§138 部分積分

部分積分 (integration by parts) の定理は §113 で示した積の微分則を言い換えたものに過ぎない。§113 の結果 3 から \[ \int f'(x)F(x)\, dx = f(x)F(x) - \int f(x)F'(x)\, dx \] が分かる。積分したい関数が \(f'(x)F(x)\) という形をしていて、\(f(x)F'(x)\) なら積分できるという状況はあり得る。例えば \(\phi(x) = x\psi(x)\) で \(\psi(x)\) が既知の関数 \(\chi(x)\) の二次導関数なら \[ \int\phi(x)\, dx = \int x\chi''(x)\, dx = x\chi'(x) - \int \chi'(x)\, dx = x\chi'(x) - \chi(x) \] が成り立つ。

部分積分の例として、前節で考えた積分に部分積分を適用しよう。 \[ f(x) = ax + b,\quad F(x) = \sqrt{ax^{2} + 2bx + c} = y \] とすれば \[ \begin{aligned} a\int y\, dx & = (ax + b)y - \int \frac{(ax + b)^{2}}{y}\, dx \\ & = (ax + b)y - a\int y\, dx + (ac - b^{2}) \int \frac{dx}{y} \end{aligned} \] であり、ここから \[ \int y\, dx = \frac{(ax + b)y}{2a} + \frac{ac - b^{2}}{2a} \int \frac{dx}{y} \] が分かる。最後の積分の計算方法は §135 で見た。

例 49
  1. \(a \gt 0\) として次を示せ: \[ \begin{aligned} \int \sqrt{x^{2} + a^{2}}\, dx & = \dfrac{1}{2}x \sqrt{x^{2} + a^{2}} + \dfrac{1}{2}a^{2} \log \{x + \sqrt{x^{2} + a^{2}}\},\\ \int \sqrt{x^{2} - a^{2}}\, dx & = \dfrac{1}{2}x \sqrt{x^{2} - a^{2}} - \dfrac{1}{2}a^{2} \log |x + \sqrt{x^{2} - a^{2}}|,\\ \int \sqrt{a^{2} - x^{2}}\, dx & = \dfrac{1}{2}x \sqrt{a^{2} - x^{2}} + \dfrac{1}{2}a^{2} \arcsin\frac{x}{a} \end{aligned} \]

  2. 積分 \(\displaystyle\int \frac{dx}{\sqrt{a^{2} - x^{2}}}\) と \(\displaystyle\int \sqrt{a^{2} - x^{2}}\, dx\) を置換 \(x = a\sin\theta\) を使って計算し、§135 および問題 1 の結果と一致することを確認せよ。

  3. \(\displaystyle\int x(x + a)^{m}\, dx\) を計算せよ。ここで \(m\) は有理数とする。部分積分を使う方法、置換 \((x + a)^{m} = t\) を使う方法、\(x = (x + a) - a\) という書き換えを使う方法の三種類の方法で計算し、結果が一致することを確かめよ。

  4. 置換 \(ax + b = \dfrac{1}{t}\) と \(x = \dfrac{1}{u}\) を使って次を示せ: \[ \int \frac{dx}{y^{3}} = \frac{ax + b}{\Delta y},\quad \int \frac{x\, dx}{y^{3}} = -\frac{bx + c}{\Delta y} \] \(y\) と \(\Delta\) は §130 および §138 と同じ意味を持つとする。

  5. \(b \gt a \) に対する \(\displaystyle\int \frac{dx}{\sqrt{(x - a) (b - x)}}\) を計算せよ。前節の方法、置換 \((b - x)/(x - a) = t^{2}\) を使う方法、置換 \(x = a\cos^{2}\theta + b\sin^{2}\theta\) を使う方法の三種類の方法で計算し、結果が一致することを確かめよ。

  6. \(\sqrt{(x - a) (b - x)}\) と \(\sqrt{(b - x)/(x - a)}\) の積分を計算せよ。

  7. 置換 \(2x + a + b = \frac{1}{2}(a - b) \{t^{2} + (1/t)^{2}\}\) または分母と分子に \(\sqrt{x + a} -\sqrt{x + b}\) を乗じる方法を使って、\(a \gt b\) なら \[ \int \frac{dx}{\sqrt{x + a} + \sqrt{x + b}} = \dfrac{1}{2}\sqrt{a - b} \left(t + \frac{1}{3t^{3}}\right) \] だと示せ。

  8. 積分 \(\displaystyle\int \frac{dx}{(x + a)^{3/2} + (x - a)^{3/2}}\) を有理関数の積分に簡略化する置換を求めよ。

    (Math. Trip. 1899.)

