§189 アーベルとディリクレの収束判定法

§188 の判定法を含むより一般的な判定法を次に示す:

ディリクレの判定法: \(\phi(n)\) が §188 と同じ仮定を満たし、\(\sum a_{n}\) が収束するか有限に振動するなら、級数 \[ a_{0}\phi_{0} + a_{1}\phi_{1} + a_{2}\phi_{2} + \cdots \] は収束する。

次の等式は簡単に確認できる: \[ \begin{aligned} a_{0}\phi_{0} + a_{1}\phi_{1} + \cdots + a_{n}\phi_{n} = s_{0}(\phi_{0} - \phi_{1}) &+ s_{1}(\phi_{1} - \phi_{2}) + \cdots \\ \cdots &+ s_{n-1}(\phi_{n-1} - \phi_{n}) + s_{n}\phi_{n} \end{aligned} \] ここで \(s_{n} = a_{0} + a_{1} + \cdots + a_{n}\) である。級数 \((\phi_{0} - \phi_{1}) + (\phi_{1} - \phi_{2}) + \cdots\) を考えると、この級数の第 \(n\) 項までの和は \(\phi_{0} - \phi_{n}\) で仮定より \(\lim \phi_{n} = 0\) なので、この級数は収束する。またこの級数の全ての項は正である。さらに \(\sum a_{n}\) は収束しない場合でも有限に振動しかしないので、全ての \(\nu\) で \(|s_{\nu}| \lt K\) が成り立つ定数 \(K\) を見つけられる。よって級数 \[ \sum s_{\nu}(\phi_{\nu} - \phi_{\nu+1}) \] は絶対収束し、 \[ s_{0}(\phi_{0} - \phi_{1}) + s_{1}(\phi_{1} - \phi_{2}) + \cdots + s_{n-1}(\phi_{n-1} - \phi_{n}) \] は \(n \to \infty\) で極限に向かう。加えて \(\phi_{n}\) したがって \(s_{n}\phi_{n}\) は \(0\) に向かうので、 \[ a_{0}\phi_{0} + a_{1}\phi_{1} + \cdots + a_{n}\phi_{n} \] も極限に向かう。すなわち級数 \(\sum a_{\nu}\phi_{\nu}\) は収束する。

アーベルの判定法: もう一つアーベルの名前が付いた判定法がある。ディリクレの判定法よりは応用範囲が狭いが、便利なこともある。

ディリクレの判定法と同様に \(\phi_{n}\) が常に正で単調減少の関数とする。ただし \(n \to \infty\) における \(\phi_{n}\) の極限は \(0\) でなくてもよい。このため \(\phi_{n}\) に関しては仮定が弱いということになる。ただその代わり、\(\sum a_{n}\) に対しては収束するという強い仮定を置く。このとき次が成り立つ:

\(\phi_{n}\) が単調減少の \(n\) の正関数で \(\sum a_{n}\) が収束するなら、\(\sum a_{n} \phi_{n}\) は収束する。

仮定より \(\phi_{n}\) が \(n \to \infty\) で極限に向かうから、極限を \(l\) とすれば \(\lim (\phi_{n} - l) = 0\) が成り立つ。よってディリクレの判定法より、\(\sum a_{n}(\phi_{n} - l)\) は収束する。これと \(\sum a_{n}\) が収束する仮定から \(\sum a_{n}\phi_{n}\) も収束すると分かる。

この結果は次のようにも表せる:

収束する級数の各項に正の減少列を乗じたものは収束する。

例 79
  1. ディリクレの判定法とアーベルの判定法は収束の基本原理 (§84) を使っても示せる。例えばアーベルの判定法の条件が成り立つとすると、 \[ \begin{aligned} a_{m}\phi_{m} + a_{m+1}\phi_{m+1} + \cdots & + a_{n}\phi_{n} = s_{m, m}(\phi_{m} - \phi_{m+1}) + s_{m, m+1}(\phi_{m+1} - \phi_{m+2})\\ & \quad + \cdots + s_{m, n-1}(\phi_{n-1} - \phi_{n}) + s_{m, n}\phi_{n} \end{aligned} \qquad \text{(1)} \] となる。ここで \[ s_{m, \nu} = a_{m} + a_{m+1} + \cdots + a_{\nu} \] である。

