§52 有限クラスと無限クラス

先に進む前に、純粋数学において頻出する抽象的で論理的なこの概念について少し説明する必要がある。

まず、読者はクラス (a class) という概念を理解しているだろうと思う。「クラス」を論理的に細かく議論する必要はない: クラスとはとある性質を持つ物や対象を集めたり揃えたりしたものだと大雑把に捉えれば十分であり、そのとき性質は単純なものでも複雑なものでも構わない。例えば英国臣民のクラス・代議士のクラス・正の整数のクラス・実数のクラスなどが考えられる。

さらに読者は、有限クラスおよび無限クラスという言葉の意味も理解していると思う。例えば英国臣民のクラスは有限クラスである: 過去・現在・未来の英国臣民を全てを集めれば、その集まりは有限の大きさ \(n\) を持つ。もちろん \(n\) の正確な値は分からない。ただ現在の英国臣民のクラスなら、理論上は \(n\) の値を実際に数えて確認できる。国勢調査が正確であればの話ではあるが。

これに対して、正の整数のクラスは有限ではなく無限である。より正確に表現すれば「\(n\) として任意の正の整数、例えば \(1000\) や \(1,000,000\) あるいは考え得る好きな数を取ると、正の整数の個数は \(n\) より大きい」が成り立つ。 例えば考えた数が \(1,000,000\) だとすれば、明らかに正の整数は \(1,000,001\) 個以上ある。同様に有理数のクラスや実数のクラスも無限と分かる。この事実を「正の整数は無限個ある」と表現すると分かりやすい。ただしこう言ったときに意味するのが、クラスの要素数が \(1000\) とか \(1,000,000\) といった有限の数でないことだけであると必ず意識しておかなければならない。

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