§80 有界集合の上限と下限

\(S\) を実数の集合とする。\(S\) に含まれる全ての \(s\) について \(s \leq K\) となる実数 \(K\) が存在するなら、\(S\) は上に有界 (bounded above) と言う。全ての \(s\) について \(s \geq K\) となる実数 \(K\) が存在するなら、\(S\) は下に有界 (bounded below) と言う。\(S\) が下にも上にも有界なら、\(S\) は有界 (bounded) と言う。

\(S\) が上に有界だとする (下に有界でなくてもよい)。このとき上述の \(K\) が持つ「全ての \(s\) に対して \(s \leq K\)」という性質を持つ実数は \(K\) の他にも無限にある。例えば \(K\) より大きい全ての数はこの性質を持つ。これからこの性質を持つ実数に最小値 \(\bm{M}\) があることを示す1。この \(M\) より大きい \(S\) の任意は存在せず、それでいて \(M\) より小さい任意の実数は少なくとも一つの \(S\) の要素より小さくなる。

実数 \(\xi\) を次のようにして二つのクラス \(L\) と \(R\) に分ける。\(\xi\) より大きい要素が \(S\) にあるなら \(\xi\) を \(L\) 入れ、そうでないなら \(R\) に入れる。すると全ての \(\xi\) は \(L\) と \(R\) のどちらかに含まれる。また \(S\) のいずれかの要素より小さい数は \(L\) に含まれ \(K\) は \(R\) に含まれるので、両方のクラスは一つ以上の要素を持つ。そして \(L\) の任意の要素は \(S\) のいずれかの要素より小さく、したがって \(R\) の任意の要素より小さい。よってデデキントの定理 (§17) の三つの条件が成り立つので、二つのクラスを分ける実数 \(M\) が存在する。

この \(M\) こそが存在を証明しようとしていた実数である。まず、\(M\) は \(S\) の任意の要素より大きい: もし \(S\) のとある要素 \(s\) が \(M\) より大きかったとすると、正の実数 \(\eta\) を使って \(s = M + \eta\) と書ける。すると \(M + \frac{1}{2}\eta\) は \(s\) より小さいので \(L\) に含まれ、\(M\) より大きいので \(R\) にも含まれることになるが、これはあり得ない。一方で \(M\) より小さい任意の数は \(L\) に含まれ、したがって少なくとも一つの \(S\) の要素より小さい。以上より、\(M\) は必要とされる性質を全て持つ。

この数 \(M\) を \(S\) の上限 (supremum) と呼ぶ2。今示した事実を次にまとめる:

上に有界な集合 \(S\) は上限 \(M\) を持つ。\(M\) より大きい \(S\) の要素は存在せず、かつ \(M\) より小さい任意の実数は少なくとも一つの \(S\) の要素より小さい。

同様に (上に有界だとは限らない) 下に有界な集合に対する定理も示せる:

下に有界な集合 \(S\) は下限 \(m\) を持つ。\(m\) より小さい \(S\) の要素は存在せず、かつ \(m\) より大きい任意の実数は少なくとも一つの \(S\) の要素より大きい。

\(S\) が上に有界なら \(M \leq K\) が成り立ち、\(S\) が下に有界なら \(m \geq k\) が成り立つ。よって \(S\) が有界なら \(k \leq m \leq M \leq K\) となる。


  1. 実数の無限集合に必ずしも最小値が存在するとは限らない。例えば \[ 1,\ \frac{1}{2},\ \frac{1}{3},\ \ldots,\ \frac {1}{n},\ \ldots \] からなる集合には最小値がない。[return]

  2. 訳注: 原著では \(S\) の上限が “the upper bound of \(S\)” と呼ばれているが、これは標準的でないので変更した。下限についても同様。[return]