§207 一般の指数 \(a^{x}\)
関数 \(a^{x}\) は \(a = e\) の場合を除いて有理数の \(x\) に対してしか定義されていない。ここで \(a\) が任意の正の実数である場合を考える。\(x\) を正の有理数 \(p/q\) として、\(y\) が \(y^{q} = a^{p}\) で与えられる \(a^{p/q}\) を表すとする。ここから \[ q\log y = p\log a,\quad \log y = \frac{p}{q}\log a = x\log a \] が分かるので、 \[ y = e^{x\log a} \] が成り立つ。この等式を無理数 \(x\) に対する \(a^{x}\) の定義として採用する。例えば \(10^{\sqrt{2}} = e^{\sqrt{2}\log 10}\) である。また無理数 \(x\) に対する \(a^{x}\) は正の \(a\) に対してしか定義されず、\(a^{x}\) は正の値を取り、\(\log a^{x} = x\log a\) を満たすことが確認できる。\(a^{x}\) の最も重要な性質を次に示す。
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\(a\) がどんな値でも \(a^{x} × a^{y} = a^{x+y}\) と \((a^{x})^{y} = a^{xy}\) が成り立つ。つまり指数法則は有理数だけではなく無理数に対しても成り立つ。証明は指数関数の性質を使って \[ a^{x} × a^{y} = e^{x\log a} × e^{y\log a} = e^{(x+y)\log a} = a^{x+y} \] \[ (a^{x})^{y} = e^{y\log a^{x}} = e^{xy\log a} = a^{xy} \] と変形する。
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\(a \gt 1\) なら正の \(\alpha\) が存在して \(a^{x} = e^{x\log a} = e^{\alpha x}\) が成り立つ。つまり \(a^{x}\) のグラフは \(e^{x}\) のグラフと相似となる。さらに \(x \to \infty\) で \(a^{x} \to \infty\) であり、その速度は \(x\) の任意のべきよりも速い。
\(a \lt 1\) なら正の \(\beta\) が存在して \(a^{x} = e^{x\log a} = e^{-\beta x}\) が成り立つ。つまり \(a^{x}\) のグラフは \(e^{x}\) のグラフと相似だが、左右が反転する。さらに \(x \to \infty\) で \(a^{x} \to 0\) であり、その速度は \(1/x\) の任意のべきより早い。
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\(a^{x}\) は \(x\) に関して連続で次が成り立つ: \[ D_{x} a^{x} = D_{x} e^{x\log a} = e^{x\log a} \log a = a^{x} \log a \]
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\(a^{x}\) は \(a\) に関しても連続で次が成り立つ: \[ D_{a} a^{x} = D_{a} e^{x\log a} = e^{x\log a} \frac{x}{a} = xa^{x-1} \]
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\(x \to 0\) のとき \((a^{x} - 1)/x \to \log a\) が成り立つ。当然これは \(D_{x}a^{x} = a^{x}\log a\) という結果の系に過ぎないが、このように表現しておくと便利な場合がある。また 例 85.3 の \(x \to 0\) で \((e^{\alpha x} - 1)/x \to \alpha\) という命題からも示せる。
これまでの章で \(a^{x}\) が関係する結果をいくつも示したが、どれも \(x\) が有理数という制限が付いていた。しかしここで示した定義と結果を使えば、この制限を取り払える。