§121 微分に関する諸定理 (ロルの定理)

この節では \(x\) の関数 \(\phi(x)\) の導関数 \(\phi'(x)\) が考えている全ての \(x\) で値を持つとする。もちろんこの仮定により \(\phi(x)\) は連続となる。

\(\phi'(x_{0}) \gt 0\) とする。このとき \(x_{0}\) より小さく \(x_{0}\) に十分近い全ての \(x\) で \(\phi(x) \lt \phi(x_{0})\) が成り立ち、\(x_{0}\) より大きく \(x_{0}\) に十分近い全ての \(x\) で \(\phi(x) \gt \phi(x_{0})\) が成り立つ。

仮定から \(\{\phi(x_{0} + h) - \phi(x_{0})\}/h\) は \(h \to 0\) のとき正の極限 \(\phi'(x_{0})\) に収束する。これは絶対値が十分小さい \(h\) に対して \(\phi(x_{0} + h) - \phi(x_{0})\) と \(h\) が同じ符号を持つときにしか成り立たないが、定理はまさにこのことを示している。この結果は幾何学的に考えても納得できる: \(\phi'(x) \gt 0\) は曲線 \(y = \phi(x)\) の接線が \(x\) 軸と正の角度をなすことを意味する。\(\phi'(x) \lt 0\) の場合の定理を自分で定式化してみるとよい。

定理 A からロルの定理 (Rolle's Theorem) として知られる次の重要な定理が得られる。この定理は非常に大切なので、その前提条件をここに繰り返しておいた方がいいだろう: 導関数 \(\phi'(x)\) が考えている全ての \(x\) で存在するときに限ってロルの定理は正しい。

\(\phi(a) = 0\) かつ \(\phi(b) = 0\) なら、\(a\) と \(b\) の間のとある \(x\) で \(\phi'(x) = 0\) となる。

可能性が二つある。一つは \(\phi(x)\) が \([a, b]\) の全てで \(0\) に等しい場合で、この場合は \(\phi'(x)\) も \([a, b]\) の全てで \(0\) に等しい。一方で考えている区間で \(\phi(x)\) が常に \(0\) に等しくないなら、\(\phi(x)\) が正または負となる \(x\) が存在する。例えば \(\phi(x)\) がどこかで正になるとすれば、§102 の定理 2 から \(a\) でも \(b\) でもない \(\xi\) が存在し、全ての \(\phi(x)\) が \(\phi(\xi)\) 以下となる。このとき \(\phi'(\xi) = 0\) である。もし \(\phi'(x)\) が正だとすると、定理 A から \(x\) より大きく \(\xi\) に十分近い全ての \(x\) で \(\phi(x)\) が \(\phi(\xi)\) より大きくなり、\(\phi(\xi)\) より大きい \(\phi(x)\) が存在することになってしまう。\(\phi'(\xi)\) が負にならないことも同様に示せる。

\(\phi(a) = \phi(b) = k\) なら、\(a\) と \(b\) の間に \(\phi'(x) = 0\) となる \(x\) が存在する。

\(\phi(x) - k = \psi(x)\) とすれば \(\psi(x)\) に定理 B を適用できる。

とある区間全体で \(\phi'(x) \gt 0\) なら、その区間で \(\phi(x)\) は \(x\) の狭義単調増加関数 (§95) である。

考えている区間内の任意の二点を \(x_{1},\ x_{2}\) (\(x_{1} \lt x_{2}\)) とする。\(\phi(x_{1}) \lt \phi(x_{2})\) を示せばよい。まず \(\phi(x_{1})\) は \(\phi(x_{2})\) と等しくない: もし等しいなら定理 B より \(x_{1}\) と \(x_{2}\) の間に \(\phi'(x) = 0\) となる \(x\) が存在するが、これは仮定に反する。同様に \(\phi(x_{1})\) は \(\phi(x_{2})\) 以下である: もしそうでないなら \(\phi'(x_{1})\) が正なことから、定理 A より \(x_{1}\) より大きく \(x_{1}\) に十分近い \(x\) で \(\phi(x)\) は \(\phi(x_{1})\) よりも大きくなる。すると \(x_{1}\) と \(x_{2}\) の間に \(\phi(x_{3}) = \phi(x_{1})\) となる \(x_{3}\) が存在するので、定理 B から \(x_{1}\) と \(x_{3}\) の間に \(\phi'(x) = 0\) となる \(x\) が存在してしまう。

系 2 の結論は、区間 \([a, b]\) の中に例外的な \(x\) 、つまり \(\phi'(x)\) が存在しないか正でない \(x\) が有限個存在したとしても、\(\phi(x)\) がそういった \(x\) で連続な限り正しい。

例外的な \(x\) が一つだけ存在し、それが区間の端 \(a\) に対応する場合を考えれば十分である。\(a \lt x_{1} \lt x_{2} \lt b\) とすると、\(a + \delta \lt x_{1}\) かつ \([a + \delta, b]\) で \(\phi'(x) \gt 0\) が成り立つよう \(\delta\) を選ぶことができ、このとき系 2 より \([a + \delta, b]\) で \(\phi(x_{1}) \lt \phi(x_{2})\) が分かる。後は \(\phi(a) \lt \phi(x_{1})\) を示せば証明が完了する。\(x_{1}\) が \(a\) に向かって減少するとき \(\phi(x_{1})\) は狭義単調減少する。よって \[ \phi(a) = \phi(a + 0) = \lim_{x_{1}\to a+0} \phi(x_{1}) \lt \phi(x_{1}) \] が分かる。

\(\phi(a) \geq 0\) および区間 \([a, b]\) 全体で \(\phi'(x) \gt 0\) なら、\(\phi(x)\) は \([a, b]\) 全体で正となる。

定理 A と系 2 は注意深く比較する価値がある。定理 A と同様に単一の点 \(x = x_{0}\) で \(\phi'(x)\) が正として、\(x\) に十分近い \(x_{1},\ x_{2}\) (\(x_{1} \lt x_{0} \lt x_{2}\)) を取る。すると定理 A から \(\phi(x_{1}) \lt \phi(x_{0})\) および \(\phi(x_{2}) \gt \phi(x_{0})\)、つまり \(\phi(x_{1}) \lt \phi(x_{2})\) が分かる。一方でこれは、\(\phi(x)\) が狭義単調増加になる \(x_{0}\) を含んだ区間が存在することを意味しない。\(x_{1}\) と \(x_{2}\) が \(x_{0}\) から見て反対側にあることが定理の証明において本質的なためである。この点については具体的な例を交えて §124 でさらに議論する。