§215 二項級数

§163 では、二項定理 \[ (1 + x)^{m} = 1 + \binom{m}{1}x + \binom{m}{2}x^{2} + \cdots \] が \(-1 \lt x \lt 1\) と有理数 \(m\) に対して成り立つことを見た。\(m\) が無理数なら \[ \begin{gathered} (1 + x)^{m} = e^{m\log(1+ x)},\\ D_{x}(1 + x)^{m} = \{m/(1 + x)\} e^{m\log(1 + x)} = m(1 + x)^{m-1} \end{gathered} \] が成り立つので、\((1 + x)^{m}\) の導関数を表す等式は変わらない。よって §163 で示した二項定理の証明をここでも適用できる。本書では \(x = 1\) と \(x = -1\) における収束性は議論しない1

例 92
  1. \(-1 \lt x \lt 1\) で次の等式が成り立つと示せ: \[ \begin{aligned} \frac{1}{\sqrt{1 + x^{2}}} & = 1 - \frac{1}{2}x^{2} + \frac{1·3}{2·4}x^{4} - \cdots,\\ \frac{1}{\sqrt{1 - x^{2}}} & = 1 + \frac{1}{2}x^{2} + \frac{1·3}{2·4}x^{4} + \cdots \end{aligned} \]

  2. 不尽根数の近似: 二次の不尽根数 \(\sqrt{M}\) の値を求めたいとする。\(N^{2}\) を \(M\) に最も近い平方数として、\(x\) が正となるように \(M = N^{2} + x\) あるいは \(M = N^{2} - x\) とする。\(x\) は \(N\) より大きくならないので、\(x/N^{2}\) は比較的小さい。よって不尽根数 \(\sqrt{M} = N\sqrt{1 ± (x/N^{2})}\) は次の級数として表せる: \[ N\left\{ 1 ± \frac{1}{2}\left(\frac{x}{N^{2}}\right) - \frac{1·1}{2·4}\left(\frac{x}{N^{2}}\right)^{2} ± \cdots \right\} \] この級数は高速に収束し、非常に速くなる場合もある。例えば \[ \sqrt{67} = \sqrt{64 + 3} = 8\left\{ 1 + \frac{1}{2}\left(\frac{3}{64}\right) - \frac{1·1}{2·4}\left(\frac{3}{64}\right)^{2} + \cdots \right\} \] となる。

    最初の二項を取った値 \(8\frac{3}{16}\) を近似値として、その誤差を考える。第二項より後ろでは符号が違う項が交互に並び、その絶対値は小さくなる。よって近似値は真の値よりも大きく、誤差は \(3^{2}/64^{2}\) より小さい。つまり \(8\frac{3}{16}\) の誤差は \(.003\) 未満と分かる。

  3. \(x\) が \(N^{2}\) と比べて小さいなら、近似的に \[ \sqrt{N^{2} + x} = N + \frac{x}{4N} + \frac{Nx}{2(2N^{2} + x)} \] であり、誤差は \(\dfrac{x^{4}}{N^{7}}\) のオーダーとなる。この近似式を \(\sqrt{907}\) に適用せよ。

    [二項定理による展開から \[ \sqrt{N^{2} + x} = N + \frac{x}{2N} - \frac{x^{2}}{8N^{3}} + \frac{x^{3}}{16N^{5}} \] が分かる。誤差はこの次の項 \(\dfrac{5x^{4}}{128N^{7}}\) より小さい。さらに \[ \frac{Nx}{2(2N^{2} + x)} = \frac{x}{4N} \left(1 + \frac{x}{2N^{2}}\right)^{-1} = \frac{x}{4N} - \frac{x^{2}}{8N^{3}} + \frac{x^{3}}{16N^{5}} \] と近似したときの誤差は \(\dfrac{x^{4}}{32N^{7}}\) 未満なので、上記の結果が従う。この方法は \(\sqrt[3]{1031}\) といった二次でない不尽根数にも適用できる]

  4. \(M\) と \(N^{3}\) の差が \(1\%\) 未満なら、\(\sqrt[3]{M}\) と \(\dfrac{2}{3}N + \dfrac{M}{3N^{2}}\) の差は \(\dfrac{N}{90000}\) 未満である。

    (Math. Trip. 1882.)

  5. \(M = N^{4} + x\) で \(x\) が \(N\) と比較して小さいなら、\(\sqrt[4]{M}\) は次の式で近似できる: \[ \frac{51}{56} N + \frac{5}{56}\, \frac{M}{N^{3}} + \frac{27Nx}{14(7M + 5N^{4})} \] \(N = 10,\ x = 1\) のとき、この近似が小数点以下第十六位まで正しいことを示せ。

    (Math. Trip. 1886.)

  6. 次の級数の和を計算する方法を示せ: \[ \sum_{0}^{\infty} P_{r}(n) \binom{m}{n} x^{n} \] \(P_{r}(n)\) は \(n\) の \(r\) 次多項式とする。

    [例 90.7 と同じように、\(P_{r}(n)\) を \(A_{0} + A_{1}n + A_{2}n(n - 1) + \cdots\) の形で表す]

  7. 級数 \(\sum\limits_{0}^{\infty} n \dbinom{m}{n} x^{n},\ \sum\limits_{0}^{\infty} n^{2} \dbinom{m}{n} x^{n}\) の和を求め、次を示せ: \[ \sum_{0}^{\infty} n^{3} \binom{m}{n} x^{n} = \{m^{3}x^{3} + m(3m - 1)x^{2} + mx\}(1 + x)^{m-3} \]


  1. Bromwich, Infinite Series, pp. 150 et seq. および Hobson, Plane Trigonometry (3rd edition), p. 271. を参照。[return]



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