§180 その他の無限積分

第七章で与えた有限積分 (“通常の” 積分) の定義では、(1) 積分区間が有限なことおよび (2) 被積分関数が連続なことが仮定されていた。

しかし「定積分」の意味はこういった仮定が成り立たない場合にも拡張できる。例えばここまで議論してきた “無限” 積分は積分区間が無限であるという点で第七章の積分と異なっている。次は満たされないのが (1) ではなく (2) の場合を考えて、そのときにも何らかの意味を持つ定義を考えよう。ここではそのような定義を一つだけ与える。\(\phi(x)\) が有限個の点 \(x = \xi_{1},\ \xi_{2},\ \ldots,\) を除いて区間 \([a, A]\) で連続であり、例外的な点では \(x\) をどちら側から近づけても \(\phi(x) \to \infty\) または \(\phi(x) \to -\infty\) だとする。

ここで考える必要があるのは \([a, A]\) に含まれる例外的な点が一つだけの場合だけだと分かる: もし例外的な点が複数あるなら、一つ以下になるように \([a, A]\) を有限個の小区間に分割でき、そして例外的な点が一つ含まれる区間に対する積分が定義されていれば、分割された小区間の積分の和として元々の区間の積分を定義できる。さらに \([a, A]\) が持つ唯一の例外的な点 \(\xi\) が区間の端 \(a,\ A\) のいずれかだとも仮定できる。この場合に対する定義が存在すれば、\(a\) と \(A\) の間に \(\xi\) があるときの \(\displaystyle\int_{a}^{A} \phi(x)\, dx\) を \[ \int_{a}^{\xi} \phi(x)\, dx + \int_{\xi}^{A} \phi(x)\, dx \] と定義できる。以降では \(\xi = a\) とする。こうして導かれる定義をほんの少し変更すれば \(\xi = A\) のときの定義が得られる。

\(\phi(x)\) が \(x = a\) を除いた区間 \([a, A]\) の全ての点で連続で、\(a\) より大きい側から \(x\) が \(a\) に近づくとき \(\phi(x) \to \infty\) だとする。例えば \(s \gt 0\) に対する \[ \phi(x) = (x - a)^{-s} \] はこの条件を満たし、特に \(a = 0\) とすれば \(\phi(x) = x^{-s}\) となる。そこで \(s \gt 0\) に対する \[ \int_{0}^{A} \frac{dx}{x^{s}} \qquad \text{(1)} \] をどう定義すべきか考える。

積分 \(\displaystyle\int_{1/A}^{\infty} y^{s-2}\, dy\) は \(s \lt 1\) なら収束する (§175)。この積分は \(\lim\limits_{\eta\to\infty} \displaystyle\int_{1/A}^{\eta} y^{s-2}\, dy\) を意味するが、\(y = 1/x\) と置換すれば \[ \int_{1/A}^{\eta} y^{s-2}\, dy = \int_{1/\eta}^{A} x^{-s}\, dx \] が得られる。積分 \(\lim\limits_{\eta\to\infty} \displaystyle\int_{1/\eta}^{A} x^{-s}\, dx\) つまりは \[ \lim_{\varepsilon\to +0} \int_{\varepsilon}^{A} x^{-s}\, dx \] は \(s \lt 1\) なら存在するので、積分 \(\text{(1)}\) の値をこの極限として定義するのが自然である。同じ議論により、次の等式を使った \(\displaystyle\int_{a}^{A} (x - a)^{-s}\, dx\) の定義を導ける: \[ \int_{a}^{A} (x - a)^{-s}\, dx = \lim_{\varepsilon\to +0} \int_{a+\varepsilon}^{A} (x - a)^{-s}\, dx \]

以上より一般的な定義が導かれる:

積分 \[ \int_{a+\varepsilon}^{A} \phi(x)\, dx \] が \(\varepsilon \to +0\) で極限 \(l\) を持つなら、積分 \[ \int_{a}^{A} \phi(x)\, dx \] が存在して値 \(l\) を持つと言う。

同様に \(x\) が積分の上端 \(A\) に向かうとき \(\phi(x) \to \infty\) なら、\(\displaystyle\int_{a}^{A} \phi(x)\, dx\) を \[ \lim_{\varepsilon \to +0} \int_{a}^{A-\varepsilon} \phi(x)\, dx \] と定義できる。上述の通り、この定義は \(\phi(x)\) の無限点を有限個だけ含む区間 \([a, A]\) まで拡張できる。

\(x\) が積分区間内のとある値に向かうとき被積分関数が \(\infty\) または \(-\infty\) に向かう積分を第二種無限積分 (infinite integral of the second kind) と呼ぶ。第一種無限積分とは §177 から考えた無限積分を言う。§177 の最後に示した命題のほとんど全ては第一種無限積分だけではなく第二種無限積分に対しても成り立つ。



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