  9. 積分 \(\displaystyle\int R\{x, \sqrt[n]{ax + b}\}\, dx\) は置換 \(ax + b = y^{n}\) を使って有理関数の積分に簡略化できることを示せ。

  10. 次を示せ: \[ \int f''(x) F(x)\, dx = f'(x) F(x) - f(x) F'(x) + \int f(x) F''(x)\, dx \] さらに一般的に次を示せ: \[ \begin{array}{l} \displaystyle \int f^{(n)}(x) F(x)\, dx \\ \displaystyle \qquad = f^{(n-1)}(x) F(x) - f^{(n-2)}(x) F'(x) + \cdots + (-1)^{n} \int f(x) F^{(n)}(x)\, dx \end{array} \]

  11. 有理数 \(p,\ q\) に対する積分 \(\displaystyle\int (1 + x)^{p} x^{q}\, dx\) が求まる場合が三つある: (i) \(p\) が整数の場合、(ii) \(q\) が整数の場合、(iii) \(p + q\) が整数の場合である。 [(i) では \(q\) の分母を \(s\) として \(x = u^{s}\) と置換する。(ii) では \(p\) の分母を \(s\) として \(1 + x = t^{s}\) と置換する。(iii) では \(p\) の分母を \(s\) として \(1 + x = xt^{s}\) と置換する]

  12. 積分 \(\displaystyle\int x^{m}(ax^{n} + b)^{q}\, dx\) は置換 \(ax^{n} = bt\) で前問の積分に帰着できる。 [実際にこの種の積分を計算するときには “帰着の公式” を使うのが最も簡単である (参考: 第六章に関するその他の例 39)]

  13. 積分 \(\displaystyle\int R\{x, \sqrt{ax + b}, \sqrt{cx + d}\}\, dx\) は次の置換で有理関数の積分に帰着できる: \[ 4x = -\frac{b}{a} \left(t + \frac{1}{t}\right)^{2} - \frac{d}{c}\left(t - \frac{1}{t}\right)^{2} \]

  14. \(y^{2}(x - y) = x^{2}\) のとき積分 \(\displaystyle\int R(x, y)\, dx\) を有理関数の積分に変形せよ。 [\(y = tx\) とすれば \(x = \dfrac{1}{t^{2}(1 - t)},\ y = \dfrac{1}{t(1 - t)}\) を得る]

  15. \(y(x - y)^{2} = x\) あるいは \((x^{2} + y^{2})^{2} = a^{2}(x^{2} - y^{2})\) が成り立つとしたときの、前問と同じ積分の有理関数の積分への帰着をそれぞれ示せ。 [前者では \(x - y = t\) とし、後者では \(x^{2} + y^{2} = t(x - y)\) とする。後者では次の関係が得られる: \[ x = \frac{a^{2}t(t^{2} + a^{2})}{t^{4} + a^{4}},\quad y = \frac{a^{2}t(t^{2} - a^{2})}{t^{4} + a^{4}}] \]

  16. \(y(x - y)^{2} = x\) なら \[ \int \frac{dx}{x - 3y} = \dfrac{1}{2} \log\{(x - y)^{2} - 1\} \] が成り立つ。

  17. \((x^{2} + y^{2})^{2} = 2c^{2}(x^{2} - y^{2})\) なら \[ \int \frac{dx}{y(x^{2} + y^{2} + c^{2})} = - \frac{1}{c^{2}}\log\left(\frac{x^{2} + y^{2}}{x - y}\right) \] が成り立つ。



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