§88 複素数 \(z\) の幾何級数

\(z \neq 1\) なら等式 \[ s_{n} = 1 + z + z^{2} + \cdots + z^{n-1} = \frac{1 - z^{n}}{1 - z} \] が成り立つので、級数 \(\bm{1 + z + z^{2} + \cdots}\) が収束するのは \(\bm{r = |z| \lt 1}\) のときに限る。そのときの和は \(1/(1 - z)\) となる。

よって \(z = r(\cos\theta + i\sin\theta) = r\operatorname{Cis}\theta\) で \(r \lt 1\) なら \[ \begin{aligned} 1 + z + z^{2} + \cdots & = \frac{1}{1 - r\operatorname{Cis}\theta} \\ \end{aligned} \] つまり \[ \begin{aligned} 1 + r \operatorname{Cis}\theta + r^{2} \operatorname{Cis} 2\theta + \cdots & = \frac{1}{1 - r\operatorname{Cis}\theta}\\ & = \frac{1 - r\cos\theta + ir\sin\theta}{1 - 2r\cos\theta + r^{2}} \end{aligned} \] となる。実部と虚部を分けて書けば、\(r \lt 1\) に対して \[ \begin{aligned} 1 + r\cos\theta + r^{2}\cos 2\theta + \cdots & = \frac{1 - r\cos\theta}{1 - 2r\cos\theta + r^{2}},\\ r\sin\theta + r^{2}\sin 2\theta + \cdots & = \frac{r\sin\theta}{1 - 2r\cos\theta + r^{2}} \end{aligned} \] を得る。\(\theta\) を \(\theta + \pi\) に変えれば、絶対値が \(1\) より小さい負の \(r\) でもこの式が成立すると分かる。つまりこの式は \(-1 \lt r \lt 1\) で成り立つ。

例 33
  1. \(\phi(n) = r^{n} \cos n\theta\) が \(r \lt 1\) なら \(0\) に収束し、\(\theta\) が \(2\pi\) の倍数で \(r = 1\) なら \(1\) に収束することを直接示せ。さらに \(r = 1\) で \(\theta\) が \(2\pi\) の倍数でないなら \(\phi(n)\) が有限に振動し、\(r \gt 1\) で \(\theta\) が \(2\pi\) の倍数なら \(\phi(n) \to \infty\) であり、\(r \gt 1\) で \(\theta\) が \(2\pi\) の倍数でないなら \(\phi(n)\) は無限に振動することをそれぞれ示せ。

  2. 前問と同様の結果を \(\phi(n) = r^{n} \sin n\theta\) に対して示せ。

  3. 等式 \[ \begin{gathered} z^{m} + z^{m+1} + \cdots = \frac{z^{m}}{1 - z},\\ z^{m} + 2z^{m+1} + 2z^{m+2} + \cdots = \frac{z^{m}(1 + z)}{1 - z} \end{gathered} \] が成り立つのは \(|z| \lt 1\) のときに限ると示せ。§86 の結果のどれを使うか?

  4. \(-1 \lt r \lt 1\) なら \[ 1 + 2r\cos\theta + 2r^{2}\cos 2\theta + \cdots = \frac{1 - r^{2}}{1 - 2r\cos\theta + r^{2}} \] が成り立つと示せ。

  5. 級数 \[ 1 + \frac{z}{1 + z} + \left(\frac{z}{1 + z}\right)^{2} + \cdots \] は条件 \(|z/(1 + z)| \lt 1\) が成り立つとき和 \(1\big/\left(1 - \dfrac{z}{1 + z}\right) = 1 + z\) に収束すると示せ。さらにこの条件が「\(z\) の実部が \(-\frac{1}{2}\) より大きい」と同値だと示せ。

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