§105 ハイネ・ボレルの定理

続いて関数の振動に関する定理を証明する。この定理はいくらか抽象的だが非常に重要であり、特に後で見る積分の理論で使われる。この定理の証明には直線上の区間に関する一般的な定理が必要になる。

直線上の区間の集合、つまり各要素が区間 \([\alpha, \beta]\) である集まりが与えられたとする。区間の性質には制限を付けないので、区間の数が有限個でも無限個でもよく、区間同士が重なっていても構わないし1、互いに入れ子になっている可能性もある。

これから何度か使うので、区間の集合の例をいくつか示しておく。

  1. 区間 \([0, 1]\) を \(n\) 等分すると \(n\) 個の区間が得られる。これは互いに重ならない区間の集合であり、\([0, 1]\) を線分をちょうど覆う。
  2. 区間 \([0, 1]\) に含まれる任意の点 \(\xi\) を取り、\(\xi\) に区間 \([\xi - \delta, \xi + \delta]\) を対応させる。ここで \(\delta\) は \(1\) より小さい適当な正の実数とする。ただし \(0\) には \([1 - \delta, 1]\) を対応させ、区間 \([0, 1]\) の外側に飛び出した部分は無視する。すると区間の無限集合が定義され、この集合では無数の区間が互いに重なる。
  3. 区間 \([0, 1]\) に含まれる有理点 \(p/q\) を取り、\(p/q\) に \[ \left[\frac{p}{q} - \frac{\delta}{q^{3}}, \frac{p}{q} + \frac{\delta}{q^{3}}\right] \] を関連付ける。ここで \(\delta\) は \(1\) より小さい適当な正の実数で、\(0\) は \(0/1\)、\(1\) は \(1/1\) とみなし、\([0, 1]\) の外側は無視する。すると区間の無限集合が得られる。\(p/q\) に関連付けられる区間の中には \(p/q\) でない有理点が無限に含まれるので、区間は無限に重なる。

区間 \([a, b]\) と区間の集合 \(I\) が与えられ、\(I\) の全ての要素は \([a, b]\) に含まれるとする。さらに \(I\) が次の性質を持つとする:

  1. \([a, b]\) に含まれる \(a\) と \(b\) 以外の任意の点が、少なくとも一つの \(I\) の区間の内部にある2
  2. \(a\) を左端に持つ区間と \(b\) を右端に持つ区間が少なくとも一つ \(I\) に含まれる。

このとき \(I\) に含まれる区間の有限集合であって性質 (1) と (2) を満たすものが存在する。

証明は次の通り。\(a\) は少なくとも一つの \(I\) の区間の左端だから、その区間を \([a, a_{1}]\) とする。\(a_{1}\) が \(I\) のある区間の内部にあることも分かっているので、その区間を \([a_{1}', a_{2}]\) とする。同様に \(a_{2}\) は \(I\) の区間 \([a_{2}', a_{3}]\) の内部にあると分かる。この議論は無限に繰り返せるが、有限回のステップで \(a_{n}\) が \(b\) になった場合にはそこで終わる。

有限回のステップで \(a_{n}\) が \(b\) になるなら、それまでに選んだ \(I\) の区間の有限集合が満たすべき二つの性質を満たすので証明が完了する。もし \(a_{n}\) が \(b\) にならないなら、点 \(a_{1},\ a_{2},\ a_{3},\ \ldots\) は (右に進んでいくので) 極限に向かわなければならない。しかし今の段階では、この極限の点は \([a, b]\) のどこかにあるとしか言えない。

上述の \(a\) から始まる処理を全ての可能なやり方で行い、可能な \(a_{1},\ a_{2},\ a_{3},\ \ldots\) の列を全て得たとする。このとき少なくとも一つの列が有限回のステップの後 \(b\) に到着することを次のように示せる。

図 33

\(a\) と \(b\) の間にある点 \(\xi\) について、可能性が二つある。一つはある列のある \(a_{n}\) より \(\xi\) が左にある場合で、もう一つはそうでない場合である。点 \(\xi\) をこの条件のどちらが成り立つかに応じて二つのクラス \(L\) と \(R\) に分ける。\([a, a_{1}]\) に含まれる全ての点は \(L\) に含まれるので、\(L\) は空でない。これから \(R\) が空であり、全ての点 \(\xi\) が \(L\) に含まれると示す。

