§226 一般的な指数 \(a^{x}\) の値

\(-\pi \lt \psi \leq \pi\) に対して \[ \zeta = \xi + i\eta,\quad a = \sigma(\cos\psi + i\sin\psi) \] であり、§225 の表記で \(\sigma = e^{\tau}\) つまり \(\tau = \log \sigma\) だとする。

このとき \[ \zeta \operatorname{Log} a = (\xi + i\eta)\{\log \sigma + i(\psi + 2m\pi)\} = L + iM \] とすれば \[ L = \xi \log \sigma - \eta(\psi + 2m\pi),\quad M = \eta\log \sigma + \xi (\psi + 2m\pi) \] であり、 \[ a^{\zeta} = \exp(\zeta\operatorname{Log} a) = e^{L}(\cos M + i\sin M) \] が成り立つ。よって \(a^{\zeta}\) の一般的な値は \[ e^{\xi\log \sigma - \eta(\psi+2m\pi)} [\cos\{\eta\log \sigma + \xi(\psi + 2m\pi)\} + i\sin\{\eta\log \sigma + \xi(\psi + 2m\pi)\}] \] である。

一般に \(a^{\zeta}\) は無限多価関数となる。実際 \[ |a^{\zeta}| = e^{\xi\log \sigma - \eta(\psi+2m\pi)} \] は \(\eta = 0\) でなければ全ての \(m\) に対して異なる値を持つ。一方でもし \(\eta = 0\) なら、\(a^{\zeta}\) の全ての異なる値は大きさが同じになる。二つの \(a^{\zeta}\) の値が等しいとき、大きさが等しいのに加えて偏角が等しいか \(2\pi\) の倍数だけ離れる。そのためには異なる整数 \(m,\ n\) で \(\xi(\psi + 2m\pi)\) と \(\xi(\psi + 2n\pi)\) が \(2\pi\) の倍数だけ離れることが必要であり、もし \[ \xi(\psi + 2m\pi) - \xi(\psi + 2n\pi) = 2k\pi \] なら \(\xi = k/(m - n)\) は有理数となる。よって \(\bm{\zeta}\) が実数の有理数である場合を除いて \(\bm{a^{\zeta}}\) は無限個の値を持つと結論できる。この命題の裏「\(\zeta\) が実数の有理数なら \(a^{\zeta}\) は有限個の値しか取らない」は前に見た。

\(a^{\zeta} = \exp (\zeta\operatorname{Log} a)\) の主値は \(\operatorname{Log} a\) を主値とすることで得られる。つまり上の一般的な公式で \(m = 0\) とすればよい。具体的に言えば \(a^{\zeta}\) の主値は \[ e^{\xi\log \sigma - \eta\psi} \{\cos(\eta\log \sigma + \xi\psi) + i\sin(\eta\log \sigma + \xi\psi)\} \] である。

特に興味深い場合が二つある。一つは \(a\) が正の実数で \(\zeta\) が実数のときで、このとき \(\sigma = a,\ \) \(\psi = 0,\ \) \(\xi = \zeta,\ \) \(\eta = 0\) より \(a^{\zeta}\) の主値は \(e^{\zeta\log a}\) となり、前章で定義した値と一致する。もう一つは \(|a| = 1\) で \(\zeta\) が実数のときで、このとき \(\sigma = 1,\ \) \(\xi = \zeta,\ \) \(\eta = 0\) より \((\cos\psi + i\sin\psi)^{\zeta}\) の主値は \(\cos\zeta\psi + i\sin\zeta\psi\) となる。これはド・モアブルの定理 (§45§49 ) のさらなる一般化と言える。

例 94
  1. \(i^{i}\) の値を求めよ。 [定義から \(i^{i} = \exp (i\operatorname{Log} i)\) が分かる。一方で任意の整数 \(k\) に対して \[ i = \cos \dfrac{1}{2}\pi + i\sin \dfrac{1}{2}\pi,\quad \operatorname{Log} i = (2k + \dfrac{1}{2})\pi i \] だから、 \[ i^{i} = \exp\{-(2k + \dfrac{1}{2})\pi\} = e^{-(2k + \frac{1}{2})\pi} \] が分かる。全ての \(i^{i}\) の値は正の実数である]

  2. \((1 + i)^{i},\ i^{1+i},\ (1 + i)^{1+i}\) の値を全て求めよ。

  3. \(a^{\zeta}\) の値をアルガン図にプロットすると対数螺旋に内接する等角多角路になり、その角度は \(a\) に依存しないことを示せ。

    (Math. Trip. 1899.)

