§127 積分

本章では与えられた関数 \(\phi(x)\) の導関数を求める方法を解説し、最もよく表れる関数をはじめとした様々な \(\phi(x)\) を考えてきた。次はこれと逆の問題、つまり与えられた関数を導関数に持つ関数を求める問題を考えるのが自然である。

与えられた関数を \(\psi(x)\) とする。\(\phi'(x) = \psi(x)\) となる関数 \(\phi(x)\) を求めたい。少し考えれば、この問題が三つの部分からなると分かる:

  1. 何よりもまず、そのような関数 \(\phi(x)\) が実際に存在するかどうかを知る必要がある。この問題と「関数 \(\phi(x)\) が存在したとして、それを表現する簡単な式を見つける問題」が異なる点に注意しなければならない。
  2. そのような関数が複数存在するか、つまり問題が唯一の解を持つかどうかを知る必要がある。そして解が複数存在するなら、特定の解を使って全ての解を表すことができるような単純な関係が異なる解の間に存在するかを知る必要がある。
  3. 解があるなら、その式を見つける方法を知る必要がある。

関数の微分を考えるときに生じる問題と比較すれば、この三つの問題がどんなものであるかがはっきりする。

  1. 整数 \(m\) に対する \(x^{m}\) や \(\sin x\) のように関数 \(\phi(x)\) が全ての \(x\) に対して微分係数を持つこともある。しかし \(\sqrt[3]{x}\) や \(\tan x\) あるいは \(\sec x\) のように常に導関数を持つわけではない関数もある。さらに導関数が一つも存在しない関数もある: 例 37.20 で考えた関数は全ての点で不連続であり、よって任意の \(x\) で微分係数は存在しない。それから特定の \(x\) の値でのみ微分係数を持たない関数もこの章で考えた。例えば \(\sqrt[3]{x}\) は特別な値 (ここでは \(x = 0\)) で微分係数を持たない連続関数の例となる。導関数を一切持たない連続な関数、つまり接線を引けない連続曲線が存在するのかという疑問も生じるが、これはこの本の範囲を超える。常識的に考えれば「存在しない」が答えだが、§111 でも触れた通り、これは常識が間違っていることを高等数学が証明できる例である。

    いずれにせよ「\(\phi(x)\) は導関数 \(\phi'(x)\) を持つか?」という質問の答えが状況によって異なることは確かである。そして逆の質問「導関数が \(\psi(x)\) となる関数 \(\phi(x)\) は存在するか?」にも異なる答えが存在する。答えが「存在しない」の場合は前に見た: \(x\) が \(0\) より小さいとき \(a\)、\(0\) と等しいとき \(b\)、\(0\) より大きいとき \(c\) となる関数を \(\psi(x)\) とすれば、\(a = b = c\) でない限り質問の答えは「存在しない」となる (例 47.3)。

    この場合には与えられた関数が不連続となっているが、これからは \(\psi(x)\) が連続と仮定する。すると答えは「存在する」となる: \(\bm{\psi(x)}\) が連続なら、\(\bm{\phi'(x) = \psi(x)}\) となる \(\bm{\phi(x)}\) が存在する。証明は第七章で行う。

  2. 二つ目の問題は難しくない。微分の場合には定義が直接与えられており、導関数が複数存在しないことはそこから明らかだった。逆の問題もほぼ同じ程度に簡単である。\(\phi(x)\) が問題の解なら、任意の定数 \(C\) に対する \(\phi(x) + C\) も解となり、全ての可能な解は \(\phi(x) + C\) という形に書ける。これは §126 から直ちに従う。

  3. 実際に \(\phi(x)\) から \(\phi'(x)\) を見つけるという実践的な問題は、関数が簡単な記号の組み合わせである限りそれほど難しくなかった。しかし逆の問題はずっと難しい。何がこの問題を難しくしているかは今後明らかになるだろう。

\(\psi(x)\) を \(\phi(x)\) の導関数とする。このとき \(\phi(x)\) を \(\psi(x)\) の積分 (integral) あるいは積分関数 (integral function) と呼ぶ。そして \(\psi(x)\) から \(\phi(x)\) を得る操作を 積分 (integration) と呼ぶ。

次の表記を使うことにする: \[ \phi(x) = \int \psi(x)\, dx \] 言うまでもないが、\(\int \ldots dx\) は \(d/dx\) と同じくある操作を表す一つの記号としてみなさなければならない。\(d/dx\) の \(d\) や \(dx\) が意味を持たないのと同様に、積分記号の \(\int\) や \(dx\) を切り離しても意味はない。



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