§150 テイラーの定理を使った極限の計算

\(x\) の関数 \(f(x)\) と \(\phi(x)\) の導関数 \(f'(x)\) と \(\phi'(x)\) が \(x = \xi\) で連続であり、\(f(\xi)\) と \(\phi(\xi)\) が両方とも \(0\) だとする。このとき関数 \[ \psi(x) = \frac{f(x)}{\phi(x)} \] は \(x = \xi\) で定義されない。しかしもちろん \(\psi(x)\) が \(x \to \xi\) で極限に向かう可能性はある。

さて \(\xi\) と \(x\) の間の \(x_{1}\) に対して \[ f(x) = f(x) - f(\xi) = (x - \xi)f'(x_{1}) \] であり、同様に \(\xi\) と \(x\) の間の \(x_{2}\) に対して \(\phi(x) = (x - \xi)\phi'(x_{2})\) が成り立つ。したがって \[ \psi(x) = \frac{f'(x_{1})}{\phi'(x_{2})} \] が分かる。このとき四つの異なる場合が存在する。

  1. \(f'(\xi) \neq 0\) かつ \(\phi'(\xi) \neq 0\) なら \[ \frac{f(x)}{\phi(x)} \to \frac{f'(\xi)}{\phi'(\xi)} \] が成り立つ。

  2. \(f'(\xi) = 0\) かつ \(\phi'(\xi) \neq 0\) なら \[ \dfrac{f(x)}{\phi(x)} \to 0 \] が成り立つ。

  3. \(f'(\xi) \neq 0\) かつ \(\phi'(\xi)= 0\) なら、\(\dfrac{f(x)}{\phi(x)}\) の絶対値は \(x \to \xi\) のとき非常に大きくなる。ただし \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)}\) が \(\infty\) に向かうのか、\(-\infty\) に向かうのか、それともあるときは正に大きくてあるときは負に大きくなるのかを判定するには、\(x \to \xi\) のとき \(\phi'(x)\) がどのように \(0\) に向かうかについての情報が必要になる。

  4. \(f'(\xi) = 0\) かつ \(\phi'(\xi) = 0\) なら、\(x \to 0\) における \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)}\) の振る舞いに関して言えることは何もない。

最後の二つのケースでは、\(f(x)\) と \(\phi(x)\) が連続な二次導関数を持つ場合がある。もしそうなら \[ \begin{aligned} f(x) & = f(x) - f(\xi) - (x - \xi)f'(\xi) = \dfrac{1}{2}(x - \xi)^{2} f''(x_{1}),\\ \phi(x) & = \phi(x) - \phi(\xi) - (x - \xi)\phi'(\xi) = \dfrac{1}{2}(x - \xi)^{2} \phi''(x_{2}) \end{aligned} \] であり、\(x_{1}\) と \(x_{2}\) は \(\xi\) と \(x\) の間にある。ここから \[ \psi(x)= \frac{f''(x_{1})}{\phi''(x_{2})} \] が分かる。この式についても上と同じような場合分けが生じる。特に \(x = \xi\) で二次導関数がどちらも \(0\) にならないなら \[ \frac{f(x)}{\phi(x)} \to \frac{f''(\xi)}{\phi''(\xi)} \] が成り立つ。

明らかに以上の議論はいくらでも繰り返すことができ、次の結果が得られる:

\(f(x)\) と \(\phi(x)\) および (考えるだけの) その導関数が全て \(x = \xi\) で連続とする。\(f^{(p)}(x)\) と \(\phi^{(q)}(x)\) を \(x = \xi\) で \(0\) にならない \(f(x)\) と \(\phi(x)\) の導関数であって一番次数の低いものとすれば、次が成り立つ:

  1. \(p = q\) なら \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)} \to \dfrac{f^{(p)}(\xi)}{\phi^{(p)}(\xi)}\) となる。
  2. \(p \gt q\) なら \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)} \to 0\) となる。
  3. \(p \lt q\) で \(q - p\) が偶数なら \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)} \to +\infty\) または \(\phi(x) \to -\infty\) であり、符号は \(\dfrac{f^{(p)}(\xi)}{\phi^{(q)}(\xi)}\) と同じになる。
  4. \(p \lt q\) で \(q - p\) が奇数なら \(x \to \xi + 0\) のとき \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)} \to +\infty\) または \(\dfrac{f(x)}{\phi(x)} \to -\infty\) であり、符号は \(\dfrac{f^{(p)}(\xi)}{\phi^{(q)}(\xi)}\) と同じになる。\(x \to \xi - 0\) では符号が反転する。

この結果は次の式からすぐに得られる系である: \[ f(x) = \frac{(x - \xi)^{p}}{p!}f^{(p)}(x_{1}),\quad \phi(x) = \frac{(x - \xi)^{q}}{q!}\phi^{(q)}(x_{2}) \]

例 58
  1. \(x \to 1\) における次の関数の極限を求めよ: \[ \frac{x - (n + 1)x^{n+1} + nx^{n+2}}{(1 - x)^{2}} \] [この関数とその一次導関数は \(x = 1\) で \(0\) となり、\(f''(1) = n(n + 1)\) と \(\phi''(1) = 2\) が成り立つ]

  2. \(x \to 0\) における次の式の極限を求めよ: \[ \dfrac{\tan x - x}{x - \sin x},\quad \dfrac{\tan nx - n\tan x}{n\sin x - \sin nx} \]

  3. \(x \to \infty\) における \(x\{\sqrt{x^{2} + a^{2}} - x\}\) の極限を求めよ。 [\(x = 1/y\) とする]

  4. 次を示せ: \[ \begin{gathered} \lim_{x \to n} (x - n)\cosec x\pi = \frac{(-1)^{n}}{\pi},\\ \lim_{x \to n} \frac{1}{x - n} \left\{ \cosec x\pi - \frac{(-1)^{n}}{(x - n)\pi} \right\} = \frac{(-1)^{n}\pi}{6} \end{gathered} \]

    \(n\) は整数とする。\(\cot x\pi\) を使った同様の極限も求めよ。

  5. \(x \to 0\) における次の式の極限を求めよ: \[ \frac{1}{x^{3}}\left(\cosec x - \frac{1}{x} - \frac{x}{6}\right),\quad \frac{1}{x^{3}}\left(\cot x - \frac{1}{x} + \frac{x}{3}\right) \]

  6. \(x \to 0\) のとき \(\dfrac{\sin x\arcsin x - x^{2}}{x^{6}} \to \dfrac{1}{18}\) および \(\dfrac{\tan x\arctan x - x^{2}}{x^{6}} \to \dfrac{2}{9}\) が成り立つ。