    \(s_{m, m},\ s_{m, m+1},\ \ldots,\ s_{m, n}\) の絶対値の最小値と最大値を \(h,\ H\) とすると、\(\text{(1)}\) の左辺は \(h\phi_{m}\) と \(H\phi_{m}\) の間にある。一方で任意の正の実数 \(\varepsilon\) に対して \(m \geq m_{0}\) で \(|s_{m, \nu}| \lt \varepsilon\) となるように \(m_{0}\) を選ぶことができ、よって \(n \gt m \geq m_{0}\) なら \[ |a_{m}\phi_{m} + a_{m+1}\phi_{m+1} + \cdots + a_{n}\phi_{n}| \lt \varepsilon \phi_{m} \leq \varepsilon \phi_{1} \] が成り立つ。よって \(\sum a_{n}\phi_{n}\) は収束する。

  2. 級数 \(\sum \cos n\theta\) と \(\sum \sin n\theta\) は \(\theta\) が \(\pi\) の倍数でない限り有限に振動する: 二つの級数の第 \(n\) 項までの和を \(s_{n},\ t_{n}\) として \(z = \operatorname{Cis}\theta\) とすると、\(|z| = 1\) および \(z \neq 1\) が成り立つ。よって \[ |s_{n} + it_{n}| = \left|\frac{1 - z^{n}}{1 - z}\right| \leq \frac{1 + |z^{n}|}{|1 - z|} \leq \frac{2}{|1 - z|} \] であり、\(|s_{n}|\) と \(|t_{n}|\) は \(2/|1 - z|\) 以下となる。二つの級数が収束しないことは第 \(n\) 項が \(0\) に向かわないことから分かる (例 24.7, 8)

    \(\theta\) が \(\pi\) の倍数ならサインの級数は \(0\) に収束する。\(\theta\) が \(\pi\) の奇数倍ならコサインの級数は有限に振動し、偶数倍なら発散する。

    ディリクレの判定法を使うと「\(\phi_{n}\) が \(n\) の正関数で \(n \to \infty\) のとき単調に \(0\) に向かうなら、級数 \[ \sum \phi_{n} \cos n\theta,\quad \sum \phi_{n} \sin n\theta \] は収束する」ことが分かる。ただし \(\theta\) が \(2\pi\) の倍数のときは例外で、この場合には最初の級数が \(\sum \phi_{n}\) となり、収束しないこともあり得る。また \(\sum \phi_{n}\) が収束するなら二つの級数はどちらも全ての \(\theta\) に対して絶対収束するが、この結果の興味深い点は \(\sum \phi_{n}\) が発散する場合への応用にある: このとき問題 6 で示すように、二つの級数は条件収束するが絶対収束しない。またコサインの級数で \(\theta = \pi\) とすると \(\cos n\pi = (-1)^{n}\) なので、前に示した §188 の結果が得られる。

  3. \(s \gt 0\) なら \(\sum n^{-s} \cos n\theta\) と \(\sum n^{-s} \sin n\theta\) は収束する。ただし一つ目の級数で \(0 \lt s \leq 1\) かつ \(\theta\) が \(2\pi\)の倍数である場合は除く。

  4. 問題 3 の級数は \(s \gt 1\) なら絶対収束し、\(0 \lt s \leq 1\) なら条件収束し、\(s \leq 0\) なら振動する (振動は \(s = 0\) なら無限で、\(s \lt 0\) なら有限となる)。例外的な場合を全て見つけよ。

  5. \(\sum a_{n}n^{-s}\) が収束または有限に振動するなら、\(t \gt s\) に対する \(\sum a_{n}n^{-t}\) は収束する。

  6. \(n\) の正関数 \(\phi_{n}\) が \(n \to \infty\) で単調に \(0\) に向かい、\(\sum \phi_{n}\) が発散すると仮定する。このとき級数 \(\sum \phi_{n} \cos n\theta\) と \(\sum \phi_{n} \sin n\theta\) は絶対収束しない。ただし \(\theta\) が \(\pi\) の倍数のときのサインの級数は除く。 [例えば \(\sum \phi_{n} |\cos n\theta|\) の収束を仮定すると、\(\cos^{2} n\theta \leq |\cos n\theta|\) より \[ \dfrac{1}{2} \sum \phi_{n} (1 + \cos 2n\theta) \] も収束する。しかしディリクレの判定法より \(\sum \phi_{n} \cos 2n\theta\) は収束し、仮定より \(\sum \phi_{n}\) は発散するのでこれはあり得ない。サインの級数についても、\(\theta\) が \(\pi\) の倍数の場合に注意すれば同様に証明できる]