§79 極限を使った連続実関数の表現

ここまでの節で \[ \lim_{n \to \infty} \phi_{n}(x) \] という形の関数の極限、あるいは \[ u_{1}(x) + u_{2}(x) + \cdots = \lim_{n \to \infty}\{u_{1}(x) + u_{2}(x) + \cdots + u_{n}(x)\} \] という形の級数を考えた。こういった関数や級数は \(n\) の関数だが、その極限には \(n\) 以外に \(x\) というもう一つの変数が関係しており、極限は \(x\) の関数となる。例えば §75 では \[ f(x) = \lim_{n \to \infty} n(\sqrt[n]{x} - 1) \] という形の関数を考えた。あるいは幾何級数 \(1 + x + x^{2} + \cdots\) は \(x\) の関数であり、\(-1 \lt x \lt 1\) なら \(1/(1 - x)\) に等しく、それ以外では全ての \(x\) に対して定義されない。

第三章で登場した一見すると “無理やり作ったように見える” “不自然な” 関数は、極限を使うと簡単に表現できる。次の例を見ればこのことを理解できるだろう。

例 31
  1. \(\phi_{n}(x) = x\): \(n\) は \(\phi_{n}(x)\) の定義に全く表れず、全ての \(x\) に対して \(\phi(x) = \lim\phi_{n}(x) = x\) となる。

  2. \(\phi_{n}(x) = x/n\): この場合には全ての \(x\) について \(\phi(x) = \lim\phi_{n}(x) = 0\) となる。

  3. \(\phi_{n}(x) = nx\): \(x \gt 0\) なら \(\phi_{n}(x) \to +\infty\) で、\(x \lt 0\) なら \(\phi_{n}(x) \to -\infty\) となる。\(x = 0\) の場合に限って \(\phi_{n}(x)\) は \(n \to \infty\) における極限 \(0\) を持つ。よって \(x = 0\) のとき \(\phi(x) = 0\) で、それ以外のどんな \(x\) に対しても \(\phi(x)\) は定義されない。

  4. \(\phi_{n}(x) = 1/nx,\ nx/(nx + 1)\)

  5. \(\phi_{n}(x) = x^{n}\): \(-1 \lt x \lt 1\) なら \(\phi(x) = 0\)、\(x = 1\) なら \(\phi(x) = 1\)、それ以外の \(x\) に対して \(\phi(x)\) は定義されない。

  6. \(\phi_{n}(x) = x^{n}(1 - x)\): 問題 5 の \(\phi(x)\) と基本的に同じだが、\(x = 1\) で \(0\) となる点が異なる。

  7. \(\phi_{n}(x) = x^{n}/n\): 問題 6 の \(\phi(x)\) と基本的に同じだが、\(x = 1\) のときだけではなく \(x = -1\) のときにも \(0\) となる点が異なる。

  8. \(\phi_{n}(x) = x^{n}/(x^{n} + 1)\) [\(-1 \lt x \lt 1\) なら \(\phi(x) = 0\)、 \(x = 1\) なら \(\phi(x) = \frac{1}{2}\)、\(x \lt -1\) または \(x \gt 1\) なら \(\phi(x) = 1\)、そして \(x = -1\) のとき \(\phi(x)\) は定義されない]

  9. \(\phi_{n}(x) = x^{n}/(x^{n} - 1),\ 1/(x^{n} + 1),\ 1/(x^{n} - 1),\ 1/(x^{n} + x^{-n}),\ 1/(x^{n} - x^{-n})\)

  10. \(\phi_{n}(x) = (x^{n} - 1)/(x^{n} + 1),\ (nx^{n} - 1)/(nx^{n} + 1),\ (x^{n} - n)/(x^{n} + n)\) [最初の関数は \(|x| \gt 1\) のとき \(\phi(x) = 1\)、\(|x| \lt 1\) のとき \(\phi(x) = -1\)、\(x = 1\) のとき \(\phi(x) = 0\)、\(x = -1\) のとき \(\phi(x)\) は定義されない。二つ目と三つ目の関数は \(x = 1\) と \(x = -1\) で定義される点が最初の関数と異なる。\(x = 1,\ -1\) のとき二つ目の関数は \(1\)、三つ目の関数は \(-1\) となる]

  11. \(|x| \gt 1\) で \(\phi(x) = 1\)、\(|x| \lt 1\) で \(\phi(x) = -1\)、\(x = 1,\ -1\) で \(\phi(x) = 0\) となるような関数の例を作れ。

  12. \(\phi_{n}(x) = x\{(x^{2n} - 1)/(x^{2n} + 1)\}^{2},\ n/(x^{n} + x^{-n} + n)\)

  13. \(\phi_{n}(x) = \{x^{n}f(x) + g(x)\}/(x^{n} + 1)\): [\(|x| \gt 1\) なら \(\phi(x) = f(x)\)、\(|x| \lt 1\) なら \(\phi(x) = g(x)\)、\(x = 1\) なら \(\phi(x) = \frac{1}{2}\{f(x) + g(x)\}\)、\(x = -1\) なら \(\phi(x)\) は定義されない]

  14. \(\phi_{n}(x) = (2/\pi) \arctan(nx)\) [\(x \gt 0\) なら \(\phi(x) = 1\)、\(x = 0\) なら \(\phi(x) = 0\)、\(x \lt 0\) なら \(\phi(x) = -1\) となる。この関数は数論で重要であり、\(\text{sgn } x\) と表記される]

  15. \(\phi_{n}(x) = \sin nx\pi\) [\(x\) が整数のとき \(\phi(x) = 0\)、それ以外のとき \(\phi(x)\) は定義されない (例 24.7)]

  16. \(\phi_{n}(x) = \sin (n!\, x\pi)\) なら、全ての有理数 \(x\) に対して \(\phi(x) = 0\) となる (例 24.14)。 [無理数の \(x\) に対するこの関数の扱いは非常に難しい]

  17. \(\phi_{n}(x) = (\cos^{2} x\pi)^{n}\) [\(x\) が整数なら \(\phi(x) = 1\)、整数でないなら \(\phi(x) = 0\)]

  18. \(N \geq 1752\) なら、西暦 \(N\) 年の日数は \[ \lim \{365 + (\cos^{2} \tfrac{1}{4} N\pi)^{n} - (\cos^{2} \tfrac{1}{100} N\pi)^{n} + (\cos^{2} \tfrac{1}{400} N\pi)^{n}\} \] を満たす。