§83 有界関数に対する収束の基本原則 (コーシーの収束判定法)
前節の結果から \(\phi(n)\) が極限に向かうための必要十分条件が分かる。これは「収束の基本原則1 (the general principle of convergence)」と呼ばれる非常に重要な条件である。
有界関数 \(\phi(n)\) が極限に向かう必要十分条件は、任意の正の実数 \(\varepsilon\) に対して、 \[ |\phi(n_{2}) - \phi(n_{1})| \lt \varepsilon \] が \(n_{2} \gt n_{1} \geq n_{0}(\varepsilon)\) を満たす全ての \(n_{1}\) と \(n_{2}\) で成り立つよう \(n_{0}(\varepsilon)\) を取れることである。
まず必要性を示す。\(\phi(n) \to l\) のときある \(n_{0}\) があって \(n \geq n_{0}\) で \[ l - \frac{1}{2}\varepsilon \lt \phi(n) \lt l + \frac{1}{2}\varepsilon \] が成り立つ。よって全ての \(n_{1} \geq n_{0}\) と全ての \(n_{2} \geq n_{0}\) で \[ |\phi(n_{2}) - \phi(n_{1})| \lt \varepsilon \qquad \text{(1)} \] となる。
次に十分性を示す。\(\lambda = \Lambda\) を示せばよい。もし \(\lambda \lt \Lambda\) なら、どれだけ小さい正の \(\varepsilon\) に対しても、無限個の \(n\) で \(\phi(n) \lt \lambda + \varepsilon\) および無限個の \(n\) で \(\phi(n) \gt \Lambda - \varepsilon\) となる。よって与えられた任意の \(n_{0}\) より大きい \(n_{1}\) と \(n_{2}\) であって \[ \phi(n_{2}) - \phi(n_{1}) \gt \Lambda - \lambda - 2\varepsilon \] が成り立つものを取れる。\(\varepsilon\) が十分小さいときこれは \(\frac{1}{2}(\Lambda - \lambda)\) より大きくなるが、これは (1) と矛盾する。よって \(\lambda = \Lambda\) であり、\(\phi(n)\) は極限に向かう。
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訳注: 日本の文献では「コーシーの収束判定法」と呼ばれることが多い。[return]