§130 有理関数の積分 (その 1)

多項式の積分の後は有理関数を考えるのが自然である。\(R(x)\) を §117 で示した標準形、つまり多項式 \(\Pi(x)\) と \(A/(x -\alpha)^{p}\) という形の項の和として表された有理関数とする。

多項式の部分および \(p \neq 1\) の項についてはすぐに積分が求まる。なぜなら \[ \int \frac{A}{(x - \alpha)^{p}}\, dx = -\frac{A}{p - 1}\, \frac{1}{(x - \alpha)^{p-1}} \] が実数および複素数の \(\alpha\) に対して成り立つためである (§117)。

\(p = 1\) の項の積分は少し難しくなる。§113 の結果 6 からは \[ \int F'\{f(x)\}\, f'(x)\, dx = F\{f(x)\} \qquad \text{(3)} \] が分かる。\(a,\ b\) を実数として \(f(x) = ax + b\) とおく。\(F(x),\ F'(x)\) を \(\phi(x),\ \psi(x)\) と書けば、\(\psi(x)\) の積分が \(\phi(x)\) となる。そして \[ \int \psi(ax + b)\, dx = \frac{1}{a}\phi(ax + b) \qquad \text{(4)} \] が成り立つ。

よって例えば \[ \int \frac{dx}{ax + b} = \frac{1}{a} \log|ax + b| \] であり、特に実数 \(\alpha\) に対して \[ \int \frac{dx}{x - \alpha} = \log|x - \alpha| \] が成り立つ。これを使えば \(R(x)\) の \(p = 1\) の項のうち \(\alpha\) が実数なものについては積分を計算できる。残されたのは \(p = 1\) かつ \(\alpha\) が複素数である場合である。

これに対処するために、\(R(x)\) の係数が全て実数であるという仮定を追加する。すると \(\alpha = \gamma + \delta i\) が重複度 \(m\) の \(Q(x) = 0\) の根のとき、その共役 \(\bar{\alpha} = \gamma + \delta i\) も重複度 \(m\) の \(Q(x) = 0\) の根となる。よって \(R(x)\) の分解に部分分数 \(A_{p}/(x - \alpha)^{p}\) が表れるなら、\(\bar{A}_{p}/(x - \bar{\alpha})^{p}\) も同じく表れる。ここで \(\bar{A}_{p}\) は \(A_{p}\) の共役を表す。この事実は部分分数を得る代数的な手続きの性質から分かり、この手続きは代数の文献で詳しく説明されている1

よって \(R(x)\) を部分分数で表したときに \((\lambda + \mu i)/(x - \gamma - \delta i)\) という項が含まれるなら、\((\lambda - \mu i)/(x - \gamma + \delta i)\) という項も含まれる。この二つの項の和は \[ \frac{2\{\lambda(x - \gamma) - \mu\delta\}}{(x - \gamma)^{2} + \delta^{2}} \] である。これを一般的に書けば \[ \frac{Ax + B}{ax^{2} + 2bx + c} \] となり、\(b^{2} \lt ac\) が成り立つ。このとき \(\lambda,\ \mu,\ \gamma,\ \delta\) と \(A,\ B,\ a,\ b,\ c\) の間の関係が \[ \lambda = A/2a,\quad \mu = -D/(2a\sqrt{\Delta}),\quad \gamma = -b/a,\quad \delta = \sqrt{\Delta}/a \] であることは簡単に確認できる。ここで \(\Delta = ac - b^{2}\) および \(D = aB - bA\) とする。

\(\text{(3)}\) で \(F\{f(x)\}\) を \(\log |f(x)|\) とすると \[ \int \frac{f'(x)}{f(x)}\, dx = \log |f(x)| \qquad \text{(5)} \] を得る。さらに \(f(x) = (x - \lambda)^{2} + \mu^{2}\) とすれば \[ \int \frac{2(x - \lambda)}{(x - \lambda)^{2} + \mu^{2}}\, dx = \log\{(x - \lambda)^{2} + \mu^{2}\} \] であり、さらに §128 の等式 \(\text{(6)}\) とこの節の \(\text{(4)}\) からは \[ \int \frac{-2\delta\mu}{(x - \lambda)^{2} + \mu^{2}}\, dx = -2\delta \arctan \left(\frac{x - \lambda}{\mu}\right) \] が分かる。

以上の二つの式を使えば、\(R(x)\) に含まれる二つの \(p = 1\) の項の和を積分できる。よって任意の実係数の有理関数は、その分母の因数が全て求まるなら、積分を求められる。その積分は一つの多項式・複数の \(-\frac{A}{p - 1}\, \frac{1}{(x - \alpha)^{p-1}}\) の形をした有理関数・複数の対数関数・複数のタンジェントの逆関数の和として書ける。

もし \(\alpha\) が複素数なら今示した積分結果の有理関数が \(A\) と \(\alpha\) を共役にしたものと共に生じ、この二つの関数の和が実有理関数となることを最後に付け加えておく。

