§112 導関数 (その 3)

\(\phi(x)\) が不連続となる \(x\) では \(\phi(x)\) に微分係数が存在しないことを見た。例えば \(1/x\) や \(\sin(1/x)\) のような \(x = 0\) で定義されない関数は当然 \(x = 0\) で不連続なので、\(x = 0\) における微分係数を持たない。あるいは \([x]\) は任意の整数の \(x\) で不連続なので、整数の \(x\) 全てで微分できない。

\([x]\) は連続する二つの整数の間で定数なので、微分が存在する場所では常に \(0\) となる。よって \([x]\) の微分 \([x]'\) は整数では定義されず、それ以外では \(0\) と等しい関数となる。興味深いことに、関数 \(1 - \dfrac{\sin\pi x}{\sin\pi x}\) も全く同じ性質を持っている。

例 37.7 で触れた通り、多項式・有理関数・三角関数といった最も単純で簡単な種類の関数では、不連続性はたいてい \[ \phi(x) \to +\infty \] あるいは \(\phi(x) \to -\infty\) のときに生じる。いずれの場合でも、関数はその \(x\) で微分係数を持たない。実は §111 の (1) からは \(\bm{\phi(x)}\) が不連続な点では \(\bm{\phi'(x)}\) も不連続になることが分かる。ただしこの逆は正しくない。これは §110 の幾何学的な考察に戻り、これまで考えてこなかった \(\phi(x)\) のグラフが \(OY\) と平行になる場合を考えればすぐに分かる。この場合には様々な状況が考えられるが、典型的な状況を 図 38 に示す。\(\text{(c)}\) と \(\text{(d)}\) では \(P\) の片側で関数が二つの値を取り、もう片側では定義されない。このような場合には \(\phi(x)\) を \(P\) で分けて、二つの関数 \(\phi_{1}(x)\) と \(\phi_{2}(x)\) を考えることができる (上側を \(\phi_{1}(x)\) とする)。

図 38

\(h \to 0\) のとき、\(\text{(a)}\) では \[ \frac{\phi(x + h) - \phi(x)}{h} \to +\infty \] であり、\(\text{(b)}\) では \[ \frac{\phi(x + h) - \phi(x)}{h} \to -\infty \] となる。一方 \(\text{(c)}\) では \[ \frac{\phi_{1}(x + h) - \phi_{1}(x)}{h} \to +\infty,\quad \frac{\phi_{2}(x + h) - \phi_{2}(x)}{h} \to -\infty \] であり、\(\text{(d)}\) では \[ \frac{\phi_{1}(x + h) - \phi_{1}(x)}{h} \to -\infty,\quad \frac{\phi_{2}(x + h) - \phi_{2}(x)}{h} \to +\infty \] となる。もちろん \(\text{(c)}\) と \(\text{(d)}\) では正の \(h\) だけを考え、\(\text{(d)}\) では負の \(h\) だけを考えるとする。なお正負両方の \(h\) を考えられないという事実さえあれば微分係数が存在しないことを結論できる。

四つのケースは次の方程式で定義される関数から得られる: \[ \text{(a)}\ y^{3} = x,\quad \text{(b)}\ y^{3} = -x,\quad \text{(c)}\ y^{2} = x,\quad \text{(d)}\ y^{2} = -x \] 考えるべき特別な \(x\) の値は \(x = 0\) である。



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