§106 関数の振動に関する定理
ハイネ・ボレルの定理を使って、関数の振動に関する重要な定理を二つ示す。
\(\phi(x)\) が区間 \([a, b]\) で連続なら、\([a, b]\) を有限個の小区間 \([a, x_{1}],\ [x_{1}, x_{2}],\ \ldots,\ [x_{n}, b]\) に分割し、各小区間で \(\phi(x)\) の振動が与えられた値より小さくなるようにできる。
証明は次の通り。\(\xi\) を \(a\) と \(b\) の間にある任意の実数とする。\(\phi(x)\) は \(x = \xi\) で連続だから、条件「\(\phi(x)\) の振動が \(\varepsilon\) より小さい」が成り立つように区間 \([\xi - \delta, \xi + \delta]\) を取れる。この条件がある \(\delta\) で成り立つとき \(\delta\) より小さい任意の値に対しても条件が成り立つので、任意の \(\xi\) と任意の \(\varepsilon\) に対してこの条件を満たす区間が無限に存在する。どの \(\delta\) で条件が満たされるかは \(\xi\) によって変わるので、ある \(\xi\) に対する \(\delta\) が他の \(\xi\) で \(\delta\) になれるかは分からず、現段階では \(\delta\) は前もって取った \(\xi\) に対する条件を成り立せるとしか言えない。\(\xi\) に対応するこの区間を \(\xi\) の \(\bm{\varepsilon}\)-区間と呼ぶ。
\(\xi = a\) なら上述の性質を持った区間 \([a, a + \delta]\) が無数に取れるので、それらを \(a\) の \(\varepsilon\)-区間と呼ぶ。同様に \(b\) の \(\varepsilon\)-区間も定義する。
\([a, b]\) に含まれる全ての点に対する全ての \(\varepsilon\)-区間を集めて \(I\) とする。このとき \(I\) はハイネ・ボレルの定理の条件を満たす: 任意の点は \(I\) のある区間の内部の点であり、\(a\) と \(b\) を端点に持つ区間がある。よって \(I\) と同じくこの二つの性質を持つ \(I\) の区間の有限集合 \(I'\) が存在する。
\(I'\) に含まれる区間は一般に重なる (図 34)。しかしその端点を使って \([a, b]\) を有限個の区間の集合 \(I''\) に分割することはでき、そうすれば各区間内における \(\phi(x)\) の振動が \(\varepsilon\) より小さくなる。これで証明すべきことが示された。
区間 \([a, b]\) で連続な関数 \(\phi(x)\) と任意の正の実数 \(\varepsilon\) が与えられたとする。このとき \([a, b]\) を長さ \(\eta\) 未満の (複数の) 区間に分割すると各区間における \(\phi(x)\) の振動が \(\varepsilon\) 以下になるような \(\eta\) が存在する。
証明は次の通り。\(\varepsilon_{1} \lt \frac{1}{2}\varepsilon\) として、一つ前の定理から小区間の有限集合 \(j\) を得る。\(j\) の各区間では \(\phi(x)\) の振動が \(\varepsilon_{1}\) 以下となる。\(j\) に含まれる小区間の長さの最小値を \(\eta\) とする。\([a, b]\) を長さが \(\eta\) より小さい区間で分割すると、各区間は \(j\) の連続した区間を最大でも二つまたぐ。よって §103 の (3) から、この長さ \(\eta\) 未満の区間における \(\phi(x)\) の振動は \(j\) の小区間における \(\phi(x)\) の振動の最大値の二倍を超えない。つまり振動は \(2 \varepsilon_{1} = \varepsilon\) 未満となる。
この定理は第七章の定積分の理論で重要な役割を果たす。こういった定理がなければ、区間で連続な関数がその区間で積分できることを証明できない。