§234 対数級数 (その 1)

§213 では \[ \log(1 + z) = z - \dfrac{1}{2} z^{2} + \dfrac{1}{3} z^{3} - \cdots \qquad \text{(1)} \] が絶対値が \(1\) より小さい実数 \(z\) で成り立つことを見た。右辺の級数は \(z\) が絶対値が \(1\) より小さい複素数であっても収束し、その収束は絶対収束となる。ここから \(\text{(1)}\) がそういった複素数の \(z\) でも成り立つことが自然に予想されるが、実際それは §213 の議論を変えれば証明できる。これから示すのは、\(\text{(1)}\) が \(|z| \leq 1\) を満たす \(-1\) 以外の全ての \(z\) で成り立つというより強い命題である。

前に定義したように \(\log(1 + z)\) は \(\operatorname{Log}(1 + z)\) の主値であり、複素変数 \(u\) の平面上の点 \(1\) と \(1 + z\) を結ぶ直線 \(C\) に対する \[ \log(1 + z) = \int_{C} \frac{du}{u} \] が定義である。実数変数 \(z\) 対する \(\text{(1)}\) は前に示したので、これから \(z\) は実数でないと仮定する。

ここで \[ z = r(\cos\theta + i\sin\theta) = \zeta r \] とすれば \(|r| \leq 1\) であり、 \[ u = 1 + \zeta t \] とすれば \(t\) が \(0\) から \(r\) まで \(u\) は \(C\) 上を動く。そして \[ \begin{aligned} \int_{C} \frac{du}{u} & = \int_{0}^{r} \frac{\zeta\, dt}{1 + \zeta t} \\ & = \int_{0}^{r} \left\{\zeta - \zeta^{2} t + \zeta^{3} t^{2} - \cdots + (-1)^{m-1} \zeta^{m} t^{m-1} + \frac{(-1)^{m} \zeta^{m+1} t^{m}}{1 + \zeta t}\right\} dt \\ & = \zeta r - \frac{(\zeta r)^{2}}{2} + \frac{(\zeta r)^{3}}{3} - \cdots + (-1)^{m-1} \frac{(\zeta r)^{m}}{m} + R_{m} \\ & = z - \frac{z^{2}}{2} + \frac{z^{3}}{3} - \cdots + (-1)^{m-1} \frac{z^{m}}{m} + R_{m} \end{aligned} \qquad \text{(2)} \] が成り立つ。\(R_{m}\) は次の形をしている: \[ R_{m} = (-1)^{m} \zeta^{m+1} \int_{0}^{r} \frac{t^{m}\, dt}{1 + \zeta t} \qquad \text{(3)} \]

§164 の不等式 \(\text{(1)}\) から \[ |R_{m}| \leq \int_{0}^{r} \frac{t^{m}\, dt}{|1 + \zeta t|} \qquad \text{(4)} \] が分かる。また \(O\) から \(C\) に引いた垂線の長さを \(\varpi\) とすると、\(|1 + \zeta t|\) つまり \(u\) は \(\varpi\) 以下となる1。ここから \[ |R_{m}| \leq \frac{1}{\varpi} \int_{0}^{r} t^{m}\, dt = \frac{r^{m+1}}{(m + 1) \varpi} \leq \frac{1}{(m + 1) \varpi} \] を得る。よって \(m \to \infty\) で \(R_{m} \to 0\) であり、\(\text{(2)}\) から \[ \log(1 + z) = z - \dfrac{1}{2} z^{2} + \dfrac{1}{3} z^{3} - \cdots \qquad \text{(5)} \] が分かる。

もちろんこの証明は級数の収束を仮定しているが、これは前に示した (例 80.4)。この級数は \(|z| \lt 1\) なら絶対収束し、\(|z| = 1\) なら条件収束する。

また \(z\) を \(-z\) に変えると \[ \log \left(\frac{1}{1 - z}\right) = -\log(1 - z) = z + \dfrac{1}{2} z^{2} + \dfrac{1}{3} z^{3} + \cdots \qquad \text{(6)} \] を得る。


  1. \(z\) は実数でないから、\(C\) は \(O\) を通らない。この議論を表す図を描いてみるとよい。[return]