§111 導関数 (その 2)

  1. 区間 \(a \leq x \leq b\) の全ての \(x\) で導関数 \(\phi'(x)\) が存在するなら、\(\phi(x)\) はその区間の全ての点で連続となる。なぜなら \(\{\phi(x + h) - \phi(x)\}/h\) が極限に向かうとき \(\lim\phi(x + h) = \phi(x)\) が成り立ち、連続性という言葉がこの性質を表すからである。

  2. この逆も成り立つだろうか。つまり、任意の連続曲線の全ての点で接線が引けて、その点の \(x\) 座標における関数の微分係数が求まるだろうか1。もちろん答は「成り立たない」である。平行でない二つの直線から構成される関数を考えればよい (図 37)。直線の交点における \(\{\phi(x + h) - \phi(x)\}/h\) の極限を考えると、\(h\) が正の値から \(0\) に近づくときの極限は \(\tan \beta\) だが、負の値から近づくときの極限は \(\tan \alpha\) となる。

    この場合には曲線がこの点で二つの傾きを持つと言えなくもない。しかし次の手の込んだ例を見れば、連続曲線の傾きが一つとも複数とも言えない場合があると分かるだろう。関数 \(x \sin(1/x)\) のグラフ (図 14) を考える。この関数は \(x = 0\) で定義されないので、\(x = 0\) で不連続となる。一方で \[ \begin{cases} \phi(x) = x\sin\dfrac{1}{x} & (x \neq 0),\\ \phi(x) = 0 & (x = 0) \end{cases} \] と定義される関数は \(x = 0\) で連続となる (例 37.14)。よってこの関数のグラフは連続曲線である。

    しかし \(\phi(x)\) は \(x = 0\) で微分できない。定義から \(\phi'(x)\) は \(\lim\{\phi(h) - \phi(0)\}/h\) つまり \(\lim\sin(1/h)\) となるが、この極限は存在しない。

    \(x\) の連続関数であって全ての \(x\) で微分できないものが存在することも示せるが、その証明はずっと難しい。この問題に興味がある読者はブロムウィッチ著 Infinite Series, pp. 490–1 およびホブソン著 Theory of Functions of a Real Variable, pp. 620–5 を参照してほしい。

  3. 導関数と微分係数は幾何学的な考察を通して導入されたが、その定義には幾何学的な要素が一切ない。つまり関数 \(\phi(x)\) の導関数 \(\phi'(x)\) を、\(\phi(x)\) の幾何学的表現と関係なしに \[ \phi'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{\phi(x + h) - \phi(x)}{h} \] と定義して、特定の \(x\) でこの極限が存在するかに応じて \(\phi(x)\) が微分係数を持つあるいは持たないという言葉を定めても問題はない。曲線幾何学は導関数が利用される様々な数学分野の一つに過ぎない。

    導関数が利用される重要な分野が動力学である。粒子が直線上を移動していて、時刻 \(t\) におけるとある固定点からの距離が \(s = \phi(t)\) だとする。このとき「時刻 \(t\) における粒子の速度」は定義より \[ \frac{\phi(t + h) - \phi(t)}{h} \] の \(h \to 0\) における極限となる。つまり「速度」という概念は関数の導関数の特殊な場合とみなせる。

例 39
  1. \(\phi(x)\) が定数なら \(\phi'(x) = 0\) である。この結果を幾何学的に解釈せよ。

  2. \(\phi(x) = ax + b\) なら \(\phi'(x) = a\) である。定義および幾何学的考察の両方からこれを示せ。

  3. \(m\) が正の整数で \(\phi(x) = x^{m}\) なら \(\phi'(x) = mx^{m-1}\) である。

    [次の式が成り立つ: \[ \begin{aligned} \phi'(x) & = \lim \frac{(x + h)^{m} - x^{m}}{h}\\ & = \lim \left\{mx^{m-1} + \frac{m(m - 1)}{1·2} x^{m-2} h + \cdots + h^{m-1}\right\} \end{aligned} \]

    有理数 \(p/q\) に対する \(x^{p/q}\) ではこの方法を使えないことに注意してほしい。\((x + h)^{p/q}\) を \(h\) の指数が有限の級数で表す方法は存在しないからである。§118 ではこの結果が全ての有理数 \(m\) に対して正しいこと見る。ここでは \(m\) が特殊な有理数 (例えば \(\frac{1}{2}\)) である場合の \(\phi'(x)\) を個別に考えてみるとよい]

  4. \(\phi(x) = \sin x\) なら \(\phi'(x) = \cos x\) で、\(\phi(x) = \cos x\) なら \(\phi'(x) = -\sin x\) である。

    [\(\phi(x) = \sin x\) なら次が成り立つ: \[ \frac{\phi(x + h) - \phi(x)}{h} = \frac{2\sin \dfrac{1}{2}h \cos(x + \dfrac{1}{2}h)}{h} \] \(\lim\cos(x + \frac{1}{2}h) = \cos x\) (\(\cos x\) は連続関数) と \(\lim\{(\sin \frac{1}{2}h)/\frac{1}{2}h\} = 1\) (例 36.13) から、この式の \(h \to 0\) における極限が \(\cos x\) だと分かる]

  5. 曲線 \(y = \phi(x)\) の接線と法線の方程式: 曲線上の点 \((x_{0}, y_{0})\) における接線は \((x_{0}, y_{0})\) を通って \(OX\) との角度が \(\psi\) となる直線であり、\(\tan \psi = \phi'(x_{0})\) が成り立つ。よってその方程式は \[ y - y_{0} = (x - x_{0}) \phi'(x_{0}) \] となり、法線 (交点を通る接線と垂直な直線) の方程式は \[ (y - y_{0}) \phi'(x_{0}) + x - x_{0} = 0 \] となる。今は接線が \(y\) 軸と平行でないと仮定しているが、この例外的な場合には接線と法線がそれぞれ \(x = x_{0}\) と \(y = y_{0}\) になる。

  6. 放物線 \(x^{2} = 4ay\) 上の任意の点における接線と法線の方程式を求めよ。\(x_{0} = 2a/m\) かつ \(y_{0} = a/m^{2}\) なら \((x_{0}, y_{0})\) における接線が \(x = my + (a/m)\) となることを示せ。


  1. 接線が \(OX\) と垂直になる例外的な場合は考えていない (後で考える)。この仮定があれば、この二つの疑問文は同値となる。[return]