§232 \(\exp z\) のべき級数

§212 で見たように、\(z\) が実数なら1 \[ \exp z = 1 + z +\frac{z^{2}}{2!} + \cdots \qquad \text{(1)} \] が成り立つ。さらに §191 からは、\(z\) が複素数のときにも右辺の級数が収束する (実際には絶対収束する)ことが分かる。よって複素数の \(z\) に対しても \(\text{(1)}\) が正しいことが自然に予想される。これを示そう。

\(\text{(1)}\) の級数の和を \(F(z)\) とする。級数は絶対収束するから、級数の積 (例 81.7) を直接考えることで、\(F(z)\) が次の関数方程式を満たすことが分かる: \[ F(z) F(h) = F(z + h) \qquad \text{(2)} \] 実数 \(y\) を使って \(z = iy\) および \(F(z) = f(y)\) とすれば \[ f(y) f(k) = f(y + k) \] だから、 \[ \frac{f(y + k) - f(y)}{k} = f(y) \left\{\frac{f(k) - 1}{k}\right\} \] が成り立つ。

一方で \[ \frac{f(k) - 1}{k} = i\left\{1 + \frac{ik}{2!} + \frac{(ik)^{2}}{3!} + \cdots\right\} \] より、\(|k| \lt 1\) で \[ \left|\frac{f(k) - 1}{k} - i\right| \lt \left(\frac{1}{2!} + \frac{1}{3!} + \cdots\right)|k| \lt (e - 2)|k| \] が成り立つ。よって \(k \to 0\) で \(\{f(k) - 1\}/k\to i\) であり、 \[ f'(y) = \lim_{k \to 0} \frac{f(y + k) - f(y)}{k} = if(y) \qquad \text{(3)} \] を得る。

よって \[ f(y) = F(iy) = 1 + (iy) + \frac{(iy)^{2}}{2!} + \cdots = \phi(y) + i\psi(y) \] とすれば、\(\phi(y)\) は偶関数で \(\psi(y)\) は奇関数となる。この \(\phi(y)\) と \(\psi(y)\) に対して \[ \begin{aligned} |f(y)| & = \sqrt{\{\phi(y)\}^{2} + \{\psi(y)\}^{2}}\\ & = \sqrt{\{\phi(y) + i\psi(y)\}\{\phi(y) - i\psi(y)\}}\\ & = \sqrt{F(iy) F(-iy)} = \sqrt{F(0)} = 1 \end{aligned} \] が成り立つ。したがって \[ f(y) = \cos Y + i \sin Y \] とすれば \(Y\) は \(-\pi \lt Y \leq \pi\) を満たす \(y\) の関数となる。\(f(y)\) は微分係数を持つから、その実部および虚部 \(\cos Y\) と \(\sin Y\) も微分係数を持つ。よって \(Y\) は \(y\) の連続関数と分かる。\(y\) が \(y + k\) まで変化するとき \(Y\) が \(Y + K\) に変化するとすれば、\(K\) は \(k\) と共に \(0\) に向かう。そして \[ \frac{K}{k} = \biggl\{\frac{\cos(Y + K) - \cos Y}{k}\biggr\} \bigg/ \biggl\{\frac{\cos(Y + K) - \cos Y}{K}\biggr\} \] が成り立つ。\(\cos Y\) は \(y\) で微分できるから、右辺の分数の分母は \(k \to 0\) で極限を持つ。また分子は \(-\sin Y\) という極限を持つ。よって \(K/k\) は極限に向かい、\(Y\) は \(y\) で微分できる。

よって \[ f'(y) = (-\sin Y + i\cos Y) \frac{dY}{dy} \] が成り立つ。一方既に示したように \[ f'(y) = if(y) = -\sin Y + i\cos Y \] だから、定数 \(C\) を使って \[ \frac{dY}{dy} = 1,\quad Y = y + C \] つまり \[ f(y) = \cos(y + C) + i\sin(y + C) \] と書ける。

ここで \(y = 0\) で \(f(0) = 1\) より \(C\) は \(2\pi\) の倍数で \(f(y) = \cos y + i\sin y\) だと分かる。したがって全ての実数 \(y\) で \(F(iy) = \cos y + i\sin y\) であり、\(x\) を実数とすれば \[ F(x + iy) = F(x) F(iy) = \exp x(\cos y + i\sin y) = \exp(x + iy) \] が成り立つ。つまり \[ \exp z = 1 + z + \frac{z^{2}}{2!} + \cdots \] が全ての \(z\) に対して成り立つ。


  1. ここからは \(\zeta\) の代わりに \(z\) を指数関数の引数として使う。[return]



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