つ。

    [\(\Phi(x) = \displaystyle\int_{a}^{x}\phi(t)\, dt\) とすると、§160 で示した一般化された平均値の定理から \[ \begin{aligned} \int_{a}^{b} f(x)\phi(x)\, dx & = \int_{a}^{b} f(x)\Phi'(x)\, dx \\ & = f(b)\Phi(b) - \int_{a}^{b} f'(x)\Phi(x)\, dx\\ & = f(b)\Phi(b) - \Phi(\xi) \int_{a}^{b}f'(x)\, dx \end{aligned} \] が分かる。ここから示したい結果と同値な式 \[ \int_{a}^{b} f(x)\phi(x)\, dx = f(b)\Phi(b) + \{f(a) - f(b)\}\Phi(\xi) \] が得られる]

  12. ボネによって発見された第二の平均値の定理の別表現: \(f'(x)\) の符号が一定で、\(f(b)\) と \(f(a) - f(b)\) が同じ符号を持つとする。このとき \(a\) と \(b\) の間のとある \(X\) で \[ \int_{a}^{b} f(x)\phi(x)\, dx = f(a) \int_{a}^{X} \phi(x)\, dx \] が成り立つ。 [仮定より \(f(b)\Phi(b) + \{f(a) - f(b)\}\Phi(\xi) = \mu f(a)\) が \(\Phi(\xi)\) と \(\Phi(b)\) の間のとある \(\mu\) で成り立つから、\(\mu = \Phi(x)\) となる \(x\) を \(X\) として取れる。特に重要なのは \(0 \leq f(b) \leq f(x) \leq f(a)\) の場合である]

    同様に \(f(a)\) と \(f(b) - f(a)\) が同じ符号を持つなら、\(a\) と \(b\) のとある \(X\) で \[ \int_{a}^{b} f(x)\phi(x)\, dx = f(b) \int_{X}^{b} \phi(x)\, dx \] が成り立つ。 [関数 \(\Psi(\xi) = \displaystyle\int_{\xi}^{b} \phi(x)\, dx\) を使う。積分は \[ f(a)\Psi(a) + \{f(b) - f(a)\}\Psi(\xi) \] となる。特に重要なのは \(0 \leq f(a) \leq f(x) \leq f(b)\) の場合である]

  13. \(X' \gt X \gt 0\) なら \(\displaystyle \left|\int_{X}^{X'} \frac{\sin x}{x}\, dx\right| \lt \frac{2}{X}\) だと示せ。

    [問題 12 の最初の等式を適用する。\(\sin x\) の任意の区間に渡る積分の絶対値が \(2\) より小さいことに注意する]

  14. 例 65.1 の結果を置換積分を使って示せ。 [(i) では積分区間を \([-a, 0]\) と \([0, a]\) に分割して、一つ目の積分で \(x = -y\) とする。(ii) では置換 \(x = \frac{1}{2}\pi - y\) から一つ目の等式が得られ、二つ目の等式では \([0, \pi]\) を二等分してから \(x = \frac{1}{2}\pi + y\) を使う。(iii) では積分区間を \(m\) 等分して \(x = \pi + y,\ x = 2\pi + y,\ \ldots\) を使う]

  15. \(\displaystyle \int_{a}^{b} F(x)\, dx = \int_{a}^{b} F(a + b - x)\, dx\) を示せ。

  16. \(\displaystyle \int_{0}^{\frac{1}{2}\pi} \cos^{m} x\sin^{m} x\, dx = 2^{-m} \int_{0}^{\frac{1}{2}\pi} \cos^{m} x\, dx\) を示せ。

  17. \(\displaystyle \int_{0}^{\pi} x\phi(\sin x)\, dx = \dfrac{1}{2}\pi \int_{0}^{\pi} \phi(\sin x)\, dx\) を示せ。

    [\(x = \pi - y\) とする]

  18. \(\displaystyle \int_{0}^{\pi} \frac{x\sin x}{1 + \cos^{2} x}\, dx = \dfrac{1}{4}\pi^{2}\) を示せ。

  19. 変形 \(x = a\cos^{2}\theta + b\sin^{2}\theta\) を使って次を示せ: \[ \int_{a}^{b} \sqrt{(x - a)(b - x)}\, dx = \dfrac{1}{8}\pi (b - a)^{2} \]

  20. 置換 \((a + b\cos x) (a - b\cos y) = a^{2} - b^{2}\) を使って、\(n\) が正の整数で \(a \gt |b|\) なら \[ \int_{0}^{\pi} (a + b\cos x)^{-n}\, dx = (a^{2} - b^{2})^{-(n - \frac{1}{2})} \int_{0}^{\pi} (a - b\cos y)^{n-1}\, dy \] だと示せ。\(n = 1,\ 2,\ 3\) に対する積分の値を求めよ。

  21. \(m\) と \(n\) が正の整数なら次が成り立つ: \[ \int_{a}^{b} (x - a)^{m} (b - x)^{n}\, dx = (b - a)^{m+n+1} \frac{m!\, n!}{(m + n + 1)!} \]

    [\(x = a + (b - a)y\) として問題 6 を使う]