§171 収束の速さ

ここまでの例から分かるように、§168 の一般的な判定法では扱えない単純で興味深い正項級数が存在する。\(u_{n+1}/u_{n}\) が \(n \to \infty\) で極限に向かう最も単純な種類の級数を考えると、§168 の判定法はこの極限が \(\bm{1}\) のとき一般に適用できない。例えば 例 67.5 では問題に合わせた個別の方法を使う必要があり、幾何級数ではなく 例 67.4 の級数との比較を使った。

§168 では幾何級数との比較を使って様々な判定法を得たが、実は幾何級数はただ収束するだけではなく非常に速く収束し、この速度は収束に必要な速度よりずっと速い。そのため幾何級数との比較から得られる判定法はかなり大雑把であり、それよりもずっと細かな判定法が必要になる場合も多い。

例 27.7 では \(r \lt 1\) なら \(n \to \infty\) で \(n^{k}r^{n} \to 0\) であり、\(k\) の値は問題にならないことを示した。そして 例 67.1 ではさらに級数 \(\sum n^{k}r^{n}\) が収束することを示した。つまり \(r \lt 1\) なら列 \(r,\ r^{2},\ r^{3},\ \ldots,\ r^{n},\ \ldots\) は \(1^{-k},\ 2^{-k},\ 3^{-k},\ \ldots,\ n^{-k},\ \ldots\) よりも速く \(0\) に近づく。\(r\) が小さくて \(k\) が大きい場合にはこれは想像し難い。例えば一般項が \((2/3)^{n}\) および \(n^{-12}\) と表される二つの列 \[ \begin{alignedat}{4} \dfrac{2}{3}, && \quad \dfrac{4}{9}, && \quad \dfrac{8}{27}, &\quad \cdots; \\ 1, && \quad \dfrac{1}{4096}, && \quad \dfrac{1}{531441}, &\quad \cdots \end{alignedat} \] を考えると、最初は二つ目の列がずっと速く小さくなっているように見えるが、これは全く正しくない: 十分に列が進めば、一つ目の列がはるかに小さくなる。例えば \[ \begin{aligned} (2/3)^{4} & = 16/81 \lt 1/5,\\ (2/3)^{12} & \lt (1/5)^{3} \lt (1/10)^{2},\\ (2/3)^{1000} & \lt (1/10)^{166} \end{aligned} \] だが \(1000^{-12} = 10^{-36}\) に過ぎず、一つ目の列の第 \(1000\) 項は二つ目の列の第 \(1000\) 項の \(10^{130}\) 分の一より小さい。つまり級数 \(\sum n^{-12}\) は \(\sum n^{-2}\) よりはるかに速く収束するが、\(\sum (2/3)^{n}\) は \(\sum n^{-12}\) よりさらに速く収束する1


  1. 最初の五項を取ると \(\sum n^{-12}\) は小数点以下第七位まで正しくなるが、\(\sum n^{-2}\) をこれと同じ精度で近似するにはおよそ \(10,000,000\) 個の項が必要になる。本章の数値的な結果の多くは拙著 “Orders of Infinity” (Cambridge Math. Tracts, No. 12) の (J・ジャクソン氏によってまとめられた) Appendix III にある。[return]



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