§10 実数に対する代数演算 (その 1)

続いて、加算などの初等的な代数演算を実数に対して一般的に定義する。

  1. 加算: 二つの数 \(\alpha\) と \(\beta\) の和の定義では、全ての和 \(c = a + b\) から得られる \((c)\) と全ての和 \(C = A + B\) から得られる \((C)\) という二つのクラスを考える。明らかに \(c \lt C\) が常に成り立つ。

    ここでも、\(c\) にも \(C\) にも属さない有理数は最大でも一つである。もしそのような二つの有理数 \(r,\ s\) が存在して \(s\) の方が大きかったとすると、\(r\) と \(s\) の両方は任意の \(c\) より大きく任意の \(C\) より小さい。よって \(C - c\) が \(s - r\) より大きくなる。一方で \[ C - c = (A - a) + (B - b) \] であり、\(a,\ b,\ A,\ B\) は \(A - a\) と \(B - b\) が好きなだけ小さくなるように取れる。これは明らかに仮定と矛盾する。

    もし全ての有理数が \((c)\) または \((C)\) に属するなら、\((c)\) と \((C)\) という二つのクラスが有理数の切断、つまり実数 \(\gamma\) を構成する。もし二つのクラスに属さない有理数があるなら、\((C)\) に加える。このとき手に入る切断すなわち実数 \(\gamma\) は \((C)\) の最小要素に対応するので、明らかに有理数となる。いずれの場合でも \(\gamma\) を \(\alpha\) と \(\beta\) の和 (sum) と呼び、 \[ \gamma = \alpha + \beta \] と表記する。

    もし \(\alpha\) と \(\beta\) の両方が有理数なら、上クラス \((A)\) と \((B)\) に最小要素が存在する。このとき \(\alpha + \beta\) が \((C)\) の最小要素となり、結果がこれまでの加算の概念と一致する。

  2. 減算: \(\alpha - \beta\) を次のように定義する: \[ \alpha - \beta = \alpha + (-\beta) \] この減算の定義から生まれる新たな困難はない。

例 5
  1. \(\alpha + (-\alpha) = 0\) を示せ。

  2. \(\alpha + 0 = 0 + \alpha = \alpha\) を示せ。

  3. \(\alpha + \beta = \beta + \alpha\) を示せ。 [\(a\) と \(b\) が有理数なら \(a + b = b + a\) なので、\((a + b)\) と \((b + a)\) および \((A + B)\) と \((B + A)\) は等しい。ここからすぐに示せる]

  4. \(\alpha + (\beta + \gamma) = (\alpha + \beta) + \gamma\) を示せ。

  5. \(\alpha - \alpha = 0\) を示せ。

  6. \(\alpha - \beta = -(\beta - \alpha)\) を示せ。

  7. 減算の定義、例 4 およびこの例の問題 1, 2 より、次が分かる: \[ (\alpha - \beta) + \beta = \{\alpha + (-\beta)\} + \beta = \alpha + \{(-\beta) + \beta\} = \alpha + 0 = \alpha \] そのため減算 \(\alpha - \beta = \gamma\) は等式 \(\gamma + \beta = \alpha\) を使っても定義できる。

  8. \(\alpha - (\beta - \gamma) = \alpha - \beta + \gamma\) を示せ。

  9. 加算の定義によらない減算の定義を示せ。 [\(\gamma = \alpha - \beta\) を定義するために、\((c)\) と \((C)\) を \(c = a - B\) と \(C = A - b\) で定義する。この定義が本文中で採用した定義と同じことは簡単に示せる]

  10. 次を示せ: \[ \big||\alpha| - |\beta|\big| \leq |\alpha ± \beta| \leq |\alpha| + |\beta| \]