例 48
  1. \(\Delta \lt 0\) なら次の等式が成り立つと示せ: \[ \int \frac{Ax + B}{ax^{2} + 2bx + c}\, dx = \frac{A}{2a} \log |X| + \frac{D}{2a \sqrt{-\Delta}} \log \left|\frac{ax + b - \sqrt{-\Delta}}{ax + b + \sqrt{-\Delta}}\right| \] ただし \(X = ax^{2} + bx + c\) とする。さらに \(\Delta \gt 0\) なら \[ \int \frac{Ax + B}{ax^{2} + 2bx + c}\, dx = \frac{A}{2a} \log |X| + \frac{D}{2a \sqrt{\Delta}} \arctan \left(\frac{ax + b}{\sqrt{\Delta}}\right) \] だと示せ。両方において上と同じく \(\Delta = ac - b^{2}\) および \(D = aB - bA\) とする。

  2. \(ac = b^{2}\) となる特殊な場合には、この積分は \[ -\frac{D}{a(ax + b)} + \frac{A}{a} \log |ax + b| \] となる。

  3. \(Q(x) = 0\) の根が相異なる実数で、\(P(x)\) の次数が \(Q(x)\) より小さいなら \[ \int R(x)\, dx = \sum \frac{P(\alpha)}{Q'(\alpha)} \log |x - \alpha| \] が成り立つと示せ。総和は \(Q(x) = 0\) の根 \(\alpha\) について取る。

    [\(\alpha\) に対応する分数の形は、\(x \to \alpha\) で \[ \frac{Q(x)}{x - \alpha} \to Q'(\alpha),\quad (x - \alpha) R(x) \to \frac{P(\alpha)}{Q'(\alpha)} \] となる事実から分かる]

  4. \(Q(x)\) の根が全て実数で、\(\alpha\) が唯一の二重根であり、その他は全て単純な根とする。\(P(x)\) の次数が \(Q(x)\) より小さいなら、積分は \(A/(x - \alpha) + A'\log |x - \alpha| + \sum B\log |x - \beta|\) となる。ここで \[ A = -\frac{2P(\alpha)}{Q''(\alpha)},\quad A' = \frac{2\{3P'(\alpha) Q''(\alpha) - P(a) Q'''(\alpha)\}} {3\{Q''(\alpha)\}^{2}},\quad B = \frac{P(\beta)}{Q'(\beta)} \] であり、総和は \(\alpha\) 以外の \(Q(x) = 0\) の根 \(\beta\) について取る。

  5. 次の積分を計算せよ: \[ \int \frac{dx}{\{(x - 1) (x^{2} + 1)\}^{2}} \]

    [部分分数で表すと \[ \frac{1}{4(x - 1)^{2}} - \frac{1}{2(x - 1)} - \frac{i}{8(x - i)^{2}} + \frac{2 - i}{8(x - i)} + \frac{i}{8(x + i)^{2}} + \frac{2 + i}{8(x + i)} \] であり、積分は \[ -\frac{1}{4(x - 1)} - \frac{1}{4(x^{2} + 1)} - \dfrac{1}{2} \log |x - 1| + \dfrac{1}{4} \log (x^{2} + 1) + \dfrac{1}{4} \arctan x \] となる]

  6. 次の積分を計算せよ: \[ \begin{gathered} \frac{x}{(x - a)(x - b)(x - c)},\quad \frac{x}{(x - a)^{2}(x - b)},\quad \frac{x}{(x - a)^{2} (x - b)^{2}},\quad \frac{x}{(x - a)^{3}},\\ \frac{x}{(x^{2} + a^{2}) (x^{2} + b^{2})},\quad \frac{x^{2}}{(x^{2} + a^{2}) (x^{2} + b)^{2}},\quad \frac{x^{2} - a^{2}}{x^{2}(x^{2} + a^{2})},\quad \frac{x^{2} - a^{2}}{x(x^{2} + a^{2})^{2}} \end{gathered} \]

  7. 次の等式を示せ: \[ \begin{alignedat}{3} \int \frac{dx}{1 + x^{4}} & = \frac{1}{4\sqrt{2}} \biggl\{ & & \log \biggl(\frac{1 + x\sqrt{2} + x^{2}}{1 - x\sqrt{2} + x^{2}}\biggr) & & + 2\arctan \biggl(\frac{x\sqrt{2}}{1 - x^{2}}\biggr)\biggr\},\\ \int \frac{x^{2}\, dx}{1 + x^{4}} & = \frac{1}{4\sqrt{2}} \biggl\{ & - & \log \biggl(\frac{1 + x\sqrt{2} + x^{2}}{1 - x\sqrt{2} + x^{2}}\biggr) & & + 2\arctan \biggl(\frac{x\sqrt{2}}{1 - x^{2}}\biggr)\biggr\},\\ \int \frac{dx}{1 + x^{2} + x^{4}} & = \frac{1}{4\sqrt{3}}\biggl\{ & \sqrt{3}& \log \biggl(\frac{1 + x + x^{2}}{1 - x + x^{2}}\biggr) & & + 2\arctan \biggl(\frac{x\sqrt{3}}{1 - x^{2}}\biggr)\biggr\} \end{alignedat} \]


  1. 例えばクリスタル著 Algebra, vol. i, pp. 151–9 を参照。[return]



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