§94 \(x → a\) の極限

\(y \to 0\) のとき \(\phi(y) \to l\) とする。このとき \[ y = x - a,\quad \phi(y) = \phi(x - a) = \psi(x) \] とおくと、\(y \to 0\) のとき \(x \to a\) および \(\psi(x) \to l\) となる。ここから \[ \lim_{x \to a} \psi(x) = l \] あるいは \(\lim\psi(x) = l\) や \(\psi(x) \to l\) という表記が自然に導かれる。このとき「\(x\) が \(a\) に向かうとき \(\psi(x)\) は極限 \(l\) に向かう」と言う。正確で直接的な定義を次に示す:

\(\varepsilon\) が与えられたときに、\(0 \lt |x - a| \leq \delta(\varepsilon)\) で \[ |\phi(x) - l| \lt \varepsilon \] が成り立つよう \(\delta(\varepsilon)\) を常に選べるなら、 \[ \lim_{x \to a} \phi(x) = l \] と表記する。

不等式 \(0 \lt |x - a| \leq \delta(\varepsilon)\) を \(a \lt x \leq a + \delta(\varepsilon)\) と置き換えて \(a\) より大きい \(x\) だけを考えることで、「\(x\) が右から \(a\) に向かうとき \(\phi(x)\) は \(l\) に向かう」という言い回しを定義できる。このとき \[ \lim_{x \to a+0} \phi(x) = l \] と書く。同じく \[ \lim_{x \to a-0} \phi(x) = l \] も定義する。この定義から、\(\lim\limits_{x \to a} \phi(x) = l\) が次の二つの命題と同値だと分かる: \[ \lim_{x \to a+0} \phi(x) = l, \quad \lim_{x \to a-0} \phi(x) = l \]

右からおよび左から \(x \to a\) のときの \(\phi(x) \to \infty\) と \(\phi(x) \to -\infty\) も同様に定義されるが、ここで詳しく書く必要はないだろう。\(a = 0\) で示した定義とほとんど同じであり、\(\phi(x)\) の \(x \to a\) における振る舞いは \(x - a = y\) としたときの \(y \to 0\) を考えれば分かる。

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