\(R\) が空でないなら、\(R\) の左側が全て \(L\) となる。このとき二つのクラス \(L,\ R\) は区間 \([a, b]\) の切断となり、\([a, b]\) の間にある実数 \(\xi_{0}\) に対応する。点 \(\xi_{0}\) は \(I\) のとある区間の内部に属するので、この区間を \([\xi', \xi'']\) とする。すると \(\xi'\) は \(L\) に含まれるので、\(\xi'\) はある列のある \(a_{n}\) の左側にある。すると \([\xi', \xi'']\) が \([a_{n}', a_{n+1}]\) となる列 \(a_{1},\ a_{2},\ a_{3},\ \ldots\) が存在し、\(\xi''\) より左側にある点は全て \(a_{n+1}\) の左側にある。よって \(L\) に含まれる点で \(\xi_{0}\) より右にあるものが存在することになるが、これは \(R\) の定義と矛盾する。よって \(R\) は空である。

したがって全ての点 \(\xi\) は \(L\) に含まれる。\(b\) はとある \(I\) の区間の右端なので、この区間を \([b_{1}, b]\) とする。このとき \(b_{1}\) は \(L\) に含まれるので、ある列 \(a_{1},\ a_{2},\ a_{3},\ \ldots\) のある項 \(a_{n}\) で \(a_{n} \gt b_{1}\) が成り立つ。よって \(a_{n}\) に対応する区間 \([a_{n}', a_{n+1}]\) を \([b_{1}, b]\) に取り換えて列の第 \(n+1\) 項を \(b\) とすれば、この列に対応する区間の集合は前述の性質を持つ。よって定理は示された。

この節の最初で示した例にこの定理を適用すると次のようになる:

  1. ここでは定理の前提が成り立たない。つまり \(I\) のどの区間も \(1/n,\ 2/n,\ 3/n,\ \ldots\) を内部に含まない。

  2. ここでは定理の前提が成り立つ。点列 \(\delta,\ 2\delta,\ 3\delta,\ \ldots,\ 1 - \delta\) に対応する \[ [0, 2\delta], \quad [\delta, 3\delta], \quad [2\delta, 4\delta], \quad \ldots, \quad [1 - 2\delta, 1] \] という区間の有限集合が性質 (1) と (2) を満たす。

  3. ここではハイネ・ボレルの定理を使うことで、\(\delta\) が十分小さいなら \([0, 1]\) に含まれる点で \(I\) の区間の内部に含まれない点が存在することを示せる。

    もし \([0, 1]\) の端点を除いた全ての点が \(I\) の区間の内部に含まれるなら、\(I\) の区間の有限集合であって性質 (1) と (2) を持つものが存在し、そのとき区間の長さの和が \(1\) より大きくなる。\(I\) には長さが \(\delta\) の区間 (\(q = 1\) に対応する区間) が二つあり、\(q \neq 1\) に対しては長さ \(2\delta/q^{3}\) の区間が \((q - 1)\) 個ある。よって \(I\) に含まれる区間の任意の有限集合は、長さの和が次の級数の和の \(2\delta\) 倍より大きくならない: \[ 1 + \frac{1}{2^{3}} + \frac{2}{3^{3}} + \frac{3}{4^{3}} + \cdots \] しかし第八章の知識を使えばこれが収束すると示せる。つまり \(\delta\) が十分小さいとき、\([0, 1]\) の全ての点が \(I\) の区間に含まれるとすると矛盾が生じる。

    この証明が示す必要のないことを示していると思うかもしれない。\(I\) の区間の長さの和が \(1\) 未満なのだから、\(I\) の区間に含まれない点が存在するのは明らかではないかということだ。しかしこの推論で使われている (区間の無限集合についての) 命題は明らかとは程遠く、厳密な証明には今示したようなハイネ・ボレルの定理を使った議論が必要になる。


  1. この重なる (overlap) という言葉は通常の意味で使われている: つまり「端点でない共通の点が存在する」を意味する。例えば \([0, \frac{2}{3}]\) と \([\frac{1}{3}, 1]\) は重なる。\([0, \frac{1}{2}]\) と \([\frac{1}{2}, 1]\) のような区間の組は接する (abut) と言う。[return]

  2. 「内部にある」は「含まれてかつ端点でない」を意味する。[return]