    [\(a^{\zeta} = r(\cos\theta + i\sin\theta)\) なら次が成り立つ: \[ r = e^{\xi\log \sigma - \eta(\psi + 2m\pi)},\quad \theta = \eta\log \sigma + \xi(\psi + 2m\pi) \] よって \(a^{\zeta}\) に対応する点は全て螺旋 \(r = \sigma^{(\xi^{2} + \eta^{2})/\xi} e^{-\eta \theta/\xi}\) 上にある]

  4. 関数 \(\bm{e^{\zeta}}\): 一般的な等式で \(a = e\) とすれば \(\log \sigma = 1\) および \(\psi = 0\) だから、 \[ e^{\zeta} = e^{\xi-2m\pi\eta} \{\cos(\eta + 2m\pi\xi) + i\sin(\eta + 2m\pi\xi)\} \] となる。\(e^{\zeta}\) の主値は \(e^{\xi}(\cos\eta + i\sin\eta)\) であり、これは \(\exp \zeta\) (§223) に等しい。特に \(\zeta\) が実数で \(\eta = 0\) なら一般に \[ e^{\zeta} (\cos 2m\pi\zeta + i\sin 2m\pi\zeta) \] で主値は \(e^{\zeta}\) となる。ここで \(e^{\zeta}\) は第九章で定義した正の指数を表す。

  5. \(\operatorname{Log} e^{\zeta} = (1 + 2m\pi i)\zeta + 2n\pi i\) を示せ。\(m\) と \(n\) は任意の整数とする。一般に \(\operatorname{Log} a^{\zeta}\) が二重に無限の値を持つと示せ。

  6. 等式 \(1/a^{\zeta} = a^{-\zeta}\) は完全に正しく (例 93.3)、主値でも正しい。

  7. 等式 \(a^{\zeta} × b^{\zeta} = (ab)^{\zeta}\) は完全に正しいが、主値では成り立たない場合がある。

  8. 等式 \(a^{\zeta} × a^{\zeta'} = a^{\zeta+\zeta'}\) は完全には正しくないが、主値では正しい。 [全ての右辺の値は左辺の値になるが、一般に \(a^{\zeta} × a^{\zeta'}\) すなわち \[ \exp \{\zeta(\log a + 2m\pi i) + \zeta'(\log a + 2n\pi i)\} \] は \(a^{\zeta+\zeta'}\) の値とならない。\(m = n\) の場合に限って \(a^{\zeta+\zeta'}\) の値となる]

  9. 次の等式に関する同様の結果は何か? \[ \operatorname{Log} a^{\zeta} = \zeta\operatorname{Log} a,\quad (a^{\zeta})^{\zeta'} = (a^{\zeta'})^{\zeta} = a^{\zeta\zeta'} \]

  10. \(e^{\zeta}\) の (a) 任意の値および (b) 主値が (i) 実数 (ii) 純虚数 (iii) 大きさ \(1\) となる \(\zeta\) の値はそれぞれ何か?

  11. \(a^{\zeta}\) が全て実数となるための必要十分条件は、\(2\xi\) と \(\{\eta\log |a| + \xi\arg a\}/\pi\) が両方とも整数になることである。ここで \(\arg a\) は任意の偏角とする。全ての値が大きさ \(1\) となるための必要十分条件は何か?

  12. \(x \gt 0\) に対する \(|x^{i} + x^{-i}|\) の一般的な値は \[ e^{-(m-n)\pi} \sqrt{2\{\cosh 2(m + n)\pi + \cos(2\log x)\}} \] である。

  13. 次の議論の誤謬を指摘せよ: 整数 \(m,\ n\) に対して \(e^{2m\pi i} = e^{2n\pi i} = 1\) が成り立つから、両辺を \(i\) 乗して \(e^{-2m\pi} = e^{-2n\pi}\) を得る。

  14. 実数 \(x\) に対して \(x^{x}\) のいずれかの値が実数となるのはどんなときか? [\(x \gt 0\) なら \[ x^{x} = \exp (x\operatorname{Log} x) = \exp (x\log x) \operatorname{Cis} 2m\pi x \] が成り立つ。最初の部分は実数だから、\(m = 0\) とした主値は常に実数となる。

    \(x\) が無理数または \(p/(2q + 1)\) の形をした有理数なら、これ以外に実数値はない。しかし \(x\) が \(p/2q\) という形をした有理数なら、\(m = q\) が \(-\exp (x\log x)\) というもう一つの実数値を与える。

    \(x = -\xi \lt 0\) なら \[ x^{x} = \exp \{-\xi\operatorname{Log} (-\xi)\} = \exp (-\xi\log \xi) \operatorname{Cis}\{-(2m + 1)\pi\xi\} \] であり、\(\xi = p/(2q + 1)\) なら実数の \(x^{x}\) の値が存在する。それは \(m = q\) のときで、値は \[ \exp (-\xi\log \xi) \operatorname{Cis} (-p\pi) = (-1)^{p} \xi^{-\xi} \] となる。具体例を次に示す: \[ \left(\dfrac{1}{3}\right)^{1/3} = \sqrt[3]{\dfrac{1}{3}},\quad \left(\dfrac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}} = ±\sqrt{\dfrac{1}{2}},\quad \left(-\dfrac{2}{3}\right)^{-\frac{2}{3}} = \sqrt[3]{\dfrac{9}{4}},\quad \left(-\dfrac{1}{3}\right)^{-\frac{1}{3}} = -\sqrt[3]{3}] \]

  15. 任意の底の対数: \(\zeta = \operatorname{Log}_{a} z\) を定義する方法は二つある。\(a^{\zeta}\) の主値が \(z\) のとき \(\zeta = \operatorname{Log}_{a} z\) とする方法と、\(a^{\zeta}\) のいずれかが \(z\) のとき \(\zeta = \operatorname{Log}_{a} z\) とする方法である。

    \(a = e\) のときを考えると、最初の定義では \(e^{\zeta}\) の主値が \(z\) に等しいとき、つまり \(\exp \zeta = z\) のとき \(\zeta = \operatorname{Log}_{e} z\) となる。つまり \(\operatorname{Log}_{e} z\) は \(\operatorname{Log} z\) と等しくなる。一方で二つ目の定義で \(\zeta = \operatorname{Log}_{e} z\) となるのは \[ e^{\zeta} = \exp (\zeta\operatorname{Log} e) = z,\quad \zeta\operatorname{Log} e = \operatorname{Log} z \] つまり \(\zeta = (\operatorname{Log} z)/(\operatorname{Log} e)\) のときであり、二つの対数は任意の値を取れる。言い換えれば \[ \zeta = \operatorname{Log}_{e} z = \frac{\log |z| + (\arg z + 2m\pi)i}{1 + 2n\pi i} \] であり、\(\zeta\) は二重に無限の値を取る多価関数となる。この定義では一般に \(\operatorname{Log}_{a} z = (\operatorname{Log} z)/(\operatorname{Log} a)\) となる。

  16. 任意の整数 \(m\) と \(n\) に対して \(\operatorname{Log}_{e} 1 = \dfrac{2m\pi i}{1 + 2n\pi i}\) と \(\operatorname{Log}_{e}(-1) = \dfrac{(2m + 1)\pi i}{1 + 2n\pi i}\) が成り立つ。



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